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過去における鳥獣分布調査

調査時期 成果物一覧
第3回調査
昭和60~61年度
過去(江戸時代)における鳥獣分布調査(昭和62年)

1.調査の目的

動物の分布は、自然条件と人間活動との相互作用の歴史的過程において変動するものである。自然環境保全基礎調査の動物分布調査によって動物の今日的な実態は明らかにされつつあるが、オオカミやトキのように既に絶滅したり、絶滅に瀕しているものもある。かつて、これらの動物がどこに分布し、何が引き金となってどのように減少したのかという、いわば種の絶滅や減少の過程・メカニズムを解明することができれば、今後の野生生物の保護・管理に有益な情報と思われる。
本調査は以上のような認識に立って、過去の動物の分布の概略を明らかにすることによって、現代の分布の歴史的形成過程及び歴史的意味を解明する手がかりを得、もって自然環境保全施策に資することを目的に実施された。

2.調査の内容と方法

これまで過去の動植物についての知見は乏しく、本調査に当たっては、過去の分布情報を記録した文献に関する調査、解読する技術の検討から始める必要があった。
本調査ではまず、過去における動植物分布情報に関しての情報源情報の調査及び解析手法の検討など、近代自然科学の成立以前の文献から分布図を復元する基礎的な方法論及び問題点の整理が行われた。
その後、その基礎の上に立って、享保・元文諸国産物帳等に記載された鳥獣の地方名を当時の標準的な名称に読み替えること、及び当時の標準的な名称が今日のどの種に該当するかを決定する作業を行って、獣類13枚、鳥類17枚の1730年代における分布図を作成した。

3.調査結果

分布図を作成した種のうち、現在の分布と比較対照していくつかの知見が得られた種について若干の考察を加えた。対象としたのは 以下の17種及び種グループである。

■過去における鳥獣分布調査 調査結果概要
内 容 種・種グループ
現在とあまり分布の違いがない種 ニホンジカ、カワセミ(アカショウビン含む)
産物帳の時代は全国で広く見られていたが、現在絶滅したか又は絶滅の危機にある種 オオカミ、カワウソ、アシカ、コウノトリ
現在の分布と産物帳の記載と比較して、地域的に絶滅した個体群があると考えられる種 ニホンザル、クマ、キツネ、イノシシ、カモシカ、カラスバト
現在の渡来地と産物帳の時代の渡来地とが大きく異なると考えられる種(水辺環境の変化をうかがわせる) ヘラサギ、ガン類、ハクチョウ、ツル類
現在の分布と産物帳の記載を比較して興味ある変化を示している種 ジャコウネズミ1)、イタチ2)

■享保・元文諸国産物帳

本調査では基本文献として「享保・元文諸国産物帳」が用いられている。この文献は1735~1738年ごろ、すなわち徳川吉宗の時代に作成されたもので、各領が、幕府の威光を背景とした幕府の医官丹羽正伯の命ずるところにより、享保20年(1735年)から領内津々浦々に至るすべての産物を調べて報告するため、組織的に村々に報告を求め、その報告を編集する形で作成されたものである。
この調査の企画者ともいうべき丹羽正伯は、当時盛んになりつつあった博物学の学者であり、各藩に対して産物帳の記載要領、様式を示しているばかりでなく、各藩から提出された産物帳の記載について不明の点は、ふたたび問い合わせを行い、一定のチェックを行なっている。
このように、「享保・元文諸国産物帳」は、江戸時代以前の全国的な動物分布を復元する情報源として信頼性の高い中心的な資料といえる。なお、幕府によって編纂・集成された文献は現存せず、藩などに残された「控」が保存されているものについて資料が復元されている。

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