目的と特徴

モニタリングサイト1000とは

日本の国土は、亜寒帯から亜熱帯にまたがる数千の島々からなり、屈曲した海岸線と起伏の多い山岳など、変化に富んだ地形を有しています。多様な気候風土は生きものを育み、長い年月をかけて豊かな生態系を築いてきました。
生態系が短い期間に大きく変わることは稀ですが、自然の現象や人の営みから影響を受けて、私たちの利益に反する変化、すなわち劣化することもあります。
生態系の劣化は、すぐに気づくことができるものばかりでなく、知らない間に重大な問題が引き起こされている可能性があります。劣化に気づくためには、「長い間、多地点で、同じ方法でみる」ことが重要です。
環境省では、日本の複雑で多様な生態系の劣化をいち早くとらえ、適切に生物多様性の保全へつなげることを目的として、2003年に「モニタリングサイト1000」事業を始めました。
モニタリングサイト1000は、全国に1,000か所以上の調査サイトを設置し、100年以上モニタリングを継続することで、基礎的な環境情報の収集を長期にわたって継続して、日本の自然環境の質的・量的な劣化を早期に把握することを目的としています。

モニタリングサイト1000の特徴

特徴その1 長い目で見る

自然の異変は急激に進む場合もあれば、長い時間をかけてゆっくり進む場合もあります。しかも自然は毎年まったく同じではなく常に変動しているので、短い期間を調査しただけではゆっくりと進行する異変に気づけません。日本の自然の変化を長い目でしっかりと見定めるために、100 年以上という長い期間にわたり、世代を越えてモニタリングを続けることを目指しています。

全国のすべての干潟サイトで毎年秋に観察されるタマシギの最大個体数の変化のグラフ

特徴その2 全国各地で調べる

自然の変化の様子は、生態系の種類や地域によって様々です。日本の自然に起きている変化の全体像を明らかにするために、陸から海まで代表的な8タイプの生態系を対象に、全国1,000 か所以上の地点でモニタリングを続けています。

特徴その3 いつでもどこでも同じ方法で調べる

自然の変化の様子を正確に知るためには、年や地域、調査する人によらず、常に同じ時期、同じ場所、同じ方法で調べる必要があります。各生態系で、生態系の変化を代表する生きもの(指標生物)を選び、調査者が替わっても大きく精度が変わらず長期間無理なく続けられる調査方法を考えて、全国統一の調査マニュアルを定め、常にそれに従って調査を行っています。

同じ方法で調べる理由を説明したイラスト

特徴その4 みんなで協力して調べる

全国規模の調査を長期間にわたって続けていくためには、多くの方たちの協力が必要です。
また、それぞれの地域の自然をよく見ている方が調査に関わることで、異変に敏感に気づくことができます。全国の大学・研究機関などの専門家だけでなく、NPO や市民など様々な立場の方々の協力によって調査が行われています。

特徴その5 5年に1度詳しく分析する

各生態系の現状や変化を評価して報告書のイラスト

膨大な調査結果の中から各生態系に起きている変化を読み取るために、気温や水温などの気象データも用いて、5年に1度、それまでの調査結果を分析し、各生態系の現状や変化を評価して報告書にまとめています。