森林・草原調査

生態系「森林・草原」

生態系「森林・草原」1生態系「森林・草原」2

森林は日本の陸域面積の7割近くを占め、そのうちの約半分は人工林と二次林ですが、残りの2割近くは自然林であり、地域に応じて様々なタイプの森林が成立しています。ツキノワグマやクマタカなど大型鳥獣をはじめ、多様な動植物が生息・生育しています。採草などの目的で維持されてきた二次草原は、自然草原に依存する生物種にとって代替的な生息・生育場所として重要な存在となっています。樹木や落下する葉・枝・種子、鳥類などの調査をしています。

トピックス

調査項目と内容

現地調査主体:研究者、市民団体や個人

■調査者・専門家へのインタビュー

調査項目 調査内容 調査頻度 調査結果の概要
毎木調査 森林の構成種、
幹の胸高周囲長及び成長量等
コアサイト
(毎年調査)

準コアサイト
(5年に1度)

陸生鳥類サイト
(5年に1度)
  • 台風による樹木の死亡率や地上部バイオマスの変化
  • 冷温帯と暖温帯の境界付近での構成種の変化
落葉落枝・
落下種子調査
落葉落枝量及び種子の樹種及び種子生産量等
  • 落葉の季節性の変化(早期化、晩期化)
  • 種子の落下時期の晩期化
地表徘徊性
甲虫調査
ピットフォールトラップによる甲虫の種類及び個体数等
  • 温暖化による分布域変化の指標種の特定を示唆
  • 寒い地域と暖かい地域で異なる構成種の変化
陸生鳥類調査 スポットセンサスによる鳥類の種類、出現頻度及び調査地の植生等
  • 南方性鳥類の北上傾向
  • 外来鳥類の分布拡大
  • シカ食害による藪性鳥類の減少
毎木調査
植地表徘徊性甲虫調査
鳥類調査

■詳しくはマニュアル・動画マニュアルをご覧下さい。

分かってきたこと

温暖な気候に生育する種類の樹木個体数が増加

森林・草原調査では、寒冷な地域に生育する針葉樹が減り、暖かい地域に生育する落葉樹が増える、あるいは落葉広葉樹が減って落葉広葉樹よりも温暖な地域に生育する常緑広葉樹が増えるというように、より温暖な地域の樹木が増える傾向が見られました。

複数の生活形で構成される調査区における、各生活形の割合の変化のグラフ

図. 複数の生活形で構成される調査区における、各生活形の割合の変化

全体の95%以上をいずれかの生活形※が占める調査区を除いた、成熟林及び古い二次林の調査区を対象とし、各生活形の幹数の変化速度と、調査区全体の変化速度の差を計算しました。亜寒帯・亜高山帯性針葉樹にはアカエゾマツ、エゾマツ、トドマツ、シラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガ、カラマツが含まれ、温帯性針葉樹にはモミ、ツガ、スギ、ヒノキなどが含まれる。黒丸は該当する生活形の樹種が分布しないことを示します。

※生活形:環境に適応して生活している植物の形態のこと。この図では、葉の形態(針葉/広葉)や葉が落葉するか(落葉/常緑)、また、樹木が生育している気候帯(亜寒帯/亜高山帯/温帯)によって生活形を分類しています。

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■その他分かってきたことは、分かってきたこと一覧をご参照下さい。

施策への活用

  • ・生物多様性地域戦略への活用(1都道府県)
  • ・鳥獣保護区の見直し・検討(大山(国))
  • ・世界自然遺産地域のモニタリング(白神、小笠原)
  • ・都道府県レッドデータブック(2都道府県)
  • ・オオタカの種の保存法指定種からの解除
  • ・希少野生動物の生息環境評価(ケナガネズミ、オキナワトゲネズミ)
  • ・防鹿柵の設置及びシカ影響の研究など(大山沢、秩父、芦生など)
  • ・クマ被害対策(種子の豊凶、1都道府県)
  • ・地域で保護される森林の保全活用のための基礎データ(金目川)
  • ・渡り鳥等保護条約会議への情報提供(陸生鳥類)
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  • ■詳しくは施策への活用一覧をご参照下さい。

調査結果へのリンク