生物多様性センター

精度検証

精度検証の概要(考え方)

 高解像度の衛星画像をもとに作成した藻場分布図の確からしさを調べるため、藻場分布図と各海区で実施した現地調査結果(水中動画連続撮影のGISデータ)を利用して藻場分布図の精度検証を行いました。具体的には、水中動画連続撮影の各測線と藻場分布図との重ね合わせにより、藻場分布図と現地調査結果による藻場の「あり(有)」、「なし(無し)」を確認して、正解率を求めました。精度検証のイメージは下図のとおりです。

図 藻場分布図の精度検証(確からしさの確認)のイメージ(水中動画連続撮影の例)。

表  海区、研究分野別の収集文献数一覧
図 藻場分布図の精度検証(確からしさの確認)のイメージ(水中動画連続撮影の例)。

精度検証の方法

 上記の考え方に基づく精度検証の方法を具体化するため、GISの機能を用いて精度を検証しています。具体的には、藻場分布素図のデータ統合し、次に藻場分布素図と測線データの空間結合を行った後、エクセル上で正解率を算出します。実際の計算は、プログラミング言語pythonを用いた解析プログラムを作成して求めています。
 各海区の正解率は、海区内の各海域の測線のデータを独立した値として計算しています。

精度検証の結果

 各海区の調査海域毎の測線のデータ(水中動画連続撮影の結果)を活用して、海区別の藻場分布図の正解率を求めました。なお、参考までに垂下式水中カメラ撮影の測点データによる正解率も示しています(下表)。
 各海区の正解率は、53.42%(本州北部日本海沿岸海区)から85.91%(小笠原諸島沿岸海区)の範囲でした。

表 海区別の藻場分布図の正解率
表 文献の整理項目

※1 海区内の全海域の全測線の各データを独立した値として計算。
※2 海区内の全海域の全測点の各データを独立した値として計算。

精度検証の課題

藻場分布図の精度検証の結果については、以下のような課題があることがわかりました。
・衛星画像撮影年と現地調査実施年の間隔(経年的な違い)
・衛星撮影季節(月)と現地調査実施季節(月)(季節的な違い)

衛星画像撮影年と現地調査実施年の間隔(経年的な違い)

 衛星画像は業務開始年(2018年)に調達を行い、画像解析、判読(藻場分布素図の作成)を行いました。一方で、現地調査は、2019年から2020年に行いました。衛星画像の調達にあたっては、解析条件を満たしかつできるだけ3年以内の新しい画像を選定していますが、調達した衛星画像の撮影年、現地調査実施年の関係は、下表のとおりとなりました。各海区とも撮影年と調査実施年は異なり、画像によっては最大9年間の隔たりがあります。
 有識者ヒアリングでは近年急速に藻場の生育状況が変化しているという情報もあり、各海区の正解率をみる場合、衛星画像撮影年と現地調査実施年の違いも考慮する必要があります。

表 海区別の衛星画像撮影年、現地調査実施年
表 海区別の衛星画像撮影年、現地調査実施年

 ※表中の数字は使用した衛星画像数を示す。

衛星撮影季節(月)と現地調査実施季節(月)(季節的な違い)

 衛星画像は解析条件を満たすできるだけ新しい衛星画像を調達する一方で、最適な撮影季節(月)(当該海区の藻場の繁茂期)の衛星画像の入手が困難であり、他の撮影季節(月)で代替した画像もあること、また、社会的・物理的諸要因のため、各海域ごとで現地調査に入った時期に、一定程度ばらつきがあることに留意が必要です。
 海区別の、衛星画像の撮影季節(月)、想定される藻場の繁茂期、実際の現地調査の実施季節(月)については「衛星画像、藻場の繁茂期、現地調査実施時期の関係」をご覧ください。