調査成果のまとめ
藻場調査(2018~2020年度)では、第5回藻場調査以来、約20年ぶりに全国の藻場分布情報を更新しました。過去の基礎調査では、聞き取り調査等にもとづく情報を分布図としてまとめていますが、藻場調査(2018~2020年度)では、全国を高解像度の衛星画像を用いた統一的な手法により藻場分布図を作成しました。藻場分布情報の整備にあたっては、多様な海藻・海草相の特徴や過去の調査との整合性等の観点から全国を8つ(北海道は2つのサブ海区)の海区に設定して調査、整理を進めました(東北太平洋沿岸海区は東北地方太平洋沿岸地域植生・海域等調査の成果を活用)。また、藻場分布図の作成とともに、現地調査のマニュアルを作成し、統一的な手法により全国59海域で現地調査を行いました。これらの結果をまとめて全国的な藻場分布の変化及び全国、海区別の藻場分布の現状についてまとめました。
藻場面積
藻場調査(2018~2020年度)で整備し藻場分布図の全体及び海区ごとの面積を集計した結果、一部の閉鎖性海域等を除いた全国の藻場分布面積は1,643.4km²となりました。藻場タイプ別では海藻藻場1,225.7km2、アマモ場329.9km2、スガモ場87.8km2でした。また、全国を100%としてみた場合の海区別の藻場の面積割合は、四国-九州沿岸海区が29.5%と最も高く、次いで北海道沿岸海区(日本海沿岸(サブ海区)と太平洋沿岸(サブ海区))27.8%、本州南部-日本海沿岸海区14.8%、本州北部-日本海沿岸海区11.1%、南西諸島沿岸海区6.9%、中部太平洋沿岸海区6.6%、東北太平洋沿岸海区3.0%、小笠原諸島沿岸海区0.2%の順ででした。海区・藻場タイプ別の藻場面積は、下表のとおりです。
表 藻場調査(2018~2020年度)の海区別の藻場面積(単位:km²)及び海区別藻場面積割合(%)
※東北太平洋沿岸海区の藻場面積は、「平成27年度東北地方太平洋沿岸地域植生・海域等調査」のGISデータを、藻場調査(2018~2020年度)の藻場分布図の基本仕様を踏まえて再整理した結果。また、調査対象外の閉鎖性海域である東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海及び島原湾、八代海の藻場分布面積は含まれていません。
藻場タイプ別の分布状況を整理したところ、砂泥底に分布するアマモ場は小笠原諸島沿岸海区の除いたほぼ全ての海区でみられました。北海道沿岸海区の太平洋沿岸や東北太平洋沿岸海区の内湾、汽水湖や本州北部日本海沿岸海区の陸奥湾などに比較的大きな分布のまとまりがありました。また、南西諸島沿岸海区でもサンゴ礁地形の中にホンダワラ類と混生も含め、比較的まとまって分布していました。
岩盤や岩礁上に分布するスガモ場は、北海道沿岸海区、東北太平洋沿岸海区、本州北部日本海沿岸海区、本州南部日本海沿岸海区でみられました。「スガモ場」としてのまとまりは、北海道沿岸海区の2つのサブ海区、東北太平洋沿岸海区を除くと、本州南部日本海沿岸海区のエビアマモを構成種とするスガモ場のみでした。
スガモ場と同様に岩盤や岩礁、礫上に分布する海藻藻場はすべての海区で分布が記録され、北海道沿岸海区の太平洋沿岸、南西諸島沿岸海区を除く各海区でもっとも広く分布していました。
全国、海区別の藻場分布の現状
藻場調査(2018~2020年度)では、全国8海区59海域(下図)で現地調査を実施しており、その結果から藻場分布の現況を整理しました。
図 現地調査を実施した海域。
各藻場タイプ(アマモ場、海藻藻場、スガモ場)の主要な藻場構成グループ(現地調査における凡例)について全国での分布を分かりやすく示すために、調査海域ごとの結果を日本地図の上にプロットしてみました。一例として、主要な藻場構成グループがカジメ場の調査海域を下図に示しました。藻場調査(2018~2020年度)により、このような情報が全国で収集・整理されました。
図 カジメ場の分布(赤いプロットがカジメ場が確認された海域)。
このほか、藻類の生育環境情報として重要な水深帯について、現地調査結果(水中動画連続撮影)にもとづき、主要な藻場構成グループごとに確認された状況を整理しました。一例として北海道沿岸海区の2つのサブ海区を代表するコンブ場についてみると(下図)、日本海沿岸側の調査海域(西側5海域)と太平洋沿岸側の調査海域(東側10海域)では、生育する水深レベルが異なる状況が現地調査の結果から確認できました。
図 現地調査によるコンブ場の生育水深整理例。
最後に、約20年前に実施した第5回藻場調査(1998年)の藻場面積を、藻場調査(2018~2020年度)での海区区分に合わせて再整理した表を以下に参考として示しました。第5回藻場調査までの藻場に関する分布情報は、基本的に聞き取り調査等に基づいた第2回調査の結果を更新する方法であり、藻場調査(2018~2020年度)で作成した衛星画像に基づく調査とは手法が大きく異なるため、藻場調査(2018~2020年度)の藻場面積との単純比較はできないことに注意が必要です。なお、都府県・(総合)振興局別で整理した藻場面積は「都道府県別藻場面積」をご覧ください。
表 第5回藻場調査(1998年)の海区別の藻場面積(単位:km²)
※1 藻場調査(2018~2020年度)と同じ範囲としています(調査対象外の閉鎖性海域である東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明海及び島原湾、八代海の藻場分布面積は含まれていません)。
※2 第5回藻場調査(1998年)では小笠原諸島沿岸において調査を実施していません。