要約 |
動物分布調査は、我が国に生息する野生動物の生息状況を把握するため、哺乳類、鳥類、両生類・爬虫類、淡水魚類、昆虫類を対象として、その分布の把握を中心 として調査が実施された。
野生動物に関する自然環境保全施策としては、当時、絶滅のおそれのある種の保護や、人間生活とのかかわりのなかで適切な保護管理を要する種 に対する施策が優先的に講じられており、第2回基礎調査においても、調査対象とされた野生動物は鳥類を除き、的確な管理手法を早急に求めら れるもの、絶滅の危険性や学術上重要であると思われるものなどに限定された。
第3回基礎調査においては、上記の施策の対象となるべき種の洗い出しや、今後講ずべき施策の検討のための基礎的かつ客観的資料を提供する目 的で、究極的にはわが国に産する動物群の全種に関する全国的分布の現状及び経年変化の状況を把握する目的で実施された。これによって野生動 物に関する調査は、その対象が一気に拡大され、わが国における野生動物の基礎的データの継続的な収集・蓄積システムがスタートした。
第5回調査では、第3、4回調査に引き続き、基礎的データの収集・蓄積を行った。
なお、鳥類については、第2回及び第5回調査で夏期繁殖分布、第3回の調査で冬季越冬分布について一定の水準の成果が得られたこともあり、第 4回調査においては対象種を限定したうえ、集団繁殖地及び集団ねぐらの規模と分布、環境条件等を把握することを目的として実施した。
第6回調査からは生物多様性調査に移行し「種の多様性調査」と名称を変更し調査を行い、特に中・大型哺乳類に重点をおいた調査を実施した。
第3回調査では、生態系の主要な位置を占め、生物学的知見の蓄積がある等の要件を満たし、さらに調査実施体制の構築が可能という観点を加味して次の分類群 に属する全部又は一部の種・亜種が対象とされた。
調査者は学会等から推薦された専門研究者2,225名(うち鳥類は(財)日本野鳥の会会員等1,619名)。
昭和58年度より調査体制の構築を図り、調査は全分類群について59年度に実施された(さらに、とりまとめの段階で60年度以降のデータも若干 補足されている)。また、過去の記録、標本等の情報も積極的に収集された。
なお、鳥類のみ59年12月〜60年1月の期間に限定して一斉に現地調査が実施された。
本調査における種名の呼称の統一をはかるとともに既存の知見を整理するため、調査に先立ち、分類群毎の種名目録等が『動物分布調査のためのチェックリスト』としてとりまとめられた。分布地を記録する方法としては、基準地域メッシュ(「3次メッシュ」ともいう。約1km×1km) を基本とした。
本書は、その報告書(昆虫類(セミ及び甲虫類))である。 |