生物多様性総合評価(JBO:Japan Biodiversity Outlook)とは
生物多様性の総合評価は、森林、農地などの生態系の区分ごとに、評価のための指標を設け、各指標の推移を説明するデータをもとに、過去50年の生物多様性の損失の大きさと現在の傾向の評価を行ったものです。
主な結論
- 人間活動にともなうわが国の生物多様性の損失は全ての生態系に及んでおり、全体的にみれば損失は今も続いている。
- 特に、陸水生態系、沿岸・海洋生態系、島嶼(とうしょ)生態系における生物多様性の損失が大きく、現在も損失が続く傾向にある。
- 損失の要因としては、「第1の危機(開発・改変、直接的利用、水質汚濁)」、とりわけ開発・改変の影響力が最も大きいが、現在、新たな損失が生じる速度はやや緩和されている。「第2の危機(里地里山等の利用・管理の縮小)」は、現在なお増大している。また、近年、「第3の危機(外来種、化学物質)」のうち外来種の影響は顕著である。「地球温暖化の危機(地球温暖化による生物への影響)」は、特に一部の脆弱な生態系で懸念される。これらに対して様々な対策が進められ、一定の効果を上げてきたと考えられるが、間接的な要因として作用しているわが国の社会経済の大きな変化の前には、必ずしも十分といえる効果を発揮できてはいない。
- 現在、我々が享受している物質的に豊かで便利な国民生活は、過去50年の国内の生物多様性の損失と国外からの生態系サービスの供給の上に成り立ってきた。2010年以降も、過去の開発・改変による影響が継続すること(第1の危機)、里地里山などの利用・管理の縮小が深刻さを増していくこと(第2の危機)、一部の外来種の定着・拡大が進むこと(第3の危機)、気温の上昇等が一層進むこと(地球温暖化の危機)などが、さらなる損失を生じさせると予想され、間接的な要因も考慮した対応が求められる。そのためには地域レベルの合意形成が重要である。
- 陸水生態系、島嶼生態系、沿岸生態系における生物多様性の損失の一部は、今後、不可逆な変化を起こすなど重大な損失に発展するおそれがある。
生物多様性総合評価(報告書)
※報告書中の図表・写真によっては別途引用元の使用許諾をとられることをお勧めしているものもありますので、下の図表・写真等の使用に際しては、環境省への通知をお願いします。
p.38データ 4-3、4-4、p41 BOX2、p84 データ12-2、p.86データ12-9、p121 データ20-1、p168 データ28-1、巻末資料4 (データ3-2、9-1、12-1、12-3、12-8、12-10、23-3)
生物多様性総合評価の概要