水田風景の写真(ゴトウアキラ氏提供)
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生物多様性に配慮した米づくりと里地里山の保全

里地里山は、都市と原生的な自然との間に位置し、集落とそれを取り巻く農地(田んぼ)、雑木林、ため池、小川などで構成される二次的自然を中心とした地域を示します。日本の国土の約4割は里地里山であり、日本人はこの場所で古くから持続的に農業、林業、漁業等を営んできました。

およそ3,000年前の弥生時代前期から人々による長期にわたる自然環境への働きかけを通じて形成されたといわれる「里地里山」環境は(環境省, 2010) 、原生の自然とは異なる形で存在し、このような環境に適応した固有種や絶滅危惧種をはじめとする多くの野生生物が生息・生育する場所として重要です。また、里地里山は、生物多様性や生態系や私たちに一次産業による生産物を提供してくれるという観点だけではなく、人々にとって身近な自然とのふれあいの場としても価値が高まっています。

しかし近年、里地里山地域での人口減少や高齢化によって、これらの地域の資源を持続的に利用・管理する人が足りなくなり、人間の手が適度に加えられることによって育まれてきた環境が劣化し、結果として多様な生物の生息・生育への影響が現れています。このような状況は、平成22年(2010)年3月に策定された「生物多様性国家戦略2010」で、生物多様性の3つの危機の1つ「里地里山の人間活動の縮小による危機」として位置づけられています。

二次的自然である里地里山を維持・再生するための方策としては、里地里山の整備・保全やバイオマス資源など地域の自然資源の積極的な有効利用の他、生物多様性保全をより重視した持続可能な農林水産業の推進とそれを支える農山村の活性化が挙げられます(※1) 。最近では、生物多様性に配慮して生産された「生きものブランド米」や持続可能な経営が行われていると認証を受けた森林からの林産物が、各地で普及しつつあり、持続可能な農林水産業の推進の原動力となっています。こういった農林水産物は、生物多様性に配慮しているという付加価値が価格に反映されることで、里地里山の生物多様性とその生態系サービスの保全にかかる費用の一部を消費者が負担しているとも考えられ、生態系サービスへの支払いの一つの形といえるでしょう。

さらに、これらの事例の中には、生物多様性に配慮されたお米の生産場所である田んぼが、貴重な生物多様性が育まれる場所としてのみならず、多様な生きものとのふれあいの場としても活用される他、コウノトリやトキなどを目玉とした観光資源としても活用され、さらなる地域の活性化にも貢献しています。里地里山における持続可能な農林水産業の推進が、その産物以外のさらなる効果を生んでいるという意味で、世界的にも注目しうる事例といえます。

ここでは、コウノトリやトキなどの保全と生物多様性や環境に配慮した持続的な農業を目的として自治体の働きかけによって取り組みが開始され、そこで生産された商品が徐々に普及し、地域の活性化につながっている事例4件を紹介します。

※1 「生物多様性国家戦略2010」(第1 部第3 章第2 節の「3.国土の特性に応じたグランドデザイン」)では、里地里山・田園地域の目指す方向の一つとして「生物多様性をより重視した、持続可能な農林業の活性化を通じて、人と自然のより良い調和を実現する」ことが示されている。

●参考文献
・環境省(2010)「生物多様性国家戦略2010」
・環境省編(2010)「里地里山保全活用行動計画(案)」

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