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矢作川水源の森分収育林事業

●開始時期:平成3(1991)年
●場所:矢作川最上流部 茶臼岳北斜面
●事業主体:愛知県安城市、長野県下伊那郡根羽村

背景

矢作川は、長野・岐阜・愛知の3県を流域として、伊勢湾の東隣の三河湾に注ぐ、全長117kmの河川です。その流域面積(※1)は1,800km2を超え、上流部には長野県の2村と岐阜県の2市、中・下流部には愛知県の18市町村の自治体があります。

矢作川流域の図

矢作川流域では昭和30年代後半より、上流部の鉱工業排水やゴルフ場等の開発によって下流部の水稲や沿岸漁業に影響が及び、上下流間での対立が起こりました。この解決のため、昭和44(1969)年に、下流の農業団体6団体、漁業団体7団体、自治体5つの計18団体により、「流域は一つ、運命共同体」を合言葉に「矢作川沿岸水質保全対策協議会」(矢水協)が組織されました。その運動の成果として、流域での開発行為については事前にこの協議会の同意を得る、という民間主導による流域管理方式(「矢作川方式」)が定着し、全国の模範となりました (※2)

矢作川の最上流部に位置する長野県の根羽村は、昭和54(1979)年に矢水協に加入しました。その後、根羽村は矢水協の仲立ちで、安城市の運営する「安城市茶臼山高原野外センター」に土地を貸したり、安城市議会関係者15名が根羽村の実施する「ふるさとの森分収育林事業」(※3) に対して協力するなど、上流の根羽村と下流の安城市との間で協力関係が構築されていきました。

森林中にある案内板(安城市)

©安城市

概要

根羽村では大正時代から営林署等によって造林が行われ、伐期に入った昭和30年代から営林署等による伐採が始まりました。昭和40年代半ばまでは、伐採により何億円もの利益が村に入り、村の財政は大きく潤いました。しかし、昭和40年代の木材の輸入自由化により木材価格が低迷し、経済的に伐採完了後に返還された土地を再生させることが不可能となりました。この結果、景観破壊や山の崩落、水源地の荒廃などの影響が表れ、その対策が必要となりました。

このため根羽村は、平成3(1991)年に開始が予定されていた伐採の取りやめを決意し、伐採を行う営林署等に中止要請を行いましたが、不調に終わりました。このため、営林署の権利分を買い取る(買い取り価格1億112万円=面積48.21ha分のヒノキを主体とした樹木の販売利益を折半した数字)ことで、水源かん養や砂防などの森林の保護計画を進めることとしました。

ただ、この買い取りには多額の資金が必要となるため、以前より交流のあった下流の安城市に「『矢作川水源の森』として共同経営(分収林(※4))することを持ちかけました。安城市は矢作川上流域の森林を水源地として保全する必要があると考え、平成3(1991)年に、立木の買い取り等に関する下記のような契約を結びました。この契約は、同年4月に森林法に新たに付け加えられた「森林整備協定」に基づく全国初めての契約です。
1. 立木の買い取りに地代を加えた約1億4,500万円を安城市が根羽村に支払う。
2. 立木は今後30年間伐採しない。
3. 間伐など森林の管理費用及び、将来伐採して得た利益は全て折半する。

生態系サービスへの支払いの図 森林の管理作業の様子(安城市提供)森林の管理作業の様子(安城市提供)

©安城市

※1 流域面積とは、その川に雨水などを集める地域全体の広さ、すなわち隣の川の流域との境である「分水界」に囲まれた区域の広さを言う。(銀河書房編(1994))
※2 矢水協は、矢作川流域圏における川を介した共生と地域振興を目的に、参加各団体と明治用水が3億円出資する「矢作川流域交流振興機構」を平成3(1991)年に設立。また、昭和53(1978)年には、財団法人矢作川水源基金を、愛知県と同県内の20市町村が設立。それぞれが出しあった基金5億8,500万円の利子と、毎年出しあう4000万円によって運営。矢作川水系において水源林対策事業や、研究、上下流交流事業を講ずる市町村に対し助成等を行う。
※3 1口60万円で募集口数150口、面積10haのヒノキなどの森林をつくる計画。30年後の分収率は、村が50パーセント、会員の持ち分の総計が50パーセント。
※4 森林所有者、造林・保育を行う者、費用負担者の3者またはいずれか2者で契約を結び、造林・保育したのち伐採して、その収益を分け合う森林。
※5 約48haの土地の30年間の地代の2分の1の金額。これを支払うことによって安城市には地上権が発生する。

●参考文献
・銀河書房編(1994)『水源の森は都市の森』銀河書房

●協力
安城市役所総務部財政課管財係

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