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| ○令和6年度遺伝子組換え生物による影響監視調査の概要 |
令和6年度遺伝子組換え生物による影響監視調査(PDF)
令和6年度自然環境下におけるナタネ類等の生育状況調査及び遺伝子分析のための種子等のサンプリング(PDF)
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概要
【調査目的】
「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(以下、「カルタヘナ法」という。)第34条において、「国は、遺伝子組換え生物等及びその使用等により生ずる生物多様性影響に関する科学的知見の充実を図るため、これらに関する情報の収集、整理及び分析並びに研究の推進その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされている。環境省では、セイヨウナタネ Brassica napusに除草剤耐性が付与された遺伝子組換えセイヨウナタネ(以下、「除草剤耐性セイヨウナタネ」という。)の生育等に関するデータの収集を平成15年度以来継続的に行っている。
現在、我が国で使用等されている除草剤耐性セイヨウナタネについては、その使用等に当たっては、カルタヘナ法に基づき、「食用又は飼料用に供するための使用、栽培、加工、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為」について生物多様性影響が生じるおそれがないものと評価され、承認されている。その際、輸送中に種子がこぼれ落ちることによる生物多様性影響も含め評価がなされているが、実際にこぼれ落ちた種子により生物多様性影響が生ずるおそれがないことを確認するため、本調査により除草剤耐性セイヨウナタネの生育状況の把握を行っている。
【これまでの調査内容】
平成15〜20年度の調査では、除草剤耐性セイヨウナタネを含むセイヨウナタネの主要輸入港である国内の12港湾(鹿島、千葉、横浜、清水、名古屋、四日市、堺泉北、神戸、宇野、水島、北九州及び博多並びにそれらの周辺地域を含む。)を対象としているが、そのうち、鹿島、千葉、清水、名古屋、四日市、神戸、水島及び博多の8地域の港湾並びにその後背地にある輸送経路と考えられる主要道路沿いで除草剤耐性セイヨウナタネの生育が確認された。当時の調査では、鹿島、四日市、博多の3地域には、こぼれ落ち由来と考えられるセイヨウナタネが比較的多く生育していたことや、鹿島地域では採取試料内における除草剤耐性セイヨウナタネの割合が非常に少なかった一方で、四日市及び博多の両地域では除草剤耐性セイヨウナタネの割合が比較的多かったことが確認されている。また、四日市地域では輸送経路と考えられる主要道路の橋梁付近の河川敷において、除草剤耐性セイヨウナタネと非遺伝子組換え個体や異なる除草剤耐性を有する個体との交配が生じていることを示唆する種子や、除草剤耐性セイヨウナタネと在来ナタネ(Brassica rapa:栽培由来の外来種)の交雑が生じていることを示唆する種子が確認された。
このようなことから、平成21〜令和3年度には、こぼれ落ち由来と考えられるセイヨウナタネが比較的多く生育している鹿島、四日市及び博多の3つの地域において調査を実施している。平成22年度までは、鹿島地域と博多地域については主要道路沿いにおいて調査を行うとともに、四日市地域については、除草剤耐性セイヨウナタネの生育が確認されていた主要道路沿いの3河川敷周辺において、橋梁の上下流の河川敷に調査範囲を広げ、除草剤耐性セイヨウナタネの分布と近縁種(在来ナタネ、カラシナ(Brassica juncea))への遺伝子流動の状況を重点的に調査したが、平成23年度からは、いずれの地域においても主として主要道沿いの河川敷周辺に注目して調査を行っている。また、令和4年度からは、セイヨウナタネの生育が近年確認されていない鹿島地域に替えて、港湾周辺地域でセイヨウナタネとその近縁種の生育が報告されている小樽地域を新たに加え、令和6年度からは、小樽地域と博多地域の調査を隔年で実施することとし、四日市地域においては、令和3年度までと同様の調査をその後も実施している。
【今年度の調査結果】
今年度は、小樽及び四日市の2つの地域の主要道沿いまたはその主要道沿いの河川敷周辺を調査し、これら2つの地域において、セイヨウナタネと交雑可能な近縁種である在来ナタネとカラシナ、ハマダイコン(Raphanus sativus var.raphanistroides)、ノハラガラシ(Sinapis arvensis)、ハリゲナタネ(Brassica tournefortii)から、試料として、母植物組織(葉)及び種子(一部は母植物組織のみ、または種子のみ)の採取を行った。
今年度の調査では、小樽及び四日市の2地域の合計219群落から採取された母植物組織(860試料)に対して、免疫クロマトグラフ法により2種類の除草剤耐性タンパク質(グリホサート耐性タンパク質(Agrobacterium sp. CP4 由来5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase、以下「CP4 EPSPSタンパク質」という。)及びグルホシネート耐性タンパク質(phosphinothricin-N-acethyltransferase、以下「PATタンパク質」という。))の分析を行った。その結果、小樽地域の試料5群落(9試料)のうち全ての試料から、四日市地域の試料214群落(851試料)のうち64群落(92試料)から、それぞれ除草剤耐性タンパク質が検出された。除草剤耐性タンパク質は、全てセイヨウナタネから検出されており、在来ナタネその他の近縁種から検出されたものはなかった。なお、平成23〜令和5年度の調査において、小樽地域では令和5年度に、四日市地域では毎年度に、それぞれ採取試料から除草剤耐性タンパク質が検出されている。
四日市地域の河川敷における今年度の調査では、外見上在来ナタネと思われる母植物及び種の同定が不確かな母植物10群落20試料の組織を対象にフローサイトメトリー解析及びDNAマーカー解析を行い種の同定を試みた。これらの試料のうち、4群落12試料はセイヨウナタネ、4群落5試料は在来ナタネであることを確認した。また、外見上在来ナタネと思われた3群落3試料はセイヨウナタネと在来ナタネの雑種と推定された。雑種と推定された試料からは除草剤耐性タンパク質は検出されなかった。なお、平成24〜25年度、平成29〜令和3年度及び令和5年度に雑種と推定される個体は確認されなかったが、平成21〜23年度、26〜28年度及び令和4年度には雑種と推定される個体の生育が確認されている。
また、セイヨウナタネにおいて、今年度、除草剤耐性タンパク質が検出されなかった母植物由来の種子及び実生で1種類の除草剤耐性タンパク質(CP4 EPSPSタンパク質)が検出された試料が3群落4試料確認された。この結果から、これらの母植物が生育していた場所で、非組換え植物と除草剤耐性を持った遺伝子組換え植物の間の交配が生じていたことが過去の結果と同様に示唆された。昨年度までに確認された除草剤耐性セイヨウナタネの生育地点は、主要道路が河川と交差する橋梁の近辺に集中していたが、今年度の四日市地域においても同様であった。
今年度の調査結果を過年度の調査結果と合わせて評価した結果、これまでに、除草剤耐性セイヨウナタネの分布に加え、除草剤耐性セイヨウナタネと非遺伝子組換えセイヨウナタネとの交配や、除草剤耐性セイヨウナタネ間での交配、近縁種への遺伝子流動等が確認されてきたが、いずれも輸送経路と考えられる主要道路沿線で確認されていたものであり、拡大の傾向も見られず、確認されている地点も毎年異なっており定着は確認されていないことから、除草剤耐性セイヨウナタネの使用等による生物多様性影響が生ずるおそれはないと考えられた。
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