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○平成22年度遺伝子組換え生物による影響監視調査の概要
平成22年度遺伝子組換え生物による影響監視調査報告書(PDF)

概要

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(以下、「カルタヘナ法」という。)第34 条において、「国は、遺伝子組換え生物等及びその使用等により生ずる生物多様性影響に関する科学的知見の充実を図るため、これらに関する情報の収集、整理及び分析並びに研究の推進その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされている。環境省では、西洋ナタネ Brassica napus に除草剤耐性が付与された遺伝子組換えナタネ(以下、「除草剤耐性ナタネ」という。)の生育等に関するデータの収集を平成15 年度以来継続的に行っている。現在、我が国で使用等されている除草剤耐性ナタネについては、その使用等に先立ち、カルタヘナ法に基づき、「食用又は飼料用に供するための使用、栽培、加工、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為」について生物多様性影響が生じるおそれがないものと評価され、承認されている。その際、輸送中に種子がこぼれ落ちることによる影響も含め評価がなされているが、実際にこぼれ落ちた種子により生物多様性影響が生ずるおそれがないことを確認するため、本調査により除草剤耐性ナタネの生育状況の把握を行っている。

 平成20 年度までの調査で、除草剤耐性ナタネを含む西洋ナタネの主要輸入港である国内の12 港湾(鹿島、千葉、横浜、清水、名古屋、四日市、堺泉北、神戸、宇野、水島、北九州及び博多並びにそれらの周辺地域を含む)のうち、鹿島、千葉、清水、名古屋、四日市、神戸、水島及び博多の8 地域の港湾並びにその後背地にある輸送経路と考えられる主要道路沿いで除草剤耐性ナタネの生育が確認されている。その中で、鹿島、四日市、博多の3 地域には、こぼれ落ち由来と考えられる西洋ナタネが比較的多く生育していることや、鹿島地域では採取試料内における除草剤耐性ナタネの割合が少ない一方で、四日市・博多の両地域では除草剤耐性ナタネの割合が多いことが確認されている。また、四日市地域では輸送経路と考えられる主要道路の橋梁付近の河川敷において、除草剤耐性ナタネと非遺伝子組換え個体や他の除草剤耐性を有する個体との交配が生じていることを示唆する種子や、除草剤耐性を持った西洋ナタネと在来ナタネ(B.rapa:栽培由来の外来種)の交配が生じていることを示唆する種子が確認されている。このようなことから、平成21 年度よりこぼれ落ち由来と考えられる西洋ナタネが比較的多く生育している鹿島、四日市及び博多の3 つの地域において調査を実施している。この中で、採取試料内における除草剤耐性ナタネの割合が低い鹿島地域と、その割合が高い博多地域については、引き続き港湾並びにその後背地にある主要道路沿いにおいて調査を行うとともに、四日市地域については、除草剤耐性ナタネの生育が確認されていた主要道路沿いの3 河川敷周辺において、橋梁の上下流の河川敷に調査範囲を広げ、除草剤耐性ナタネの分布と近縁種(在来ナタネ、カラシナ)への遺伝子流動の状況を重点的に調査している。

 平成22 年度は、引き続き、鹿島地域及び博多地域では、港湾と主要道路沿いで西洋ナタネと近縁種の母植物組織(葉)を中心に採取し、四日市地域では、河川敷で西洋ナタネと近縁種の母植物組織(葉)及び種子(一部は母植物組織のみ)の採取を行った。3 つの地域の合計471 地点から採取された母植物組織に対して、免疫クロマトグラフ法により2 種類の除草剤耐性タンパク質(CP4 EPSPS 及びPAT)の解析を行った結果、いずれの地域の西洋ナタネからもそれらのタンパク質が検出された。これら除草剤耐性ナタネが確認された地点の割合は地域により大きく異なっていた。鹿島地域で除草剤耐性タンパク質が検出されたのは、165 地点のうち9 地点であった。それに対し、四日市地域では、採取された180 地点のうち81 地点で、また博多地域では、126 地点のうち55 地点で西洋ナタネから除草剤耐性タンパク質が検出された。このような地域差は平成20、21 年度の調査でも確認されている。

 四日市地域の河川敷における調査では、母植物組織ではCP4 EPSPS またはPAT のどちらか一方のタンパク質が検出された母植物由来の種子から、両方のタンパク質が検出された試料が6地点で確認され、それらの母植物が生育していた場所で異なる除草剤耐性を持った遺伝子組換え植物間の交配が生じたことが過去の結果と同様に示唆された。また、確認された除草剤耐性ナタネの生育地点は、昨年度と同様に主要道路が河川と交差する橋梁の近辺に集中していた。
 植物の形態及び母植物組織のフローサイトメトリー解析により、昨年度に引き続き、四日市地域の河川敷で西洋ナタネと在来ナタネの雑種と思われる個体の生育が確認された。これらの試料(7 地点の8 個体の母植物とそれら由来の種子)のうち2 地点の2 試料で除草剤耐性タンパク質が検出された(CP4 EPSPS とPAT が各1 試料)。

 以上のように、これまでの調査により、除草剤耐性ナタネ等の分布に加え、除草剤耐性ナタネと西洋ナタネの交配や、除草剤耐性ナタネ間での交配、近縁種への遺伝子流動等が確認されてきたが、これらはいずれも輸送経路と考えられる主要道路沿線で確認されているものである。今後もこれらの地域において、除草剤耐性ナタネ及び交雑個体が定着し、主要道路沿線を離れて分布が拡大していく可能性の有無等に着目して、モニタリングを継続していく予定である。