本報告書は、第3回自然環境保全基礎調査の総合解析結果をとりまとめたものである。

 自然環境保全法の定めるところに基づき、おおむね5年ごとに実施されてきた「自然環境保全基礎調査」も3回を数え、それによって得られた我が国の生物的自然及び陸水域、海岸域に関する情報の蓄積は膨大なものとなった。また、世界的にもあまり例のない全国土にわたる1/50,000現存植生図が完成し、広く、一般に活用されるなど我が国の自然環境に関する情報及びその整理・加工・公開システムは、先進諸国に比肩しうるところへ到達したといえよう。

 一方、情報の利用を見ると、環境アセスメント等において、「貴重な自然」の有無に着目して個別のデータが単独で利用される場合が多く、各種調査結果を総合し自然環境総体を把握する試みは、少数にとどまっている。また、各調査における評価・選定基準やデータの持つ意味が十分理解されずに利用されている例もみられる。

 現在急速に進行している開発を考えると、こうした残された「貴重な自然」を、先ず保護の優先順位の高いものとすることが必要であるが、さらに、国土の自然環境の体系的な保全を図るためには、自然環境を総体としてとらえ、全国あるいは地域ごとの特性を十分把握した上で、それらに応じた積極的、予防的な保全施策を進めていくことが求められている。そのためにも、自然環境保全基礎調査による情報システムの充実と活用は不可欠である。

 このような自然環境保全基礎調査の情報に対する要請とその蓄積状況を踏まえ、本調査では、以下の2点を主な目標とした。

 1.自然環境保全基礎調査の経過と成果を総括し、得られた結果として何があり、どのように利用できるかを前述の視点に立って再整理し、把握すること。

 2.これまで蓄積された情報を相互に関連づけ、総合することにより、原生自然のみならず、農林業地域、都市地域に至るまで、我が国の自然を総合的に把握し、体系的・積極的な保全のための基礎資料を作成すること。

 本報告書は、上記1に係わる「総括編」及び2に係わる「解析編」から構成される。本書は、その「解析編」である。

 なお、同時に第3回自然環境保全基礎調査において各種作成された磁気データを整理し、自治体等での利用に資するため「磁気データファイルの概要」を作成した。

 また、本報告書の作成にあたり情報の集計、とりまとめ業務については、環境庁自然保護局からの請負業務として(財)日本野生生物研究センターが実施した。

 最後に、本調査の企画立案からまとめに至るまで御指導頂いた検討会(分科会)の学識経験者の方々並びに、貴重な時間をさいて分布情報の提供に御協力頂いた専門家の皆様に心から感謝の意を表する次第である。

 

平成元(1989)年3月

環境庁 自然保護局

 

 

   スタッフ

 

アドバイザリーグループ

 東京大学 総合資料館

  大場秀章、天野 誠、池田 博

東京大学 農学部

 武内和彦、恒川篤史、池口 仁

 

ワーキンググループ

 財)日本野生生物研究センタ−

有本 誠

朴 京煥

茨城康弘

真板昭夫

中野康範

斉藤秀生

酒井 忍

千石正一

鋤柄直純

鋤柄尚子

高野俊一

常田邦彦

山瀬一裕

米田政明

(abc順)

 

 

 なお、大場秀章、天野 誠、池田 博の各氏には3章2〜5、3章6.2、4章1、5章1、11章の執筆担当を、武内和彦、恒川篤史、池口 仁の各氏には9章の執筆担当をお願いした。

 

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