ま え が き

 

 我が国の国土は、亜寒帯から亜熱帯にわたる大小の島々から成り、長く屈曲に富む海岸線、起伏の多い山岳、深い峡谷等の変化に富んだ地形や、温暖湿潤な気候風土に育まれた多彩な動植物相が見られる。

 日本人は古来、これらの自然や風景を、山紫水明、白砂青松と呼びならわし、国の誇りとし、また、緑豊かなふるさとを地域の共有財産として創り育ててきた。

 しかし、戦後の高度経済成長に伴う急激な社会の変化は、国民に所得や福祉の向上、豊かな物質生活をもたらす一方、国土の大規模な開発や土地利用の高密度化により、公害と自然破壊を引き起こすこととなった。

 環境庁は昭和46年の発足以来、国民各層の理解と協力を得て環境問題の解決に真剣に取り組んできたが、自然保護の分野においては、47年に自然環境保全法が制定され、これにより我が国の自然環境を保全するための基礎が確立された。自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)は、この法律に基づき実施されることになったわけであるが、国土の自然の全容を明らかにするこのような調査は、自然保護施策の科学的な展開を図る上での画期的な成果の一つである。

 この報告書は、53、54年度に調査を行い、55、56年度に集計整理した第2回自然環境保全基礎調査の結果をとりまとめたものである。日本列島における自然の改変状況、植生や野生動物の分布等について科学的に把握された結果がありのままの姿で示されている。

 本書を通して一人でも多くの人々が我が国の自然環境について理解と認識を深められ、自然保護の活動がより一層推進されることを期待するとともに、この調査の結果が各種行政や研究あるいは環境影響評価等の基礎資料として活用され、自然環境保全のために役立つことを願う次第である。

 おわりに、この調査の実施に当たり多大の御協力をいただいた関係各位に心から謝意を表するものである。

 

昭和57年3月31日

国務大臣

環境庁長官

原 文兵衛

 

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