調 査 方 法

1.対象地域および実施期間

 調査は、日本全国47都道府県の全域を対象として調査区画を選定するという、一種のサンプリング法により実施された。原則として島嶼部の現地調査は行なわなかったが、離島に調査員が住んでいる場合、島が多く、そのうちの重要な離島を調査する必要のある沖縄県の場合、または日本野鳥の会各支部(会員グループ)が調査の必要性を認めた場合には、それぞれ例外として離島の現地調査も実施した。

 1978年度の委託契約として、同年4月1日より翌年3月31日の間に、調査とその結果のとりまとめが行なわれた。

2.対象とした鳥類

 日本で繁殖する、あるいは繁殖の可能性のある257種(野生化した外国産飼鳥を含む)を調査の対象とした(表1)。これ以外でも、調査期間中に繁殖の可能性が記録された種類は、追加してさしつかえないものとした。

3.調査区画の単位

 国土地理院発行の2万5千分の1地形図を縦横それぞれ2等分してできる区画をサブメッシュとし、これを調査区画の単位とした。尚、他の地形図との対応を図1に示した。20万分の1地形図に対応する大きさの区画が第一次メッシュ(4桁の数字であらわす)で、稀少種の繁殖分布地図の単位となっている。第二次メッシュは2万5千分の1図に対応するもので、20万分の1図の縦横をそれぞれ8等分して出来る区画に00から77迄の番号をつけ、その区画の含まれる第一次メッシュコードの4桁と併せて、6桁のコード番号をもって表示する。5万分の1図が普通種の繁殖分布地図の単位となっている。

4.調査の種類と方法

 野外での実地踏査によりデータを収集した現地調査と、既存の資料から得られたデータをまとめた資料調査の2種類を採用した。これには、日本野鳥の会会員に野鳥43(5):28−29を通じて呼びかけたアンケート調査の結果も含まれている。それぞれの調査方法は次の通りである。

1) 現地調査

  a 調査事項

  生息鳥類の種類と繁殖の可能性、生息環境の概要、および個体数の概況の3項目を把握する。

  b 調査メッシュの選択と調査コースの設定

  国土地理院発行の5万分の1地形図を縦横それぞれ2等分してできるメッシュのうち、多様な環境を含む2メッシュを選択し、それぞれのメッシュ(2万5千分の1地形図に相当)内の、環境が多様で鳥類相が豊富と思われる調査区画(サブメッシュ)を1つ選択し、その中に全長3kmの調査コースを1本設定して調査する(図2)

  c 調査日程、期間および回数

  原則として1泊2日の日程で、1978年4月1日から同年8月31日までの期間中に、調査コースを1回以上踏査する。

  d 現地調査方法

1 時速2km程度で調査コースを歩行し鳥を記録するロードサイドカウントと、原則として同コースの開始点および終了点で30分ずつ行う定点カウントを併用する。

2 調査の範囲(カウントの幅)は限定せず、調査コースおよび定点からの距離にかかわらず、必要なデータを記録する。但し、同一個体をダブルカウントしないよう注意する。

3 確認することのできた鳥種、個体数、鳥を記録した位置(サブメッシュの内か外かの区別)、囀やその他繁殖の可能性に関する行動や徴候、調査コースの植生、地形などを記録する。

2) 資料調査

  a 調査事項

  生息鳥類の種類と繁殖の可能性、生息地の位置、および調査年月日又は出典の3項目を調査事項とする。

  b 調査メッシュの選択

  できるかぎり多くのサブメッシュについて調査されることが望ましいとする。

  c 記録対象

  印刷公表されたものや個人の観察記録などのうち、繁殖可能性区分(表2)のA又はBランクに該当するもの、1974年以後の記録で、出典、調査年月又は期間、調査者、記録された位置がどのサブメッシュに含まれるかが、いずれもはっきりしているものを対象とし記録する。

5.調査員

 調査員は日本野鳥の会会員で、同会の各支部あるいは調査受託者から推薦され、本調査に関して直接説明をうけた者に限られた。

6.繁殖可能性および個体数の判定

 繁殖状況票の記入事項のうち、繁殖可能性をいかに判定するかは、本調査のまとめの最終段階で最も重要な作業であった。客観的な観察事項にもとづいた繁殖可能性の区分判定ができるよう一定の基準が定められた(表2)

 個体数の判定は、現地調査のカウント結果にもとづき、個体数の区分(表3)に従って行なわれた。個体数の状況が不明のサブメッシュ(例えば、現地調査の行なわれなかったサブメッシュ)や、個体数の状況が不明の種(例えば、現地調査において出現しなかった種)については、個体数欄は空白とした。

7.調査結果のとりまとめと点検

 調査結果は日本野鳥の会事務局(以下事務局という)が指名した各支部の代表調査員を中心に、調査員が次の各調査票(資料4)にとりまとめた。

 1) 8月31日迄に終った現地調査の結果は、調査コース(サブメッシュ)の調査1回毎に記録用紙をもとにして現地調査票に、また調査コース毎に環境調査票にそれぞれとりまとめられた。

 2) 資料調査の結果は、サブメッシュ毎に資料調査票にとりまとめられた。

 3) 繁殖可能性および個体数の区分に従って、記録用紙、現地調査票、資料調査票をもとに、サブメッシュ毎に繁殖状況票にとりまとめられた。

 以上の調査票は、調査員によって9月15日迄に代表調査員へ送られ、点検が行なわれた。尚、県外のサブメッシュについての資料調査票は一担事務局へ送られ、さらに該当県の代表調査員へ転送されて点検整理が行なわれた。記録用紙以外の一連の調査票は10月31日迄に事務局へ送られ、繁殖状況票の繁殖可能性の項は総て再点検された。

 調査の最終結果は、現地調査と資料調査(一部アンケート調査を含む)の結果をもとにした繁殖状況票(01)、現地調査の行なわれなかったサブメッシュについて、資料調査(一部アンケート調査を含む)のみにもとづいた繁殖状況票(02)および現地調査の結果にもとづいた環境調査票(03)の3部である。これらが1978年度調査結果の集約であり、次に述べる電算機によるデータ処理の原票となった。尚、1978年度調査フローの概略は、図2に示されている。

 

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