5 その他

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植物目録の作成

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A

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B

昭和59〜61年度

B植物目録(上)(中)(下)(昭和62年)

C

 −

 

 

1.作成の目的

自然環境保全基礎調査における植物に関する調査については、「植生調査」及び「特定植物群落調査」等の植物群落に着目した調査は実施されているが、植物の種レベルの調査については、「環境指標種調査(身近な生きもの調査)」等の例はあるものの、これまで本格的な取り組みがなされないできた。

動植物の種レベルの全国的な分布調査を行う場合、調査対象の明確化及び調査のための多数の専門研究者が必要となるが、特に植物の種レベルの調査の実施に当たっては以下に挙げるような障害があった。

○植物は動物に比ベ変種、品種の区分等があり、分類体系が複雑であること

○専門研究者間での統一見解としての植物目録が作成されていないこと

○種の多さ(約5,500種)に比ベ専門研究者の数が少ないこと

 

そこで昭和59年11月、自然環境保全基礎調査のもとに植物分類分科会を設置し、環境庁が自然環境保全基礎調査に標準として使用する植物分類学的に整理した目録の作成について検討に入った。

植物目録の作成は、植物分類分科会での基本的な事項の検討、決定、ワーキンググループでの作業手順の検討、自然環境調査室での素案作成、植物分類専門家の再々の確認、加筆修正等々の作業を経て、着手後およそ3ヶ年を要して昭和62年に完成した。

 

2.植物目録の概要

<対象植物>

 

日本に生育する野生のシダ植物及び種子植物の全種を網羅することを目指し、分類は、種、亜種、変種、品種、亜品種まで区分した。その結果、それぞれに区分された数は以下のとおりである。

・種

5,565

・亜種

124

・変種

1,612

・品種

815

・亜品種

2

計 8,118

 

<目録の構成、内容>

 

本目録は上記8,118種類が検索の方法別に分類系順、学名ABC順、和名50音順の上、中、下3巻にまとめられた。

いずれにも科名、学名、和名が収録されている。

 

■植物の分類

植物だけでなく生物の分類は種という単位を基本としている。種の進化してきた道筋を考えあわせ、種は属、科、目、綱などのグループ(これを分類階級という)にまとめられる。種にはいろいろな変異(個体差など)が含まれ、その変異の程度に応じて亜種、変種等の種内分類群が認められている。

『植物目録』では、5,565種の種を採録したが、一部の種では種内分類群として亜種、変種、品種、亜品種が区分された。亜種、変種などを含む総数は8,118である。種、亜種、変種などは以下のように定義される。

●種

植物の分類群の基本になる。重要な分類学的形質によって、他の個体と明らかに区別できる個体の集まりをいう。遺伝するはっきりした形態学的特徴をもち、一般に細胞遺伝学的、生態学的、生理学的にも他の種と異なっている。

●亜種

多くの個体については同じ種と区別できるが、わずかな中間形によって連続するような場合に用いられる。はっきりと分布地域が異なるような変種を亜種とすることもある。現在、植物分類学では亜種の定義は学者によって異なり、亜種を認めない立場もある。

●変種

基本的には同じ種の他の個体と同じだが、大きさや毛の有無などで区別できる個体をいう。変種は独自の分布域をもっているのが普通である。亜種の下の階級であるが、亜種を認めない立場では、亜種の概念も含まれる。

●品種、亜品種

基本的には同じで、花の色の違いなどごく一部のみの違いがある個体を品種という。普通は独自の分布域をもたず、同じ種の他個体の中に混生していることもある。亜品種は違いの程度がさらに軽微な個体で、この階級は使用されることが少ない。

 

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