2 陸水域に関する調査

●2−2

湖沼調査

@

 −

 

A

昭和54年度

A湖沼調査報告書(昭和55年/都道府県別37冊)

A陸水域関係調査報告書(湖沼)(昭和56年/全国版)

B

昭和60年度

B湖沼調査報告書(昭和62年/地方別7分冊)

B湖沼調査報告書(昭和62年/全国版)

C

平成3年度

 

 

1.調査の目的

わが国の主要な天然湖沼の自然性の消失を監視し、その保全に資するために、湖沼の水質、湖岸の改変状況、魚類の生息状況等を把握する目的で実施された。

 

2.調査の内容と方法

調査対象となった湖沼は、原則として面積1ha以上の天然湖沼のうちの主要なものであり、第2回基礎調査においては487湖沼、第3回基礎調査においては483湖沼(*1)、第4回調査においては480湖沼(*2)が対象となった。

*1: 第2回調査対象湖沼のうち、5湖沼が消滅し、1湖沼が新たに調査対象とされたため。

*2: 第3回調査対象湖沼のうち、3湖沼が湖沼の形状を留めないとされたため。

これらの湖沼において、以下の3項目(@〜B)の調査が実施された。

@湖沼概要調査

調査対象湖沼の概要を把握するため、成因、面積、水質、最大水深等の20項目の調査。

A透明度調査

透明度、水温、気温、pH、DOの5項目の調査。第4回基礎調査においては、EC、アルカリ度を加えた7項目の調査。

B湖沼改変状況調査

調査対象湖沼の改変状況等について、湖岸改変状況(湖岸を「自然湖岸」、「半自然湖岸」、「人工湖岸」、「水面」に区分するもの)、湖岸土地利用状況(湖岸の土地利用を「自然地」、「農業地」、「市街地・工業地・その他」、「水面」に区分するもの)、湖岸の保全地域指定状況等6項目の調査。

C魚類調査

環境庁の定める特定湖沼(第2回調査は61湖沼、第3回調査以降は新澪池を除く60湖沼で実施)について、魚類相に関する記録、現在の魚類相、漁獲量等5項目の調査。

Dプランクトン調査(第4回基礎調査のみ実施)

上記特定湖沼について、プランクトン相(植物及び動物)の調査。

 

3.調査結果

第3回基礎調査の結果の概要は以下のとおりであった。

 

(1)湖沼概要調査

 

調査対象湖沼の湖沼面積の合計は2,380.08km2で、国土面積の0.63%にあたることが明らかとなった。また、湖沼の形態で最大値を示すのは次に示す湖沼であった。

●湖沼(形態)の最大値

標  高:二の池(長野)

2,905.0m

面  積:琵琶湖(滋賀)

 669.20km2

最大水深:田沢湖(秋田)

 423.0m

平均水深:田沢湖(秋田)

 280.0m

容  積:琵琶湖(滋賀)

  27.57km3

湖岸線延長:琵琶湖(滋賀)

 231.4km

 

(2)透明度調査

 

透明度の全湖沼平均値は3.0mであった。透明度の高い湖沼は摩周湖(25.0m)、然別湖(19.0m)、倶多楽湖(19.0m)の順となっている。透明度の高い湖沼の成因をみると、堰止湖、カルデラ湖が多く、湖沼型をみると貧栄養湖、酸栄養湖が多い。

 

(3)湖沼改変状況調査

 

湖沼全体の湖岸の状況は、自然湖岸58.7%、半自然湖岸11.8%、人工湖岸28.7%、水面0.8%であった。

また、人工湖岸率が50%以上であり、かつ市街地・工業用地に利用されている湖岸の割合が30%を超える「改変が進んだ湖沼」は、第2回基礎調査から第3回基礎調査の間に19湖沼から27湖沼に増加した。これらはいずれも平野部にある海跡湖であった。

一方、非改変湖沼は218湖沼あったが、一般に規模の小さいものが多く、湖岸線延長でみると1km未満の湖沼が107湖沼と約半数を占めた。

 

(4)魚類調査

 

生息魚類数が多いのは宍道湖(59種生息)、涸沼(52種生息)をはじめとする湖沼で、成因別では汽水魚、沿岸魚の侵入する海跡湖の魚類相が豊かであった。海跡湖以外では、固有の魚種を多くもつ琵琶湖(断層湖、52種生息)の魚類相が豊かであった。

第2回基礎調査の結果とくらべた魚類相の変化の多くは、汽水魚・沿岸魚等周縁性の魚類に関するものであった。一方、ブラックバス(オオクチバス)をはじめとする外国産の移入魚は各地の湖沼で増加する傾向が認められ、湖沼本来の生態系の攪乱が懸念される状況であった。

 

■湖岸の改変状況 実数:湖岸線延長(km)  ( ):構成比(%)

調査年度

湖沼数

全体

自然湖岸

半自然湖岸

人工湖岸

水面

第2回調査

(54年度)

479

3,150.5

(100.0)

1,899.6

(60.3)

326.7

(10.4)

903.4

(28.6)

20.8

(0.7)

第3回調査

(60年度)

479

3,165.1

(100.0)

1,858.8

(58.7)

373.3

(11.8)

908.6

(28.7)

24.4

(0.8)

増減

(△は減少)

 

14.6

(0.0)

△40.8

(△1.6)

46.6

(1.4)

5.2

(0.1)

3.6

(0.1)

(注1)比較の対象湖沼は、第2回、第3回とも湖岸の改変状況を調査している479湖沼である。

(注2)調査湖沼全体の湖岸線延長の差は、再測によるものである。

 

■湖岸線延長5km以上の非改変湖沼

順位

湖沼名

成因

湖沼型

湖岸線延長(km)

自然公園

都道府県

摩周湖

カルデラ

19.8

国立

北海道

湧洞沼

海跡

17.8

北海道

温根沼

海跡

13.6

道立

北海道

パンケトウ

堰止

12.4

国立

北海道

生花苗湖

堰止

12.2

北海道

武周池

堰止

9.7

国定

福井

長節沼

海跡

8.6

北海道

パンケ沼

海跡

7.3

国立

北海道

ジュンサイ沼

その他

7.0

国立

北海道

10

チミケップ湖

堰止

6.5

北海道

11

オコタンペ湖

堰止

6.5

国立

北海道

12

長沼

その他

6.4

国立

北海道

13

ボロ沼

海跡

6.0

北海道

14

達古武沼

海跡

5.8

北海道

14

ペンケ沼

海跡

5.8

国立

北海道

14

田光沼

堰止

5.8

青森

17

ホロカヤント湖

海跡

5.7

北海道

18

弁天沼

海跡

5.5

北海道

成因の「その他」は、断層湖、火山湖、堰止湖、海跡湖以外の成因

湖沼型:貧(貧栄養湖)、富(富栄養湖)、中(中栄養湖)、腐(腐植栄養湖)

 

■湖岸区分の定義

区 分

内    容

●自然湖岸

水際線及び陸側20mの区域内が自然状態を保ち人工構造物が存在しない部分

●半自然湖岸

水際線は自然であるが、幅20mの区域内に人工構造物が存在している部分

●人工湖岸

水際線が人工構造物でできている部分

1)この調査で「湖沼の区域」とは、最高の水位の時の静水面の広がっている区域をいう(したがって流入・流出する河川の区域を含まない)。

2)「水際線」とは、最高の水位における水面が陸地と接する部分をいう。

3)「湖岸」とは、水際線より陸側100mの区城をいう。

 

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