1 陸域に関する調査【植物】

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特定植物群落調査

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A

昭和53年度

A特定植物群落調査報告書(昭和54年/都道府県別47冊)

A特定植物群落調査報告書(昭和56年/全国版)

A1/20万動植物分布図(昭和56年/都道府県別53面)

B

昭和59〜61年度

B特定植物群落調査報告書 追加・追跡調査(昭和63年/都道府県別47冊)

B特定植物群落調査報告書 生育状況調査(昭和63年/都道府県別47冊)

B特定植物群落調査報告書(昭和63年/全国版)

B1/20万自然環境情報図(平成元年/都道府県別53面)

C

 

 

1.調査の目的

わが国は気候や地形・地質等の諸条件からその面積の割にきわめて豊かな植物相を有しており、とりわけ森林の発達は著しい。

しかし、全国各地で急速に進んだ都市化や工業化による大規模な土地開発あるいは天然林の伐採・人工林地化等は、日本列島の植物相の多様性を次第に失わせつつある。

このような状況において、わが国の自然を健全な姿で後代に伝えるためには、わが国の植物相を具体的に形づくっている植物群落のうち、規模や構造、分布等において代表的・典型的なもの、代替性ないもの、あるいはきわめて脆弱であり、放置すれば存続が危ぶまれるものなどの種類やその生育地、生育状況等を把握し、保護対策を検討する必要がある。

本調査は、このため次に示す選定基準を設けて、これに該当する植物群落を地域特性も考慮しながら都道府県別に選定し、その分布や生育状況及び変化の状況を把握しようとするものである。

 

■特定植物群落選定基準

原生林もしくはそれに近い自然林(特に照葉樹林についてはもれのないように注意すること)

国内若干地域に分布するが、極めて稀な植物群落または個体群

比較的普通に見られるものであっても、南限、北限、隔離分布等分布限界になる産地に見られる植物群落または個体群

砂丘、断崖地、塩沼地、湖沼、河川、湿地、高山、石灰岩地等の特殊な立地に特有な植物群落または個体群で、その群落の特徴が典型的なもの(特に湿原についてはもれのないように注意すること。)

郷土景観を代表する植物群落で、特にその群落の特徴が典型的なもの(武蔵野の雑木林、社寺林等)

過去において人工的に植栽されたことが明らかな森林であっても、長期にわたって伐採等の手が入っていないもの

乱獲その他人為の影響によって、当該都道府県内で極端に少なくなるおそれのある植物群落または個体群

その他、学術上重要な植物群落または個体群

 

2.調査の内容と方法

第2回基礎調査及び第3回基礎調査において実施され、調査は都道府県に委託して行われた。

第2回基礎調査では、各都道府県ごとに植物社会学、生態学等に知見を有する調査員によって、特定植物群落が選定された。

第3回基礎調査では前回の調査結果を踏まえて、次の3項目の調査を行った。

@追加調査:

前回調査で選定もれとなった群落や、その後新たに発見された群落等で選定基準に合致するものを選定し、その生育地及び生育状況について調査した。

A追跡調査:

前回調査で選定された全群落を対象として、その変化の状況を把握するため、改変状況、原因等についての調査した。

B生育状況調査:

第2回基礎調査及び第3回基礎調査の追加調査で選定された特定植物群落のなかから植物群落の類型ごとに代表的、典型的な群落を抽出し、標本的な群落を対象として、その生育状況の現況について調査した。

 

3.調査結果

第3回基礎調査までの結果、特定植物群落は全国で5,085件、約113万haが選定され、これは国土面積の約3%にあたる。

第2回基礎調査から第3回基礎調査までの間に、面積、群落構成、個体数等に変化のあった群落は420件(11.0%)であった。

選定された特定植物群落を相観別に見ると、照葉樹林や湿原等も全国にわたりほぼ漏れなく選定された。

照葉樹林については、1件当たりの面積が小規模なものが多く、照葉樹林の分布域が古くからの日本人の生活域として利用され、自然に対して長らく人手が加えられてきたことを窺わせる結果が得られた。

また照葉樹林と同様、選定件数の多かった湿原の分布を見ると、北海道から沖縄まで、ミズゴケの発達した高層湿原やヨシなどの低層湿原など非常に多様な湿原が対象とされており、大規模な湿原は釧路湿原、サロベツ湿原をはじめ北海道に集中していることが判明した。

 

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