バイオセーフティクリアリングハウス
バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任及び救済に関する
名古屋・クアラルンプール補足議定書について



 国境を越える移動に起源を有する改変された生物から生ずる損害について、締約国の権限のある当局が、改変された生物を直接又は間接に管理する者に対して適当な対応措置をとることを要求すること等を規定するもの(カルタヘナ議定書を補足するものとして、21の条文で構成)。

1.目的(第1条)


 補足議定書は、改変された生物に関連する責任及び救済の分野における国際的な規則及び手続を定めることにより、人の健康に対する危険も考慮しつつ、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に寄与することを目的とする。

2.用語(第2条)


① 「損害」とは、生物の多様性の保全及び持続可能な利用への悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)であって、次の要件を満たすものをいう。
 ⅰ)測定し、又は観察することができること。
 ⅱ)次の要素に基づいて決定される「著しい」悪影響であること。
  a)合理的な期間内に自然の回復を通じて是正されることがない変化として理解される長期的又は恒久的な変化
  b)生物の多様性の構成要素に悪影響を与える質的又は量的な変化の程度
  c)生物の多様性の構成要素が物品及びサービスを提供する能力の低下
  d)議定書に定める範囲内で、人の健康に及ぼす悪影響の程度

② 「管理者」とは、改変された生物を直接又は間接に管理する者をいい、状況に応じ、国内法によって決定するところに従い、開発者、生産者、輸出者、輸入者、運送者等を含むことができる。

③ 「対応措置」とは、次のことのための合理的な措置をいう。
 ⅰ)状況に応じ、損害を防止し、最小限にし、限定し、緩和し、又は他の方法で回避すること。
 ⅱ)次の優先順位により措置をとることを通じて生物の多様性を復元すること。
  a)損害が発生する前に存在した状態又はこれに最も近い同等の状態に復元すること。
  b)aの措置が不可能であると決定する場合には、生物の多様性の喪失について、同一の場所又は適当な場合にはこれに代替する場所において、生物の多様性の他の構成要素であって同一又は他の目的で利用されるものにより当該喪失を埋め合わせることによって復元すること。


3.適用範囲(第3条)


 補足議定書は、締約国の管轄権の範囲内にある区域において国境を越える移動に起源を有する改変された生物から生じた損害について適用する。また、改変された生物の意図的でない国境を越える移動、不法な国境を越える移動及び非締約国からの国境を越える移動から生ずる損害についても適用する。


4.因果関係(第4条)


 因果関係は、損害と問題となる改変された生物との間に、国内法に従って確立される。


5.対応措置(第5条)


(1)締約国は、適当な管理者に対し、損害が生ずる場合には権限のある当局に直ちに報告すること、損害を評価すること及び適当な対応措置をとることを要求する。
(2)権限のある当局は、損害を引き起こした管理者を特定し、損害を評価し、及び当該管理者がとるべき対応措置を決定する。
(3)関連情報が、時宜を得た対応措置がとられない場合において損害が生ずる高い可能性があることを示すときは、管理者は、当該損害を回避するために適当な対応措置をとることを要求される。
(4)権限のある当局は、特に管理者が対応措置をとることができない場合も含め、適当な対応措置をとることができる。
(5)権限のある当局は、損害の評価及び(4)の適当な対応措置の実施に係る費用及び経費等を管理者から回収する権利を有する。
(6)管理者に対し対応措置をとることを要求する権限のある当局の決定に関し、国内法において救済措置(当該決定の行政上又は司法上の見直しのための機会を含む。)を定める。
(7)対応措置は、国内法に従って実施する。


6.免責(第6条)


 締約国は、自国の国内法において、免責又は責任の緩和について定めることができる。


7.金銭上の保証(第10条)


 締約国は、自国の国内法において金銭上の保証について定める権利を保持し、国際法に基づく自国の権利及び義務に反しない方法で、当該権利を行使する。


8.実施及び民事責任との関係(第12条)


(1)締約国は、自国の国内法において、損害に対処する規則及び手続を定めるとともに、この義務を実施するため、補足議定書に従って対応措置を定める。
(2)締約国は、民事責任に関する自国の国内法において、損害に関連する物的又は人的な損害について適当な規則及び手続を定める。


9.効力発生(第18条)


 補足議定書は、議定書の締約国である国又は地域的な経済統合のための機関による40番目の批准書、受託書、承認書又は加入書の寄託の日の後の90日目の日に効力を生ずる。






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