バイオセーフティクリアリングハウス
バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書について



1 検討の経緯


(1)生物多様性条約の条約化交渉における議論の概要(1992年5月)

米:バイオテクノロジー固有の危険性を示す科学的裏付けはなく、生物多様性条約で遺伝子組換え生物に関する規制的措置を導入するのは反対。
EC諸国:米案に反対。規制的措置の導入は必要。
途上国:遺伝子組換え生物については、大きな危険性があり最大限の注意が必要。規制的措置がなければ、途上国が先進国の実験台となる可能性がある。

(2)その後の検討経緯

1993年12月 生物多様性条約発効
1995年11月 生物多様性条約第2回締約国会議
・モダンバイオテクノロジーにより改変された生物であって、生物の多様性及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるものについて、特に越境移動(特に事前の情報に基づく合意のための適切な手続)に焦点を当てたバイオセーフティ議定書を検討すること
・締約国会議の下に作業部会を設置すること
 等を決定
 1996〜98年 計6回にわたる作業部会
 1999年2月 生物多様性条約特別締約国会議(於:コロンビア・カルタヘナ)
 2000年1月 生物多様性条約特別締約国会議再開会合(於:モントリオール)
       議定書採択


2 議定書の概要


 現代のバイオテクノロジーにより改変された生物(Living Modified Organisms;以下LMOと略:組換えDNA技術及び科を越える細胞融合技術によって得られたもの)の国境を越える移動に先立ち、輸入国がLMOによる生物多様性の保全及び持続可能な利用への影響を評価し、輸入の可否を決定するための手続きなど、国際的な枠組みを定めたもの。


(1)議定書の目的 

 特に国境を越える移動に焦点を合わせて、生物多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性のあるLMOの安全な移送、取扱い及び利用の分野において十分な水準の保護を確保することに寄与することを目的とする。


(2)議定書の適用範囲

 生物多様性に悪影響を及ぼす可能性のあるすべてのLMOの国境を越える移動、通過、取扱い及び利用について適用する。人用の医薬品は対象外。


(3)輸出入に関する手続き

@ 環境への意図的な導入を目的とするLMO(栽培用種子など)の輸出入に際しては、事前の通告による同意(AIA)手続きが必要。
輸出国(または輸出者)は、LMOの意図的な国境を越える移動に先立ち、輸入国に対して通告を行う。輸入国は、その情報を踏まえ、リスク評価を実施し輸入の可否を決定する。(別図参照)
A 拡散防止措置の下での利用を目的とするLMOの輸出入については、輸入締約国の基準に従って行われる場合にはAIAの適用除外。
B 食料若しくは飼料として直接利用し又は加工することを目的とするLMO(コモディティ)の輸出入に関しては、AIA手続きを必要とはせず、そのLMOの国内利用について最終的な決定を行った締約国は、バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH)を通じてその決定を他の締約国に通報する。輸入締約国は自国の国内規制の枠組みに従いコモディティの輸入について決定することができる。


(4)リスク評価、リスク管理の実施について
 輸入についての決定に際し、議定書付属書Vの規定に従ったリスク評価を実施するとともに、リスク評価によって特定されたリスクを規制し、管理し、制御する。


(5)取扱い、輸送、包装及び表示について
 議定書の締約国は、LMOの安全な取扱い等を義務づけるために必要な措置をとる。また、LMOには、必要な情報を含んだ文書を添付する。

(6)他の国際協定との関係について
 他の国際協定との関係は相互に補完的であり、本議定書は、現行の国際協定に基づく締約国の権利及び義務を変更するものと解釈してはならない。一方、本議定書が他の国際協定に従属することを意図するものではない。

(7)議定書の発効
 議定書は、2003年6月に50カ国が締結し、その90日後の9月に国際発効した。(締約国数など締約国に関する最新の情報については、議定書事務局ホームページ参照。http://www.biodiv.org/biosafety/signinglist.aspx?sts=rtf&ord=dt






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