3−3  動物分布調査(哺乳類)要綱

 

1. 調査の目的

わが国に生息する哺乳類の生息状況を把握するため、わが国に生息する大型及び中型獣8種の分布について調査する。

2. 調査実施者

国が都道府県に委託して実施する。

3. 調査対象地域

全国47都道府県全域について調査する。

4.  調査実施期間

契約締結の日から昭和54年3月31日までとする。

5. 調査内容

(1) 調査対象とする哺乳類は次のとおりとする。

地   域 調 査 対 象 哺 乳 類
北 海 道 シカ、ヒグマ、キツネ、タヌキ
本   州
四   国
九   州
ニホンザル、シカ、ツキノワグマ、イノシシ、キツネ、タヌキ、アナグマ

 

沖   縄 シカ、イノシシ

(2) 調査事項は次のとおりとする。

ア 生息地域

イ 生息状況

ウ 分布の変動(絶滅地域及び出現(絶滅)年代)

6. 調査方法

聞きとり調査により実施する。調査方法の詳細は、別紙1「聞きとり調査実施要領」による。

7. 調査結果のとりまとめ

受託者は調査結果を下記の図にとりまとめる。

(1) 哺乳類分布図

哺乳類の分布は、別紙2 「哺乳類分布図」(以下「分布図」という。)にならい、国土地理院発行の1/5万地形図に表示する。

(2) 哺乳類分布メッシュ図

哺乳類分布図をもとに、哺乳類の種ごとに別紙3 「哺乳類分布メッシュ図」「分布メッシュ図」という。)を作成する。

(3) 哺乳類出現(絶滅)年代図

当該動物がその地域からいつ頃いなくなったか、あるいはいつ頃から生息するようになったか、絶滅・出現の状況を別紙4 「哺乳類出現(絶滅)年代図」(以下「年代図」という。)にならい、哺乳類の種ごとにメッシュ図を作成する。

8. 調査結果の報告

受託者は、調査結果をとりまとめ、報告書150部、聞きとり調査票綴及び分布図各1部をそれぞれ別紙5「報告書作成要領」、別紙6「聞きとり調査票綴作成要領」、別紙7「哺乳類分布帳作成要領」により作成し、昭和54年3月31日までに環境庁自然保護局長あて提出する。

 

(別紙1)          聞きとり調査実施要領

1. 通 則

第2回自然環境保全基礎調査動物分布調査(哺乳類)の聞きとり調査は、この実施要領に従って行う。

2. 調査の統括

聞きとり調査は、原則として受託者が直接調査員を指揮して行い、調査結果をとりまとめる。調査の実施、結果のとりまとめにあたっては、適宜学識経験者の意見を聞くこととする。

3. 調査員

(1) 聞きとり調査にあたる調査員は、林業改良普及員等その土地の状況に詳しい者とし、原則として次の中から選定する。

 ア 林業改良普及員 オ 自然公園指導員等
 イ 鳥獣保護員 力 大学等における研究者
 ウ 都道府県林業事務所等職員 キ 小中高校生物担当教員
 工 市町村林務関係職員

(2) 調査の実施にあたっては、受託者は調査員に対して調査の趣旨、調査の方法等につき講習を行う。

4. 聞きとり地点

聞きとり調査を行う地点は次により定める。

(1)  国土地理院発行の1/5万地形図を縦横それぞれ4等分してできる区画(以下「調査区画」という。)を設定する。調査区画には、それぞれ次のように番号(以下「調査区画番号」という。)を付す。

(2) 1調査区画において原則として2地点を「聞きとり地点」として選定する。

当該調査区画内に人が定住していない場合、あるいは当該調査区画内全域の市街地化が著しく明らかに調査対象哺乳類の生息が認められないと判断される場合は、聞きとり調査を省略してさしつかえない。

5. 聞きとりの相手

聞きとり調査を行う相手(以下「回答者」という。)はできるかぎり哺乳類の生息状況について詳しい者(たとえば、林業作業員、営林署担当区職員、狩猟者等)とする。最奥の集落に住む者から聞きとることが望ましい。

原則として、1聞きとり地点においては2名以上から聞きとることとする。

 

 

1/5地形図○○

13 9 5 1
14 10 6 2
15 11 7 3
16 12 8 4

 

 

 

          

6. 聞きとり調査

(1) 聞きとりにあたっては、動物識別用カラー図版を示しながら、表1「聞きとり調査票」にそって聞きとる。

(2) 国土地理院発行の1/5万地形図を提示して聞きとり、目視地点、捕獲地点、生息地域等聞きとりの結果を直ちに当該地形図に哺乳類の種ごとに指定された色(以下「指定色」という。表2参照)の色鉛筆を用い図化する。なお、生息地が地点で回答された場合(目視地点、捕獲地点等)には、その地点を×印で示し、生息地が地域で回答された場合(例えば、「この沢沿いにいる」「この山の南斜面に広くいる」等)には、その地域を線でかこむ。

(3) 当該調査区画内の哺乳類の生息状況だけでなく、回答者が知っているすべての地域における哺乳類の生息状況について聞き出すよう努める。

(4)   同一地域について「生息する」という回答と「生息しない」という回答があった場合には、当該地域は「生息する」として取扱う。

7. 聞きとり調査票の整理

(1) 聞きとり調査票には、右肩に番号(以下「アンケート番号」という。)を打ち、聞きとり調査後は、番号順に整理して保管する。

(2) アンケート番号は、「地図番号」、「調査区画番号」、「回答者番号」を組みあわせて作る。

ア 「地図番号」(別紙2 「哺乳類分布図」に後述)には、当該調査区画が属する地形図の地図番号を記入する。

イ 「調査区画番号」には、当該調査区画の番号を記入する。

ウ 「回答者番号」には、調査区画ごとに、1からはじまる通し番号を回答者に付し、当該回答者の番号を記入する。


 留意事項

 表1「聞きとり調査票」( 2−11ページ〜2−18ページ)

 「質問2」は、「質問1」で「ア」と答えた者についてのみ実施し、「質問3」は、聞きとりの相手全員に対して行うこと。「質問3」で回答者が「生息していたところを知らない」場合は、「質問3」の欄は無記入でよい。


 

表1 聞きとり調査票

 

        表 紙

         

      

      

       

       

 

(別紙2)        哺 乳 類 分 布 図

   (分布図例)

     

(分布図作成上の注意)

1. 分布図には、必ず国土地理院発行の1/5万地形図を使用する。複写図、編さん図等は使用しないこと。

2. 調査の結果、哺乳類の分布が表示されていない地形図が出てきた場合は、その地形図は提出しなくてよい。

3. 1/5万地形図には、都道府県単位で東側から、北から南へ「地図番号」を打つ。(3−1植生調査要綱 別紙2の2参照(以下「地図番号図」という。)

4. 分布図例のように地形図の余白の所定の位置に「タイトル」「地図番号」「調査年度」(西暦)、「都道府県名」を黒インクで記入する。

また、分布図の凡例をそれぞれの地形図の下の余白に記入する。

5. 分布図には分布図を縦横それぞれ4等分する線を引く。

6. 分布図には聞きとり調査を実施した地点に径2mm程度の赤・印を付す。

7. 動物の目視地点、捕獲地点には×印を付し、動物の生息地域は実線で囲む。

×印及び生息地域を示す線はそれぞれ次に示す指定色に従って色わけする。

      表2 哺乳類の指定色一覧表

調査対象哺乳類 指    定    色
 ニホンザル  茶   色(三菱ポリカラーNO.7500 21)
 シカ  紫   色(   〃     〃  12)
 ツキノワグマ、ヒグマ  赤   色(   〃     〃  15)
 イノシシ  やまぶき色(   〃     〃   3)
 キツネ  も も 色(   〃     〃  13)
 タヌキ  青   色(   〃     〃  33)
 アナグマ  黒   色(   〃     〃  24)

8. 目視地点、捕獲地点、生息地域には、その脇にその情報が得られた聞きとり調査票のアンケート番号を記入する。

また、生息地域の場合には、その脇にその地域に当該動物がいつ頃から生息しはじめたのか、その年代を表3 「年代区分表」のように区分し、略号で表示する。

(例)

     

なお、一時絶滅して再び出現した場合の表示は、絶滅年代を先に、再出現年代を(  )に入れて続ける。

(例)大正時代に絶滅し、昭和30年代から再び生息するようになった場合の表示はT(S30)となる。

9. 昔生息していたが現在いない場合は、その生息地を点線で囲んで示す。

(例)

     

10. 生息地域が2枚以上の地形図にわたる場合は、関係する地形図ごとに生息しはじめた年代とアンケート番号を記入すること。

 

         表3 年代区分表

区     分 略 号
 1)明治時代及沙それ以前  M〜
 2)大正時代  T〜
 3)戦前(昭和1年〜19年) BW〜
 4)昭和20年代 S20〜
 5)昭和30年代 S30〜
 6)昭和40年代 S40〜
 7)昭和50年代 S50〜
 8)不明

 

(分布メッシュ図作成上の注意)

1  国土地理院発行の1/50万地方図に、表5 「5倍地域メッシュ用経緯線一覧表」(略)に示す経線及び緯線を記入し、メッシュを作成する。この1/50万地方図にトレーシングペーパーを載せ、県境とメッシュを写しとる。その際、表5で*印の付されている経線及び緯線については、線を太くする。

2以後の作業は、県境及びメッシュを写しとったトレーシングペーパーを用いて行う。

2  分布メッシュ図は、都道府県別に哺乳類の種ごとに作成する。

3  分布メッシュ図例のように、余白に、「タイトル」 「調査年度」、「都道府県名」「方位」、「距離スケール」(5kmきざみ程度の目盛を入れた図上で20〜30kmを示すスケール)を記入する。

4  調査結果(調査票、分布図)をもとに、表4 「生息状況区分表」に従って、調査区画ごとの当該種の生息状況を判断し、同表の表示方法欄に示されたスクリーントーンを当該調査区画に貼付する。

5  分布メッシュ図例のように、余白に生息状況区分について凡例を記入する。

6  分布メッシュ図作成にあたっては、調査区画内に当該種がごく一部でも生息している場合には、その調査区画を、生息すると判断する。

 

(年代図作成上の注意)

1  国土地理院発行の1/50万地方図に、表5「5倍地域メッシュ用経緯線一覧表」に示す経緯及び緯線を記入し、メッシュを作成する。この1/50万地方図にトレーシングペーパーを載せ、県境とメッシュを写しとる。その際、表5で*印の付されている経線及び緯線については、線を太くする。

2以後の作業は、県境及びメッシュを写しとったトレーシングペーパーを用いて行う。

2  年代図は、都道府県別に、哺乳類の種ごとに作成する。

3  年代図例のように、余白に「タイトル」、「調査年度」 「都道府県名」、「方位」、「距離スケール」を記入する。

4  調査区画ごとの当該種の出現(絶滅)年代を調査結果から、各調査区画に記入する。

5  出現(絶滅)年代の年代区分の表示方法は、表3 「年代区分表」によって行い、その略号をメッシュに記入する。

6  絶滅年代は、略号を○で囲んで示す。

7  年代図例のように、余白に、年代区分の表示方法を凡例として記入する。

 

表4 生息状況区分表

 動物種 生 息 状 況 区 分
表示方法
(スクリーントーン)
番  号
  備     考
群れの生息する地域 No.240 子供が確認されている地域の場合は、「群れの生息する地域」と判断する。
生息するが群れとは判断できない地域 No.124
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
一年中、生息している地域 No.240  
季節によっては生息している地域 No.124
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
繁殖地域 No.240 繁殖地域とは越冬し,子供を産む地域、1年中クマが生息していると考えられる地域をいう。出没地域とは1年中クマが生息しているとは考えられず、ある季節になるととくにエサを求めて歩き回る地域をいう。
出没地域 No.124
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
生息するという情報の得られた地域 No.240  
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
生息するという情報の得られた地域 No.240  
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
生息するという情報の得られた地域 No.240  
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域
生息するという情報の得られた地域 No.240  
生息するという情報の得られなかった地域 白地のまま
絶滅した地域

(注) シンボルマーク(★)Instant Lettering Symbols 商品番号566の中の5mm大きさを用いる。

(別紙3)       哺 乳 類 分 布 メ ッ シ ュ 図

(分布メッシュ図例)

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