生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021(JBO3)の結果

生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021(JBO3:Japan Biodiversity Outlook 3)とは

背景

我が国では、生物多様性や生態系サービスの状況を把握するために、2010年及び2016年に総合評価を実施しました。その結果、生物多様性の状態が悪化傾向にあることや、生態系サービスの多くが過去と比較して減少または横ばいで推移していること等が示されました。
国際的には、2019年に生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)、2020年に生物多様性条約事務局により、世界の生物多様性・生態系サービスに関する報告書がそれぞれ公表され、生物多様性の損失を止めるためには、「社会変革」による根本的な要因(社会・経済活動による影響)の低減が必要とされました。

目的

2010年と2016年を経て3回目の総合評価となるJBO3は、我が国における次期生物多様性国家戦略の検討のため、①日本の生物多様性・生態系サービスの現状を評価するとともに、②生物多様性の損失を止めて回復に向かわせるための「社会変革」のあり方について、科学的知見を提供することを目的として、「生物多様性及び生態系サービスの総合評価に関する検討会(座長:国立研究開発法人森林研究・整備機構 理事長 中静透)」により取りまとめられました。 日本の生物多様性及び生態系サービスの価値や現状等を国民に分かりやすく伝え、生物多様性保全に係る各主体の取組を促進するとともに、政策決定を支える客観的情報を整理することを目的として評価を行いました。

結果の概要

・日本の生物多様性の「4つの危機※」は依然として生物多様性の損失に大きな影響を与え、生態系サービスも劣化傾向にある。これまでの取組により、生物多様性の損失速度は緩和の傾向が見られるが、まだ回復の軌道には乗っていない。
※4つの危機:わが国の生物多様性が直面している危機は、生物多様性国家戦略において次の4つに分類整理されている。
第1の危機:開発など人間活動による危機
第2の危機:自然に対する働きかけの縮小による危機
第3の危機:人間により持ち込まれたもの(外来種等)による危機
第4の危機:地球環境の変化による危機

・将来の気候変動や、人口減少等の社会状況の変化にも耐えられるように、生態系の健全性の回復を図ることが重要。OECM※等により生態系のネットワークを構築することが有効。
※OECM:Other Effective area-based Conservation Measures
民間等の取組により保全が図られている地域や保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域。

・生物多様性の損失を止め回復に向かわせるためには、新たな視点での施策の展開が必要。自然を基盤とする解決策(NbS※)により気候変動を含む社会課題への対処を進めることや、社会・経済活動による影響への働きかけも含めた総合的な対策により、「社会変革」を起こすことが重要。
※自然を基盤とする解決策(NbS:Nature-based Solutions)
生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)やグリーンインフラなど、自然を基盤として社会の諸課題を解決していくアプローチを包含するコンセプト。

・社会変革に向けた万能な解決策はないものの、幅広く効果が見込める対策と、特定の危機に効果的な対策※がある。社会変革の方向性として、地域資源の活用による豊かでレジリエントな自然共生社会を目指し、自立・分散型社会の要素を取り入れることが重要。
※幅広く効果が見込める対策:ビジネスと生物多様性の好循環、教育や新たな価値観の醸成 等
特定の危機に効果的な対策(例):里地里山における定住・関係・交流人口を増やす取組 等

生物多様性及び生態系サービスの総合評価2021(JBO3)

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