生物多様性及び生態系サービスの総合評価の結果等

生物多様性及び生態系サービスの総合評価(JBO2:Japan Biodiversity Outlook 2)とは

 日本の生物多様性及び生態系サービスの価値や現状等を国民に分かりやすく伝え、生物多様性保全に係る各主体の取組を促進するとともに、政策決定を支える客観的情報を整理することを目的として評価を行いました。
 本評価は、生物多様性の損失の状態や要因について評価した「生物多様性総合評価報告書(JBO)」(平成22年5月公表)で課題として残されていた生態系サービスの評価等も含め、IPBESのConceptual Framework(概念枠組み)を参考に、「生物多様性の損失の要因」、「生物多様性の損失への対策」、「生物多様性の損失の状態」、「人間の福利と生態系サービスの変化」を対象として扱いました。うち、損失の要因と損失への対策は「生物多様性の危機」別に、損失の状態は生態系別に、生態系サービスについては、それが貢献する人間の福利毎に評価しました。

主な結論(生物多様性と生態系サービスの総合評価の主要な9つの結論)

  1. 生物多様性の概況については、前回評価時点である2010年から大きな変化はなく、依然として長期的には生物多様性の状態は悪化している傾向にある。その主要因についても、前回と変わらず、「第1の危機(開発・改変、直接的利用、水質汚濁)」、「第2の危機(里地里山等の利用・管理の縮小)」、「第3の危機(外来種、化学物質)」及び「第4の危機(地球規模で生じる気候変動)」が挙げられる。
  2. 2010年に比べ情報が揃いつつあることから、第4の危機のうち、「気候変動による生物の分布の変化や生態系への影響」が起きている確度は高いと評価を改めた。今後も気候変動が拡大すると予測されており、現在、なお影響が進む傾向にあると考えられる。
  3. 私たちの生活や文化は、生物多様性がもたらす生態系サービスによって支えられている。しかし、この国内における生態系サービスの多くは過去と比較して減少又は横ばいで推移している。
  4. 国内における供給サービスの多くは過去と比較して減少しており、とりわけ、農産物や水産物、木材等の中には過去と比較して大きく減少しているものもある。林業で生産される樹種の多様性も低下しており、供給サービスの質も変化してきた。
  5. 供給サービスの減少には、供給側と需要側の双方の要因が考えられ、前者としては過剰利用(オーバーユース)や生息地の破壊等による資源状態の劣化等が、後者としては食生活の変化や食料・資源の海外からの輸入の増加等による資源の過少利用(アンダーユース)が挙げられる。
  6. アンダーユースの背景には、食料・資源の海外依存の程度が国際的に見ても高いことがある。こうした海外依存は、海外の生物多様性に対して影響を与えるだけでなく、輸送に伴う二酸化炭素の排出量を増加させているおそれがある。また、国内での食料・資源の生産減少に伴い、耕作放棄地等が増加している。経済構造の変化に伴う地方から都市への人口移動により、農林水産業の従事者は減少し、自然から恵みを引き出すための知識及び技術も失われるおそれがある。
  7. 人工林の手入れ不足等の増加により、土壌流出防止機能を含む調整サービスが十分に発揮されない場合がある。また、里地里山での人間活動の衰退により、野生動物との軋轢が生じ、クマ類による負傷等のディスサービスが増加している。
  8. 全国的に地域間の食の多様性は低下する方向に進んでいる。また、モザイク的な景観の多様度も低下している。このため、自然に根ざした地域毎の彩り、即ち文化的サービスも失われつつあることが示唆される。
  9. 自然とのふれあいは健康の維持増進に有用であり、精神的・身体的に正の影響を与える。このような効果は森林浴からも得られるとされ、近年では森林セラピーの取組も進められている。都市化の進展により、子供の遊び等の日常的な自然との触れあいが減少している一方で、現在でも多くの人が自然に対する関心を抱いており、近年ではエコツーリズム等、新たな形で自然や農山村との繋がりを取り戻す動きが増えている。

 

生物多様性及び生態系サービスの総合評価(報告書)

生物多様性及び生態系サービスの総合評価の概要

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