はじめに

 本報告書は,環境庁自然保護局自然環境調査室の委託を受け,財団法人日本野生生物研究センターが実施した「過去における鳥獣分布情報調査」の結果をとりまとめたものである.

 昭和60年度「過去における動植物分布情報検討調査」においては,動植物の分布動態把握のための資料として江戸時代の「産物帳」(1730年代)を使っていく際の方法論・課題が検討された.本調査では,その成果をうけ,「産物帳」の情報をもとに30種の哺乳類・鳥類について,250年前の全国分布図を作成した.また,その内の一部については,現在「自然環境保全基礎調査」などで把握されている分布と,比較対照を行った.その結果,分布域や渡来地の大きな変化などの,いくつかの興味ある事実が浮き彫りにされた.

 この種の分野は未だ研究や資料が十分とはいえず,散逸したままとなっている資料も多い.本調査を契機として,資料がさらに「発掘」されることが望まれる.

 また,本調査の過程で,改めて動植物分布の現況把握における歴史的視点の重要性が認識された.その意味では,分布の現況に関する知見を継時的に蓄積すること,が不可欠と考えられる.こうした点からも自然環境保全基礎調査(動植物分布調査)の意義は大きく,今後のデータの蓄積が期待される.


 本調査にあたっては,山階鳥類研究所安田健氏,文化庁花井正光氏,財団法人工芸学会比田井和子氏に多大の御指導と資料の御提供をいただいた.厚く感謝申し上げる.

1987年3月25日

財団法人日本野生生物研究センター理事長 佐藤 大七郎

調査スタッフ

真板 昭夫 (財団法人 日本野生生物研究センター 主任研究員)

菰田  誠 (     同   上        研究員)

入倉 清次 (     同   上        研究員)

鋤柄 直純 (     同   上        研究員)

 

調査協力者

安田  健 (財団法人 山階鳥類研究所)

松山 利夫 (国立民族学博物館)

中村 禎里 (立正大学)

花井 正光 (文化庁記念物課)

比田井和子 (財団法人 工芸学会)

 

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