ツバメ類の生活の様子は?

 今回の調査では、参加されたみなさんに、ツバメの巣の写真を送っていただきました。その写真を使って、ツバメ類の繁殖生活の様子を紹介してみましょう。

 

1 ツバメ

巣材を運んできた親鳥

(写真/大阪府・広田喜江さん)

[巣作り]

 ツバメは、軒下などに巣を作りますが、その材料には泥と枯草を使います。水たまりや川岸に降りた親鳥は、口に泥を含んで持ち帰り、それを壁につけたり、台に乗せたりして巣を作っていきます。泥は一粒ずつ積み重ねていくように作るので、その仕事はレンガを積んで家を造っていくように見えます。

 

抱卵中の親鳥

(写真/新潟県・加藤和子さん)

[抱卵(ほうらん)]

 巣ができあがると、中に羽毛や枯草を敷き、メスはそこに毎日1個ずつ卵を産みこみます。卵の数は、平均5個くらいです。卵を産み終わった日から、親鳥は卵の上に座って温め始めます。これを抱卵といいます。ツバメではオスもメスも抱卵を行い、昼も夜も交代で座り続けます。親鳥が巣にすっぽりはまりこんだようにじっと座っていれば、抱卵しているのに違いありません。

 

育雛する親鳥

(写真/島根県・北原則夫さん)

[育雛(いくすう)]

 約2週間の抱卵で、卵が孵化してヒナが生まれます。ツバメのヒナは、孵化した時には丸裸で、体温が下がりやすいので、親鳥は巣でヒナを抱き続けます。ヒナが孵化すると、親鳥は忙しく餌を運ぶようになります。餌は昆虫で、ヒナが小さいときには羽アリとかユスリカのように小さいものが選ばれ、大きくなるにつれてチョウやトンボのような大きな虫を運ぶようになります。

 

 

巣立ちした幼鳥

 (写真/京都府・北村富藏さん)

[巣立ち]

 約3週間の育雛の間に、ヒナには羽毛が生えて、やがて翼や尾羽も生えそろい、巣立ちの時を迎えます。多くの場合、巣の中のすべてのヒナは続けて巣立ちますが、時には成長の遅れたものが、やや遅れることもあります。巣立ったヒナは巣の近くの電線などにとまり、しばらくは親鳥から餌をもらいます。やがて、巣立ちヒナは親から独立し、親鳥は2回目の繁殖に入ります。

 

繁殖スケジュール

 今回、報告のあったくらしのようすの記録から、各月を上中下旬に分けて、巣作り、抱卵、育雛に分けて報告数をグラフにまとめてみました。巣作りは4月上旬から多く見られるようになり、遅いものでは8月にも記録されました。抱卵は5月上中旬、育雛は5月下旬にもっとも多く記録されました。育雛の件数が多いのは、その段階で気づかれた方が多かったためと思われます。

 このグラフは、全国の記録をまとめて示したものですが、地域別にも大きな差は認められませんでした。このグラフでは、2回目の繁殖の様子がまったく現れていませんが、これは1回目の繁殖の記録だけで、観察を終わりにしてしまった方が多かったためと思われます。こうした記録も、みなさんからきめ細かくご報告をいただくと、ツバメの繁殖の様子について、もっと詳しく明らかにすることができるはずです。

 

2 コシアカツバメ

 コシアカツバメでは、巣がトックリ型をしている点に大きな特徴があります。その巣は入口にトンネルがあるので、巣の中の様子をのぞくことができません。巣の中の状態を推定するには、親鳥の出入りの回数などを細かく観察する必要があります。

巣を作る親鳥

(写真/兵庫県・江浦太之さん)

入口のトンネルの特に長い巣(右側)

(写真/滋賀県・橋本直文さん)

 

3 イワツバメ

 イワツバメの大きな特徴は、集団で巣を作ることです。その巣はツバメとコシアカツバメの中間のような形で、小さな入口しかありません。しかし、トンネルはないので、ヒナが大きくなると、その顔が入口から見えるようになります。

イワツバメのコロニーを見上げる人

(写真/新潟県・伊藤千恵子さん)

パイプの中に作られたイワツバメの変わった巣

(写真/熊本県・源島駒男さん)

 

自然の岩壁で見つかったイワツバメの巣

足尾のイワツバメの巣

(写真/栃木県・菊地知義さん)

 ツバメとコシアカツバメも、かつては人工的な建造物ではなく、洞窟や岩壁に巣を作っていたのでしょうが、日本ではそうした場所で巣が見つかったことはありません。イワツバメの場合には、現在でも自然の岩壁に巣を作っている場所がいくつか知られており、今回の調査では栃木県足尾の写真が寄せられました。貴重な写真としてご紹介します。

 

4 リュウキュウツバメ

リュウキュウツバメの巣

(写真/沖縄県・宮城延枝さん)

リュウキュウツバメの巣はツバメによく似ていますが、巣が赤っぽい感じがします。これは沖縄のような亜熱帯地方の土の色によるものです。

 

5 ヒメアマツバメ

ヒメアマツバメが羽毛などを材料に自分で作った巣で、多くの巣が集合している

(写真/神奈川県・菊池久登さん)

 ヒメアマツバメの巣作りの最大の特徴は、他の種の巣を利用して自分の巣にすることがあるということです。コシアカツバメとイワツバメの巣がよく使われますが、こうした種の巣を使う時には、巣の入口に羽毛をつける習性があり、それがヒメアマツバメの巣を探す目印になります。また、泥の巣が壊れたり落ちてしまったような場合、同じ場所に自分で巣を作ることもよく見られます。ヒメアマツバメ自身が作った巣は、全体を羽毛でおおったような外見になりますが、それは足が短くて地上に降りることができないので、巣の材料に空中を漂っている羽毛や枯葉を使うためです。

 

ショウドウツバメ

ショウドウツバメのコロニー

(写真/北海道・児玉正利さん)

 日本には、もう1種、繁殖しているツバメがいます。それは北海道のみで繁殖しているショウドウツバメです。このツバメは、自然の崖に穴を掘って巣にするという習性を持っており、建物に巣を作ることはないので、今回の調査の対象にはしませんでしたが、巣の写真を送ってくださった方がいるので、参考にご紹介します。営巣に適した条件の崖では、数千羽がまとまって営巣します。

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