1.調査結果の概要


1)各標本区の選定理由


(1)中津市大塚

 中津は豊前の中央にあたる溝口港が山国川にあり、河口から右辺に砂州の中津干潟が前浜に展開する典型的な位置にある。(アサリ、バカガイ、ノリ養殖場として重要。)


(2)宇佐市平松

 駅館川は山国川に次ぐ2級河川で、河口から右辺に広がる中津干潟に匹敵する。豊前海の西の中津干潟に対する東の和間干潟である。なお、平成2年度から、漁港の背後地地を住宅地として3ケ年計画で埋立てることとなっている。(沖出し316m×236m=75,000m2)(ハマグリの主産地である。)


(3)杵築市住吉浜

 別府湾北部域に位置する河口前浜で内湾性の干潟である。八坂川、高山川によって形成された干潟であり、瀬戸内海漁業取締規則により藻場として指定されている。アマモ場として幼稚仔が保護されている。(アサリ、マテガイの外、カキ養殖、ノリ養殖がなされている。住吉浜はリゾートとしてレジャー施設が整備されている。)


(4)大分市大在、新舞子浜

 別府湾南部の大野川河口右辺沿いに細長く形成された干潟で、55年に埋立てられた地先に出来た前浜である。(この干潟が形成されて、マテガイが異常に繁殖したが、潮干狩で採補されてしまった。)


(5)佐伯市女島(番匠川河口)

 この干潟は他の調査地域と異なり、河口域に広がる干潟である。(ここではアサリの主産地となっており、しかも、クルマエビ放流の好適地である。)


2)大分県内の干潟の底生生物の特徴


 中津干潟は山国川に由来する前浜である。底質は細砂で泥分比率の低い干潟域である。生棲環境はアサリ、バカガイ、イボキサゴ等の好適環境である。アサリは60年に年間27000トンの生産をしている。バカガイは年間2〜4000トンの生産がある。

 宇佐市和間地先は前浜であり、豊前ハマグリの主産地で1年間100トンの水準にある。ハマグリ漁場は澪沿いに形成されている。

 別府湾北部域に位置する守江湾は八坂川、高山川の河口域に広がる前浜であり、内湾性の干潟である。守江湾は住吉浜の行楽客が潮干狩や海水浴におとずれ、アサリ、マテガイを目的におとずれている程度で生産量は少ない。

 大分市大在新舞子浜の6号地の埋立ての間の干潟は規模も小さく、底生生物も少ない。

 佐伯市番匠川河口域に広がる干潟はアサリ、アナジャコ、モクズガニ、ゴカイ類が出現する干潟域である。この干潟域は佐伯アサリの主産地となっている。

 大分県内の干潟域の底生生物は干潟の分布域・干潟の依存度及び出現・質・量とも北高、南低となっている。特に豊前海の干潟域は生活の場として重要な地域である。アサリ、ハマグリ、バカガイは豊前海干潟域の重要資源であり、この3種類の貝は全国屈指の生産をこの干潟でしている。


3)大分県内の鳥類の特徴

 大分県内の鳥類の特徴は有明海諌早における種類数・質ともにおよばない。

(1) 大分県南海部郡米水津村、黒鳥のミズナカワウが数十羽群生していることは他に例をみない。

(2) また、佐賀関町高島に生棲するウミネコは、九州では珍しく数百羽群生しており、(1)・(2)ともに餌料となる小魚が豊富にあり、営巣繁殖して定着していることは学術的にも価値が高い。またこの地区は漁場として優れている。

(3) 干潟域に渡来する鳥類の種類・数量ともに多いのは、杵築市守江湾、中津市東浜、佐伯市番匠川支流木立地区、豊後高田市桂川河口域、山国川河口域の順に多かった。これらの地区はシギ、チドリの類が優先している。これらの干潟域は汚濁が進行しており、コサギ、ユリカモメ、アマサギ、ダイサギなどの白っぽい鳥が多い。

    これら河口域はマガモ、ヒドリガモ、カルガモ、ウミウ、カイツブリ、ウミネコユリカモメ、セグロカモメ等探鳥の格好の場であり、砂泥域でも泥分率が高く、底泥の汚染が進行した処にこれら鳥類の餌料となるシオマネキ類、マメコブシガニ、オサガニ類、コメツキガニ、ヤドカリ、エビ類、砂ジャコ、ヤドカリ、ゴカイ類などがあり、この他魚類では、ハゼ類があげられる。

    渡来する白い鳥の多い干潟域ほど汚染が進行しており、水産業の生産の場となっていない。

 

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