1.調査結果の概要


1) 標本区選定の理由ならびに調査方法、標本区の選定にあたっては、本県で最も広い干潟を有する有明海のうち、諫早湾北岸から、島原湾口にかけて、5地区を選び底生生物調査を行った。(図1参照)

 調査は、1989年8月28日から9月1日にかけて実施した。また、潮位を用いて1地区を上部(最高潮線〜潮位350p)中部(潮位350p〜200p)下部(潮位200p〜最低潮線)の3ゾーンに区分し、各10ヶ所、計30ヶ所について採集を行った。

2) 底生生物相の特徴

 今回調査を実施した地域は、有明海特有の軟泥底干潟と、一般的な砂泥底干潟に分けられ、底生生物相も、これに伴い2つに大別できた。

 有明海特有の軟泥底干潟は、諫早湾北岸と南岸の下部ゾーンの一部に見られた。干潟には微細な泥が厚く堆積し、上中部では、ヤマトオサガニなどの巣穴が多数開口しており、カニ類の姿が目立った。出現した生物も、これらのカニ類と多毛類、ムシロガイ類、シズクガイなどで、種類数、出現個体数ともに少なく、生物相は貧弱であった。

 しかし、今回の調査方法では、泥底の上層に生息する生物しか採集できず、調査結果が生物相を十分に反映しているとは言えなかった。

 一方、一般的な砂泥底干潟は、諫早湾南岸から島原湾口までの広い地域で見られた。

 ここでは、ウミニナ類、アサリなどを中心に、種類数、出現個体数ともに多く、豊かな生物相を示し、干潟生物にとって重要な生息場所となっていた。

 なお、鳥類で調査地に出現度も高く、個体数も多い鳥はカモメ類で、特にユリカモメが目立つ。出現する鳥の多くは、秋頃飛来し、春頃まで越冬生息する冬鳥が大部分である。

 

   図1.底生生物調査地点

 

目次へ