1.調査結果の概要


 山口県瀬戸内海側の東部から西部にかけて、なるべく分散するように4箇所から大型干潟を選定した。

 岩国市錦川水系河口の門前川干潟は、今津川干潟と共に県東部では最大の干潟(約50ha)を形成しており、アサリの生産量も多く、漁業の依存度が高い干潟である。

 底生生物はアナジャコ、ソトオリガイ、ホトトギス、アラムシロ、多毛類等が広範囲に出現しており、藻場はアマモ、コアマモ、アナアオサ等の植生が若干みられる。

 光市の島田川河口干潟は、海水浴場の虹ケ浜海岸に隣接した約10haの干潟である。底質は砂が大部分を占め、漂砂により干潟の形状が変化しやすいため、アサリ等有用生物の生息は少ない。底生生物はアナジャコ、ニホンスナモグリコメツキガニ、オチバカイ、アラムシロ、イソシジミ等が多数出現する。

 山口市の幸崎干潟は山口湾奥部中央に約200haの広大な砂泥域干潟を形成しており、アサリをはじめ冬季のアオノリ養殖等漁業生産力も高い。しかし、近年、アナジャコ、ゴカイ類等がふえ、底質も泥分が多くなり、貝類の生産が低下しつつある。

 下関市の王司(千鳥ケ浜)干潟は木屋川水系の河口域で、県下最大の干潟(約750ha)の一角をなしている。バカガイ、アサリ、ハマグリ、タイラギ等の貝類生産が多い。また、冬季はノリ養殖も営まれ、漁業生産の重要な位置を占めている。

 底質はほぼ砂泥質で、底生生物はカニ類、ヤドカリ、フジツボ、キサゴ類、イソギンチャク等の出現が目立った。また、藻類では、オゴノリ、アナアオサ等が点在している。

 一方、日本海側では、山口県大津郡油谷町伊上浦の一箇所を設定した。

 日本海側における干満差は小さく大潮時でも1m程度であり、干潟は形成されにくく油谷湾奥部の一部に存在するのみである。2調査区のうち、比較的自然状態を残す調査番号1を選定して調査した。海岸線は、割石、コンクリートで造成され、満潮時に護岸の一部まで冠水する。

 また、河川は掛淵川他3小河川が流入しており、干潟の一部にコアマモ場、沖にアマモ場が散在している。

 底生生物は、個体数ではイボウミニナが優先種であり次いでアサリ・ゴカイ類等がみられるが、概して種数・個体数とも少ない干潟である。

 

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