1.調査結果の概要


 干潟分布調査及び干潟改変状況調査の結果、本県には7箇所の干潟があることがわかった。その数が少ないので、全干潟に於いて干潟生物の現地調査を行なった。

 県内における干潟生物の分布は地域的な相違はなく、むしろ地形的、底質の違いによるところが大きい。すなわち比較的開放度の高い粉白、唐尾湾ではコメツキガニの群れがみられ、またアナジャコ類も分布する。上地の浜、橋杭でもかつてはコメツキガニが棲息していたと思われるが、防波堤構築の後、著しく内湾性になり、アナジャコ類は残ったものの、コメツキガニは消滅したものと推測される。河口外側に位置する名草ノ浜はアナジャコ類に加えて、マテガイ、バカガイを産する特異な前浜干潟となっている。河口域に形成された片男波と日高港は典型的な異なったタイプの河口干潟となっている。すなわち砂利と砂泥から成る片男波と、泥干潟の日高港であり、前者には干潟植生が無く、アサリが棲息するのに適した環境となっている。一方、日高港ではその潮間帯上部にアシ原が発達し、中部〜下部の非植生泥帯にはチゴガニが群生し、アシ原との境目付近にはヤマトオサガニが棲み、アシ原にはアシハラガニが群生する。また潮間帯下部にはゴカイ類やアナジャコ類が多い。

 飛来鳥類は干潟の面積に比例し、比較的大きな片男波や日高港には多くのシギ・チドリ類が飛来し、大型のシギ類の飛来もよく見られる。一方干潟面積の小さい上地ノ浜、粉白、橋杭では飛来するシギ・チドリ類は少なく、大型のシギ類の飛来もいたって少ない。

 本県では消滅した干潟はないし、名草ノ浜の受けているレジャー博会場の埋め立ての影響以外に目立った変化はないが、過去の生物の観察や記録からみて、次のような変化が見られる。

1.橋杭ではハマグリ・タマシキゴカイが絶滅した。

2.片男波ではカニ類が減少した。

3.名草ノ浜ではマテガイ・バカガイが激減した。

4.日高港ではトビハゼ・ハクセンシオマネキが激減した。

 これらの変化は地形的には変化のない干潟で起こっているので、変化は非常にゆっくりと長時間をかけて起こり、目立たないが、水質の変化を含め、環境の汚濁が進行していることを示している。

 

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