1.調査結果の概要


 干潟生物調査は、北から伊勢湾北部の朝明川河口域に広がる「朝明川河口干潟」、伊勢湾中部の雲出川と三渡川の河口域の間に発達する「五主前干潟」、熊野灘の中央部の五ケ所湾奥部にある「五ケ所前干潟」、熊野灘の南部の尾鷲湾奥部の矢の川河口域に再生した「矢の川河口干潟」の4地点で実施した。

 これら4地点の干潟を調査の対象にした理由は、三重県内の1000キロメートルにもおよぶ長い海岸線を考慮の上、伊勢湾沿岸域で2地点、熊野灘沿岸域で2地点を選ぶこととして、伊勢湾の奥部すなわち三重県の北部の干潟の代表として「朝明川河口干潟」、伊勢湾中部の松阪周辺等の干潟の代表として「五主前干潟」を選定した。また熊野灘の中央部の干潟の代表として、「五ケ所前干潟」を選び、熊野灘南部、すなわち三重県南部の代表として尾鷲湾内の「矢の川河口干潟」を選出した。

 これらの干潟の底生生物の調査結果は、調査表に詳しく記載するが、「朝明川河口干潟」と「矢の川河口干潟」に関してはその発見生息生物種がアサリ、ゴカイ類、ニホンコツブムシなど3〜4種類に限られて少なく、かつ発見・確認された生物の個体数も極めて少なかった。

 一方「五主前干潟」と「五ケ所前干潟」では、二枚貝類、巻貝類、カニ・エビ・ヤドカリ類などをはじめとして10種類を超える底生生物が発見・確認され、その個体数もアサリ、ウミニナ類、ゴカイ類を中心に数多く採集することができた。

 三重県内に渡来する鳥類は、現在は伊勢湾中部に広がる幾つかの干潟にシギ、チドリ類をはじめ数多くの鳥類が渡来している。かつては伊勢湾北部に広大な干潟が存在しており、そこに数多くの鳥類が渡来していたが、ここ近年これら伊勢湾北部に存在していた干潟の相次ぐ消滅と現存する干潟の環境質の悪化が進み、伊勢湾北部の干潟へのシギ、ヂドリ類をはじめとする鳥類の渡来は少なくなってきている。


 

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