平成4年度
第4回自然環境保全基礎調査(サンゴ礁調査:沖縄県)
調査結果の概要
はじめに
本調査は平成2年度〜4年度の3か年で実施されたものである。4年度は沖縄本島周辺離島及び宮古列島を主な対象として調査を行った。調査方法は定められた実施要綱によったが、概略は以下の通りである。
サンゴ礁を礁嶺付近を境に礁池と礁縁に区分し、礁池は標本抽出調査を伴うカラー空中写真解析により、礁縁はいわゆるマンタ法による踏査により調査した。標本抽出調査は写真画像の分級化後、調査区を設定し、その中を広く遊泳して生サンゴ被度等の観察値を求める方法を採用した。使用した空中写真を表1に示す。マンタ法は安全のために前年度と同様に調査艇を使用し、水深2〜10m付近までを広く観察することを念頭において実施したが、調査当日のうねりや、風の状況、礁縁の地形、曳航船の船頭の技量等により、その範囲は変化せざるを得なかった。
調査の結果
1.沖縄本島周辺離島
沖縄本島では枝状のサンゴが死んで礫化したものが堆積した基質上をアミジグサの一種やハイオオギ等の小型海藻が優占する海藻群落となった生サンゴの低被度域(被度階級+)が圧倒的に多いが、周辺離島では様子が異なり、被度階級別にみると+:37.6%,T,U:28.8%,V,W:33.5%と生サンゴ高被度域(V,W)が低被度域(+)とほぼ同程度の面積を占めている。特に伊平屋島では高被度サンゴ群集域が多く分布し、サンゴ群集域の約70%が被度V、Wの群集となっている。渡名喜島も高被度サンゴ群集の分布率が高く、28.6%で、被度階級+の分布は見られない。慶良間諸島は礁池の発達がほとんど見られず、幅の狭い裾礁上は干出裸岩となっており、サンゴ群集の分布の中心は礁縁にある。したがって、慶良間諸島についてはマンタ法による調査結果を基に述べる。調査結果では、31.6%が高被度サンゴ群集域で、次いでT、Uが58.1%、+は10.3%に過ぎず、良好な状態を維持している。
2.宮古列島
宮古島付近(伊良部島を含む)の礁池サンゴ群集の状況は概して良好とはいえず、71.6%が+の被度階級である。V、Wの高被度群集域はわずか5.1%である。それらは西平安名崎東側(約40ha)と福北(20ha)などに見られる。池間島北方に広がるサンゴ礁八重干瀬は干出裸岩が大半を占め、礁池的地形はわずかしか見られないため、慶良間諸島と同様主なサンゴ群集は礁縁に分布する。マンタ法調査結果では+:19.6%,T、U:64.6%,V,W:15.8%と被度階級T、Uが多い傾向を示した。
一方、宮古島の離島、多良間島、水納島のサンゴ群集は比較的良好で両島のサンゴ群集の61.2%が高被度サンゴ群集で、+は13.7%に過ぎない。
3.消滅サンゴ礁
第2回自然環境保全基礎調査以降(1979年4月以降)、埋立て等により消滅したサンゴ礁の面積を集計した。明らかに干潟に属すると思われるものは除いた。埋立て面積の合計は38件、174.4haであった。最大の面積は宮古島平良港で港湾部と漁港部をあわせ、約41haである。続いて、伊是名島の屋の下島埋立て地の31.5ha、宮古群島下地島の下地空港の約31haと続く。下地空港埋立ては1975年完了とされているが、前回報告には干潟、藻場、サンゴ礁のいずれにも記載されていないので、今回取上げておいた。
表1 使用した空中写真のリスト
(沖縄県自然保護課撮影)
伊平屋島
C 89
C1−2,5,7,8,9,11,13,14,15,16
C2−2,3,5,6,7,9,14,15,16,17
C3−11,13
伊是名島
C 89
C1−1,5,4
C2−2,3,4,5,6,7,9,
C3−5,8,10,13
C4−2,3,4,5,6,8,9,10
久米島
C 89
C1−1,3,5,7,9
C2−1,3
C3−2,3,13
C4−1,2,10
C5A−2,3,4,9
C5B−4,5,7,8,11,12,13,14
C6A−2,7
C6B−4,5,7,9,10,12,13
C7−2,4
C8−2,3,5
渡名喜島
C OK 77−2
C4−1,3,5
C5−1,3,5
座間味島
C 89
C1−2,3,8
C2−7
C3−2,6,7,9,12
C4−3,5,6,8,9,10,11,14
C5−8,10,12,13
C6−7
渡嘉敷島
C 89
C1−1,2,3,5,6,8,9,11,13
C2−3,4,5,6,7,8,10,11
C3−2
C4−3,4,5,7
宮古島
C 91
C3−8
C4−3,5,6,8,10
C5−5,7,8
C6−3,4,7
C7A−5,7,8,10
C8−6,7,8,10
C10A−3
C11−3,5,7,9
C12−3,5,7,8,9,10,11,12
C13−4,6,7,8,10,11
C14−4,5,7,8,10
C15−4,6,8
C16−3,5,7,9,10,21,22,24,25,26
C17−3,4,6,11,13,23,24,25,26
C18A−3,4,6,12,19,21,25,27,28,35
C19A−3,5,7,12
C19B−11,20,22
C20A−4,5,6,8,10,12
C20B−4,5,6,7,14
C21−3,5,12,14,15,17,27,30,32,34
C22−13,15,16,17,34,35
C23−10,11,13,14,15,33,34,35,36
C24−8,9,10,13,36
C25−4,5,6,7,8,9,22,24,26,29,30,31,32,33,34
C26−3,4,5,7,8,10,11,12,14,15,16,18,20,21,22,29,30,31,32
C27−6,12
多良間島
C 91
C1−1,2,4,6,7
C2−3,11
C3−3,9
C4−3,5,7
水納島
C 91
C2−4,6,8
C3−4,6
与那国島
C1−6,10,11,13
C2−1
C3−8,11
備 考
1.分布図に関するもの
a.st番号は図上に番号のみを記してある。
b.調査要綱に無い記号は次ぎのものである。
fo 葉状、cr 被覆状、ot その他の形状、sc ソフトコーラル
2.調査票に関するもの
a.面積は分級化図上で求めた。その際、礁池が開放されている地形の所では概ねサンゴ礁の延長線上で区切り、面積を求めた。
b.地形図の座間味、阿波連岬、久場島、前島、与那国島、久米島(一部)については、1/25, 000地形図上で面積を求めた。
c.サンゴ礁現地調査票(様式1)上の空中写真コピーは約1/10,000。