調査結果の概要

 昭和53年度に実施された第2回自然環境保全基礎調査(干潟・藻場・サンゴ礁分布調査)から13年ぶりにサンゴ礁調査を実施した。調査地点は、海域を五島列島と対馬に絞り、前回の調査区23区の中から16区を選んだ。

 前回の調査時に較べて、サンゴ群落の凋落が著しい所が見られた。たとえば、群落番号1、2、3、4、13、17、18、19などで、サンゴ群落が減少し、あるいは死滅している。

 これらの内、群落番号1、2、3、4、13は何れも五島列島に位置するが、これらでは、前回の調査の時には無かったか、有っても少なかった魚類養殖用筏が多数設置されていた。群落番号2、3は状況が特にひどく、海面に油が浮いており、潜水調査を断念した程である。これらの地点は風浪の穏やかな内湾であるので、養殖生簀網の新設あるいは増設により潮通しが悪くなり、サンゴの生育に適さない環境に変化したものと思われる。

 群落番号17〜19は男女群島に位置し、前回の調査では卓状ミドリイシ類の大群落が観察されたが、ここでもサンゴ群落の凋落が著しい。今回の調査者は前回の調査に携わっていないし、前回の調査者は今回の調査には直接には携わらなかったので、男女群島でのサンゴ群落の凋落を確認するために、長崎県生物学会男女群島調査団が昭和48年8月に撮影し、長崎放送に保存されていた男女群島の水中映画(16mm)をビデオに編集したものを借り受け、前回および今回の調査者の全員で見た。その結果、群落番号17〜19では、前回あるいはそれ以前にみられた大形の卓状ミドリイシ類の大群落が殆ど無くなっており、サンゴ群落の生育状況が一変していることが確認された。これらのサンゴ群落の凋落が局所的なものであれば、たとえば、瀬釣りをする遊魚者等の影響が考えられるが、調査範囲全域に亘って凋落が見られるので、人為的要因によるものではないと判断される。自然環境の変化として考え得るものの一つに一時的な低水温の影響があるが、定かではない。

生育サンゴ群集分布位置図

 

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