調査結果の概要

 県下のダイビング。ショップ経営者ならびに潜水調査を行っている団体等に、サンゴ礁の有無について聞き取り調査を行った。

 その結果、隠岐島についてはイソバナ等の単体のサンゴ類は観察されるが、他は発見出来ない。また、美保関から益田にかけての沿岸部では、温泉津町の内湾部にキクメイシ科の1種が散在するが、他の造礁サンゴ類は観察されないとのことであった。

 そこで、造礁サンゴ類の有無を確認するため、島根半島は才から雲津、多古、鷺浦の6調査区で、隠岐島は島前の海士、島後の飯美付近の2調査区で、水深10mまでの海底を主としてスキン・ダイビングにより目視調査した。

 その結果、造礁サンゴ類としては、隠岐島島前でアワサンゴの小塊がかなり疎に点在した。その他のサンゴ類としては、隠岐島ではイソバナ類が散見され、島根半島では鷺浦でイボヤギの小群落が発見されたが、造礁サンゴは両地区とも発見されなかった。

 従って、島根県沿岸部では、造礁サンゴは普遍的には存在しないものと考えられる。その一因として、冬季の水温最低期(2月中旬−3月下旬)の水温が低すぎる(11−12℃)ことが考えられる。

付記:本調査終了後に、多伎町小田地先および大田市鳥井地先でベルベット。サンゴが発見された。水深は10−24mと深く、群体は径1m以内で、冬期は茶色であるという。島根県西部では対馬暖流が沿岸により近ずくこと、および本調査の対象範囲であった水深5m以浅よりも水深10m以深のほうが水温が安定している可能性があることより、本種が分布し得たと考えられる。今後、同様な調査を実施する場合には、島根県西部および隠岐島を中心にし、調査水深を20m程度まで拡大すると共に、マンタ法以外の調査法をとる必要があると考えられる。

 

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