調査結果の概要

 本報告書は県下沿岸の造礁サンゴ類の分布・成育状況について1989年にマンタ方式により、新宮市の東高森地先から和歌山市加太の住吉崎までの県下全域の海岸部について現地調査した結果を用い作成した。なお、それ以後のサンゴ分布上の変化はないものと思われる。サンゴ群集現地調査記録図については成育サンゴ群集分布図そのものであることから、これについては添付していない。また、調査区法に基づいた良好な造礁サンゴ群集調査についても、同年に該当する5地区を選びスクーバ潜水によって得られた結果を用いた。調査結果のうち、成育サンゴ群集の成育型と図化表示については、各タイプの造礁サンゴが混生する海域では成育型の表示を多混(多種混生)とし、その地図表示については白ぬき円で示した。

 県下海域での造礁サンゴの分布は、黒潮流が直接影響する県南部の串本町地先海域で出現する種数が最も多く群集規模も大きい。特に潮岬の西側海域では海中公園指定海域を含めてクシハダミドリイシの大規模な群集地がみられる。良好な造礁サンゴ群集が連続して分布するこの海域で4ケ所の調査区を設けて出現種の種数を調査した結果は総数で48種が記録された。県下沿岸の造礁サンゴは紀伊半島を北上するにつれて種数と群集規模が次第に減少するが、県下海域での造礁サンゴの分布の北限地は、熊野灘側では新宮市の三輪崎地先で、キクメイシ・ハマサンゴが観察されたのを終点とするが、本調査で言うところの被度階級が(T)に該当する群集の北限は那智勝浦町宇久井のオキワノ鼻であった。同様に枯木灘側での分布の終点は広川町鷹島の神取鼻で、ここではオオトゲキクメイシの小群体が出現した。また、群集の北限地については、白浜町白浜の権現崎であった。造礁サンゴの消滅については、今回の調査で串本町の大島、出雲、袋港口などでサンゴ群集の一部が骨格を残し死滅しているのが見られたが、これらの死滅域については冬場の寒波による低水温で幣死したものと考えられる。

 造礁サンゴ類が良好に成育している紀伊半島南岸では、しゅんせつ・埋め立てなどが最も起こりやすい湾奥部までサンゴが分布し群集を形成しているため、これらの地域での海岸部の改変は例え小規模な変更でもサンゴに対し何らかの影響を及ぼすものと考えられる。

 

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