三重県下のサンゴ群生の概要
三重県下の熊野灘沿岸は、サンゴの生育の北限といわれ、前回の第2回自然環境保全調査では、鳥羽市答志島、志摩町和具沖、紀伊長島町鈴島周辺、熊野市二木島湾周辺の4調査区でサンゴの生育が見られると報告されている。
今回の調査にあたり、県下各地区の漁業者・ダイバーからの事前の聞き取り調査では、鈴島周辺および二木島湾周辺にサンゴは見られるとのことであったが、答志島および和具沖においては否定的な解答しか得られず、前回調査の4調査区すべての周辺海域における現地調査を実施した。
調査の方法は、調査面積をできるだけ広くとり、単固体のサンゴの確認に重点をおきマンタ法を試みたが、透明度が悪く水面からのサンゴの確認が難しいことから、結果的にすべての調査区で潜水調査あるいは水中スクーター使用による潜水調査に切り替えた。(従って、「サンゴ礁現地調査記録図」は割愛した。調査票の中の地図を参考にしていただきたい。)
現地調査記録票中の水深は、調査区中の最大深度、水温は潜水中海底での計測値、調査区概要はできるだけ調査経路がわかるように、底生生物・出現植物類の名を出現順に記入した。
前回1978年の調査から現在にいたるまでの三重県下のサンゴの生育環境は、ハマチを中心とした魚類養殖にともなう水質の悪化、生活排水の沿岸域への流入による水質の汚濁等による影響、黒潮の蛇行による冷水塊発生等による異常水温などの影響でけして良好であったとはいえない。さらに、1984年6月下旬から7月下旬にかけて、熊野灘一体にギムノディニウム・ナガサキエンセの赤潮が大発生して沿岸の海洋生物に大きな打撃を与えた。
今回の調査では、前記の影響によるものか、答志島、和具沖ではサンゴはほとんど確認できず、造礁サンゴの群集を確認できたのは鈴島西岸と二木島湾外海の須野の地先の海域だけであった。
鈴島西岸では、長径1.5メートルの大型の死サンゴを確認しているが、現在生育しているサンゴは、長径25センチ以下の比較的小型であり、前記赤潮の発生被害ののち成長したとも推測できる。一方、須野地先海域のサンゴ群集は、周囲に死サンゴが点在して見られ、海藻類の被度が高く、現状を観察した上では今後発達していくことが難しいと考えらえる。
加えて、この両調査区とも水中の透視度は8メートル程度しか見えず、また底質に懸濁物の沈殿がみられ、これらの影響も楽観視できない。
その他、今回は現地調査ができなかったが、ダイーバー達からは以下の海域でサンゴ類の単固体が生育しているとの報告をうけた。今後詳しく調査されることを期待する。
・英虞湾において夏季小固体が生育する。
・南勢町宿田曽地先海域
・南島町方座浦周辺海域
・南島町、紀勢町の境界、芦浜前面海域
・熊野市地先沖合、台花の瀬