調査結果の概要

 静岡県は非サンゴ礁海域に相当するが、沿岸域造礁サンゴ生息概況の調査方法としてマンタ法が指定されている。しかし、当海域は非サンゴ礁海域のなかでも造礁サンゴの分布の北限に位置することから、生息する造礁サンゴ群落は面積が小さく、マンタ法では被度がほとんどゼロとなることが予測された。このためマンタ法は採らず事前の十分な聞き取り調査に基づいて、調査はすべて現地調査とした。

 現地調査は全部で8調査区について行なったが、本調査の群集の定義に該当する、面積が0.1ha以上の群集は久連の一ヶ所で確認された。サンゴ群集は定義以下のものも含めれば6調査区でみられ、伊豆半島のかなり広い海域に分布すると考えられる。しかしサンゴが生育するのは波当りの弱い内湾的な地点に限られる傾向があり、全体的にはどうにか生息可能といった状態である。

 サンゴの出現種は海域により相違するが、全体を合わせても18種程度にすぎず、サンゴ礁海域と比較して少ない。また海域により卓越する種があり、そのような海域では特定種の単群集となる。例えば久連、妻良ではコエダミドリイシが、また田子の一部ではキッカサンゴが卓越し、その他の種は周辺部に若干生息するにすぎず、独特の景観を呈する。このような点も当海域の特徴の一つと言えよう。

 サンゴ生育地の直接的な改変が、現在行なわれている地点は特には見られない。しかし生育地の周辺にはすでに堤防が構築されている場合がほとんどであり、サンゴが水理学的な環境変化にさらされていることは十分推察される。また、サンゴの死骸から生育地に堤防が構築されたと考えられる地点もあり、より詳細な調査が今後必要と考えられる。

 

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