第4回自然環境保全基礎調査海域生物環境調査(サンゴ礁調査)

伊豆七島北部海域(海域区分510)

 当調査海域では、大島〜三宅島海域において各島の西〜南側の浅海域に造礁サンゴの生息が見られる。しかし、三宅島を除く海域では、いずれも低密度で小規模な群集である。

 黒潮の流軸に近い三宅島では、島の西側の岩礁域を中心に造礁サンゴが生息し場所によっては調査対象の規模(造礁サンゴ群集の被度5%、0.1ha以上)の群集ほどに発達する。北部の伊ケ谷地区(群集番号No.1)では、水深3〜15m岩場に卓状のサンゴが優占する造礁サンゴ群集が見られる。聞取り調査によれば被度が5%以上の面積は約0.6haあり、卓状サンゴの密集が約100m2 ほど広がっている。

 阿古釜庭地区(群集番号No.2)は、海岸から100mほど沖合の水深10〜18mの岩礁や大型の転石地帯に造礁サンゴ群集が見られる。現地調査したところ、特に水深12mから18mへ急激に落ち込む岩礁には卓状型のAcroporaが優占する被度50%弱の群集が約0.5haの面積で確認された。この群集の周辺に卓状、被覆状、塊状のサンゴが点在する。この造礁サンゴ群集は「学校下」と呼ばれるダイビングスポットとなっている。

 富賀浜地区(群集番号No.3)は、海岸沿いの水深2〜8mに卓状型のAcroporaが優占する群集が見られる。密集した比較的大きな群集(約500m2)が2ヵ所あり、周辺の岩礁には卓状、被覆状のサンゴが点在する。

 三宅島の西方にある大野原島(三本岳)の浅場にも低密度ながら造礁サンゴ群集が見られる。他の地区と比較して卓状サンゴが少なく、被覆状、塊状のサンゴの比率が高い。

 三宅島沿岸の岩礁地帯は隠れ根が多く、岸よりのところで急激に10数mに落ち込むため、水深5mの等深線にそって行う曳航調査のマンタ法は行えなかった。

調査結果の概要(八丈島)

 造礁サンゴは浅部(水深0〜10m)には非常に少なく(一部の湾入部には着生している)、水深15〜30m付近に最も多い。しかし1991年1〜8月の冷水塊により多くサンゴが死滅し被度は著しく減少した。島周辺の全域の岩礁地帯に着生がみられるが、一部の海岸線突出部の沖では被度が少なかった。

 着生種はFavia,Favites等暖海域では塊状になる種が主体であるが、八丈島では発達が悪く、被覆状に成育している。浅海部でサンゴの発達が悪いこと、本来塊状に成育するサンゴが被覆状に成育することは、八丈島で波浪が強いことと関連していると思われる。

調査結果の概要

 小笠原群島海域においては、全体で56群集、456haの生育サンゴ群集が確認された。これらのうち、40群集、357haが父島列島に存在する。晋島列島・母島列島ではサンゴ群集は海岸線の凹入部を中心にみられる小規模なものが多く、各群集の面積も一般に小さい。これに対し父島列島では海岸線が比較的複雑なこともあり、滝の浦湾・兄島瀬戸・初寝浦周辺・二見湾などでやや規模の大きいサンゴ群集がみられる。小笠原群島ではサンゴ礁地形(礁池・礁縁など)の発達があまり見られず、海底が海岸線付近から急傾斜で深くなっているところが多いこともあって、浅海域では波浪の影響が大きいところが多い。このため、造礁サンゴ類の生育型は、一般に波浪に対する抵抗力の大きい塊状や被覆状のものが多くみられ、これに卓状から枝状のミドリイシ類(特にサボテンミドリイシAcropora florida)が混生するところが多い。しかし海岸線の大きく湾入している父島の二見湾では、スギノキミドリイシAcropora frmosaを中心とした鹿角状のミドリイシの群落が大村付近から境浦付近にかけて広範囲にみられ、小笠原群島では特異的な海中景観を形成している。

 

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