調査結果の概要

 愛媛県における生育サンゴ群集の分布は、三浦半島以南の豊後水道と由良半島以南の土佐湾にみられる。この海域は地層が撓曲沈下した中生層から成り、海底の地形は変化に富み、岩礁や小島が多い。また、四国の西南端近くに位置するため、瀬戸内海から流出してくる内湾水よりも、北上する黒潮暖流の影響が強く、水温、透明度とも内海にくらべて高く、暖帯的特徴をもつ。海水の透明度は15〜25m、リアス式海岸と散在する小島のため風浪は比較的穏やかである。

 生育サンゴ群集の面積が0.1ha以上あるコロニーは49ヶ所、合計117.7haで、そのうち太平洋南区の土佐湾には46ヶ所、合計117.0haで全体の99.4%を占め、瀬戸内海区の豊後水道には、わずか3ヶ所0.7haである。このうち宇和海海中公園に指定されている鹿島周辺の群集は特に優れており、学術的にも価値が高い。

 本海域にはイシサンゴ類、ウミトサカ類などの群集が、海食洞にはイボヤギ、イソバナ、オオトゲトサカの群集がみられ、熱帯魚類も豊富である。

 消滅サンゴ群集は西海町笠ハズシ(No.3)の0.6haのみであった。この原因としては1967年に始まったハマチ養殖などによる環境の悪化が推察される。

 サンゴを食害するオニヒトデは1976年の駆除数6,120個体を最高に減少をつづけ、1985年9個体となり1986年以後捕獲は中止された。今回の調査でもオニヒトデは確認されなかった。

 サンゴの天敵の一種レイシガイダマシは1987年宮崎県日南海岸で、1989年には高知県大月町で被害が目立ちはじめた。本県では1990年6〜9月の調査では群集番号22(調査区番号1)でヒメシロレイシガイダマシを1個体採集したのみで、食害を発見することはできなかった。地元のダイバーの話によると、1990年6月頃に鹿島のナカビシャゴで少数のヒメシロレイシガイダマシが見られた。1990年秋以降、高茂岬の近くと横島、野地島、鹿島のナカビシャゴでヒメシロレイシガイダマシによる食害が目立ち始め、1991年に入ってからは、さらに鹿島近海の黒碆、赤碆でも見られるようになり、特に黒碆では大きい個体がみられ、直径20〜30cmの食痕が40〜50ヶ所くらい発見されたという。今後被害の拡大が予測されるので早急な対策が必要である。

 なお、1990年8月22日の台風14号の波浪によるサンゴ群体、特に卓状サンゴ類への被害は数十年来例を見ない大規模なものであった。

 

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