調査結果の概要

 調査は事前の聞き込みをもとに、宍喰町竹ケ島周辺と牟岐町大島周辺の2地区で行なった。

 竹ケ島周辺地区ではサンゴ群集は内海域のみ出現し、外海域では確認できなかった。また大島周辺地区では、大島の西岸域に集中してみられたのが特徴であった。

 竹ケ島周辺では4ヵ所の群集が確認され、エダミドリイシとカワラサンゴを中心とした群集が見られ、計21種のサンゴ類が記録された。4ヵ所とも種構成はよく似ており、互いに接近しているので、一つの群集としてとらえてもよいかと思われる。

 この海域は小島や岩礁に囲まれているため、波静かで潮がわりがよく、また陸域の集水面積が少ない(淡水の流入が少ない)ので、海洋環境が比較的外洋的で安定しているという特性か見ちれた。このためエダミドリイシ群集だけでなくコブハマサンゴ、ムカシサンゴ、オオスリバチサンゴなどの大型群体が多数見られるという特徴がある。特にムカシサンゴの大型群体が多数見られるということは、沖縄を含め国内の他の海域にはない大きな特徴である。しかし近年防波堤建設や養殖事業などにより環境が急変したため、これらの大型サンゴ群体やエダミドリイシ群集の死亡が目立つようになった。これらの死サンゴ群体上には、カワラサンゴが繁殖するようになり、顕著なサンゴ群集の変化が見られる。

 大島周辺地区は大島の西岸域にサンゴ群集が集中してみられるが、この付近は強い波浪の影響が少ないため、サンゴが生育しやすくなっているものと思われる。

 ここでは5ヵ所の群集が確認され、36種のサンゴが記録された。No.1ではオオスリバチサンゴと塊状のキクメイシ類が、No.2とNo.4ではエンタクミドリイシ、No.3では被覆状に生育するウスカミサンゴとキッカサンゴが多くみられた。No.5ではキクメイシ類など本来塊状に生育する種が薄く被覆状に生育しているのが特徴であった。またNo.3では巨大なコブハマサンゴが見られたが、これは九州以北では最大のサンゴ群体と思われる。

 竹ケ島、大島地区とも外海では、大島地区のNo.5で見られたように本来塊状に生育すべき種が薄く被覆状に生育していることが多い。このような所では、海面から見ると岩と同じ様に見えるため、サンゴの判別が難しく、実際よりも低く被度をみてしまいがちである。今回の調査で群集が確認できなかった海域でも、スキューバによる潜水調査をおこなえば、このような被覆状のサンゴ群集がまだ確認できるものと、思われる。

 

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