15. 鹿児島県
(1)分布及び消滅状況の概要
鹿児島県はトカラ列島を境として南側をサンゴ礁海域、北側を非サンゴ礁海域として位置づけそれぞれ調査要綱に則った調査を実施した。ここではそれらのうち、非サンゴ礁海域に該当するエリアの調査結果について記載した。
1 全般的なサンゴの分布状況
本土海域の各離島周辺や県本土の太平洋沿岸、東シナ海沿岸等では、岩盤等のサンゴの付着基盤が存在する多くの海域で、卓状のミドリイシ類、被覆状のコモンサンゴ類等を中心とした造礁サンゴの分布が見られるが、全般的に被度は高くなく、+〜I程度のところが中心である。一部で卓状ミドリイシなどのIIないしIII以上が分布する場所もみられたもののきわめて限定的であり、全般的に被度は低かった。
錦江湾内でも湾口部から桜島周辺にかけて各所でサンゴが生息しているが、沿岸部の岩礁地帯、護岸などの限定された範囲についてのみであり、被度も+〜I程度と高いものではなかった。
1987年の鹿児島県環境保全地区候補地調査による宇治群島の調査結果では、宇治島でIIIの被度、宇治向島でIIの被度の部分が見られているが、これも局所的なものである。
2 大型底生動物の生息状況
全般的にサンゴを食害するような大型の底生生物は、ほとんど見られなかった。ただし、甑島では北部を中心にオニヒトデが散見され、1990年現在食害が進行中であった。
1987年の宇治群島の調査記録によれば、宇治でもオニヒトデの食害並びにテルピオス海綿による被害が報告されている。
平成2年度に調査した範囲では、前述のとおり一部でオニヒトデによる被害がみられるものの、テルピオス、レイシガイダマシともにめだった発生は認められていない。
3 改変状況
港湾、橋梁建設などにより各地で浚渫、築堤等の改変行為が行われているものの規模的には小規模であり、影響範囲も限定的であった。
4 各調査場所の状況
a. 佐多岬
総体的にはサンゴの被度はあまり高くないが、枇榔島周辺などでは局所的に高い被度の部分も存在する。そのような場所を中心に半潜水式の観光船が就航している。サンゴの形態に多様性が少ない。サンゴは比較的東海岸側に多いようである。
佐多町からの情報に基づき立目崎についても現地調査を行ったが、被度は+程度のものであった。
b. 坊津
丸木浜の湾口部からヒサゴ瀬にかけてサンゴが多く分布している。特徴的なものとしてショウガサンゴが密に分布する場所がある。
背後地に観光施設を建設したことに起因すると思われる濁りによって、湾入部を中心に土砂によるダメージを受けているサンゴがみられた。
c. 甑島
ほぼ全域的にサンゴが分布しているものと思われる。北部を中心にオニヒトデの食害が進行中で、サンゴのダメージが懸念される。
第2回の調査時に未記載の群集位置も、今回確認された。
ここでは港湾工事、架橋工事が実施中であったり、船舶の往来が多いこと、また非常に多くの定置網が存在することなどによって、調査が実施できない区間が多くあった。分布図中で「未調査区間」と表示している。
d. 屋久島
島の南部を中心に比較的豊富にサンゴがみられている。限局的ではあるが、100%に近い被度の場所も認められる。今回とりまとめたサンゴ群集の内の約半数が新記載のものである。
屋久島は非サンゴ礁海域に区分されているが、粟生や春田浜など比較的規模の大きな群集も見られており、ここでは小規模な裾礁の形態を示していた。
e. とりまとめ上の特記事項
今回の調査では被度がI以上の場所についてはサンゴ群集としてとらえ、生育型の構成を表記する事となっているが、生育サンゴ群集分布図上のマンタ調査の結果からもわかるように、鹿児島県においては多くの区間でI以上の被度を示している。従って、これら全てについて詳細調査を行うことは困難であるため、要綱に則り調査対象を絞り込むこととした。平成2年度の詳細調査の実施対象としては、原則として被度II以上の部分を含む区間とした。
また調査区調査については、これらの内、非常に良好なサンゴが見られると判断できる13地点を選定した。
地図番号については、標準地域メッシュコードの区分と1/25,000形図の範囲にズレが生じているため、当該地形図が関係するメッシュコードが複数存在する場合にはそれら全てを表示した。
平成2年度に行ったアンケート調査では、数量的には多くはないものと予想されるが、県内の各地でサンゴの分布が報告されている。これらについては、生育型・被度などの情報が十分に収集できなかったため、前回の第2回調査及び聞き取りなどによる情報収集により分布図を作成した。
<調査方法>
a. 資料調査
第2回自然環境保全基礎調査や既存文献『鹿児島のすぐれた自然』等の資料調査をおこなうとともに、県内の海岸線を有する全市町村にサンゴの有無、食害の状況などについてのアンケート調査を行い資料収集した。その結果を第2回調査時のデータ及び聞き取りなどの結果で一部補正して分布図上に示した。
b. 現地調査
資料調査で得られた情報から、サンゴが多く分布すると考えられる場所で現地調査を実施した。調査では、マンタ法にて総体的なサンゴ分布を把握するとともに、被度の高い場所や第2回調査記載地点においては、遊泳による目視によって詳細な調査を実施した。なお、この際は、可能なところでは潜水漁等を行っている漁師からサンゴ分布についての詳しい情報も併せて収集した。
また、宇治群島については1987年の鹿児島県環境保全地区候補地調査での記録を転用、また種子島については1989年時点の調査データを参考にした。
c. 現地調査実施場所
甑島周辺、坊津町丸木、鹿屋市高須、根占町丸峰岬、佐多町立目崎、同田尻-枇榔島-佐多岬、屋久島周辺
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「保護指定」には海中公園地区名のみ掲載。 | ※部分的に海中公園地区にかかる。 |
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「保護指定」には海中公園地区名のみ掲載。 |
(3)サンゴ群集分布図