5. 秋田県

 

(1) 分布及び消滅状況の外洋
 現存藻場
 藻場については、県北部の青森県境にいたる八森町地先、男鹿半島周辺の海域及び県南の平沢地先から山形県境にいたる範囲の岩礁地帯及び転石地帯に分布している。アマモ等の砂底に繁茂する海草類は、男鹿半島南部海域の一部に認められる程度である。秋田県の沿岸で確認されている藻類は、紅藻、褐藻、緑藻等あわせて140余種にのぼっているが、このうち藻場を構成する大型の海藻は、ワカメ、ツルアラメやホンダワラ類に属するアカモク、ジョロモク、ノコギリモク、フシスジモク等である。
 各地区の概要を下記に示す。
a. 県北部
 八森町地先は、岸から比較的急深のため、藻場の範囲は狭く、おおむね水深2〜3m以浅の距岸100m程度までである。構成種は、マクサ、モロイトグサ、タオヤギソウ等の紅藻類、トゲモク、ヨレモク等のホンダワラ類及び、ワカメ、アミジグサ、アナアオサ等の褐藻・紅藻類である。春期には、ワカメの群落が岩盤域の一部に形成される。なお、7月における海藻の現存量は80〜1,600g/m2程度である。
b. 男鹿半島北岸
 入道崎から北浦にかけての半島北岸は、起伏の緩やかな海底地形を呈しており、沖合い1,000〜1,500mまで広大な藻場が形成されている。水深10m以浅の面積は1,162haであり、藻場面積はこの82.9%にあたる963haを占める。
 出現海藻は、全般的にヤツマタモク、スギモクを主体としたホンダワラ類が多いが、エゾヤハズ、ハバモドキ、イバラノリ等の小型海藻も認められる。西黒沢周辺から北浦にかけての水深1〜2m帯にはスギモクが群生しており、所々にイシモヅク群落が認められる。その沖合はヤツマタモクが濃密に分布している。
 航空写真等の解析から本地区における大型海藻類の現存量は、約10,000トンと推定される。主なものは、ヤツマタモク8,500トン(85.0%)で、次いでスギモク937トン(9.4%)、エゾヤハズ253トン(2.5%)、イソモク72トン(0.7%)の順となっている。海藻の現存量は0.5〜6.6kg/m2の範囲で、他地区に比べて多く、また、凋落期の減少が少なく比較的安定した藻場を形成している。
c. 男鹿半島西岸
 同地区は岩礁が岸から成り立った部分が多く、藻場はほとんど距岸100m以内の幅である。水深10m以浅の面積は506haであり、藻場面積はこの93.7%にあたる474haである。
 出現域全般に暖海性のツルアラメが卓越しているが、5m以浅ではフシスジモク、カイフモク、ヤツマタモク等のホンダワラ類が優占している。また、海藻の分布域は、他地区に比べ深い傾向があり、水深10mまではヨレモク、ノコギリモク、アカモク等のガラモ場が出現する。冬〜春季には、ワカメ群落が水深3〜10m帯に出現する。
 出現域全般に暖海性のツルアラメが卓越しているが、5m以浅ではフシスジモク、カイフモク、ヤツマタモク等のホンダワラ類が優占している。また、海藻の分布域は、他地区に比べ深い傾向があり、水深10mまではヨレモク、ノコギリモク、アカモク等のガラモ場が出現する。冬〜春季には、ワカメ群落が水深3〜10m帯に出現する。
 本地区における大型海藻の現存量は約4,000トンと推定され、主なものはツルアラメ1,300トン(33.0%)、次いでアカモク339トン(8.5%)、フシスジモク342トン(8.6%)、カイフモク242トン(6.1%)の順である。海藻の現存量は6〜7月に最大となり、戸賀では1.8kg/m2、門前では2.8kg/m2である。
d. 男鹿半島南岸
 潮瀬崎から女川までの水深10m以浅の面積は435haであり、藻場面積はこの61%に当たる265haである。主な出現海藻はアカモク、ヤツマタモク、カイフモク等のホンダワラ類とツルアラメであるが、他の男鹿半島域では出現しないツノマタの存在がこの地区を特徴づけている。また、静穏域では小規模ではあるが、アマモ場が認められる。水深1m以浅の波触台上ではウミトラノオ、イソモクの群落が形成され、その沖合いではスギモク、アカモク、ヤツマタモク等の藻場が水深5mまで続く。水深7〜9mではツルアラメ、ヨレモク、ケウルシグサ、シワヤハズ等が出現するが、海藻被度は低い。大型海の現存量は2,287トンと推定され、主なものはツルアラメ749トン(32.8%)、ヤツマタモク300トン(13.1%)、アカモク240トン(10.5%)、イソモク224トン(9.8%)等である。海藻の現存量は6月に最大で2.5kg/m2であり、9月に最低となるが、11月には増加に転じる。
 女川から船川港まではジョロモク、ノクギリモク、ヨレモク等のホンダワラ類が優占しているが、ワカメ及びツノマタ等の紅藻類も多い。
 船川港東部の水深5〜8m帯では岩盤上にホンダワラ類とツルアラメが繁茂し、台島地区と似た景観を呈している。脇本寄りでは砂混じりの岩盤上にテングサ等の紅藻類が着生しており、一部に小規模なアマモ場が点在する。
e. 県南部
 県北部、男鹿半島周辺部に比べ水深の浅い転石帯が比較的多い海域である。出現種も前出の地区とやや異なり、ツノマタ、スギノリ等の紅藻類とアオサ類が優占し、ホンダワラ群落は平沢地区の一部に形成されている以外は少ない。
 特に、象潟地区では起伏の緩やかな海底地形を呈しており、沖合い500m程度までは比較的大きな藻場が存在する。逆に、小砂川地区は急峻で、深所に砂が堆積しているため藻場は距岸50〜100m程度で狭い。
 
 消滅藻場
 藻場の消滅域は、主に県北部海域と男鹿半島周辺域に認められる。
 県北部海域の場合は深所から徐々に藻場が消滅しているが、これはキタムラサキウニの食害によるものと推察される。
 男鹿半島南岸域では国家石油基地建設に伴う埋め立てにより、水深6m以浅の藻場142.4haが消滅した。また、脇本地区では沖合い域の藻場が消滅したが原因については不明である。
 その他では各地で漁港の拡大に伴って小規模な藻場の消滅が認められる。

 

現存藻場・消滅藻場総括表

海 域 名

現 存 藻 場 消 滅 藻 場
調査区数 面 積(ha) 調査区数 面 積(ha)
秋      田 10 3,837 6 755
         
合   計 10 3,837 6 755

 

<調査実施方法>

各地区における調査の実施方法を下記に示す。

 県北部地区    既存資料 現地確認調査

 男鹿半島北岸   既存資料

   〃 西岸   既存資料

   〃 南岸   既存資料 現地確認調査 ヒアリング調査

 県南部地区    既存資料 現地確認調査 ヒアリング調査

 

 

(2)現存、消滅藻場一覧表

現存・消滅藻場一覧表

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地    名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
1 40 秋  田 八 森 町 岩   館 5・6・8 23 30
2 40・31 滝 の 間 5・6・8 43 75
3 31 横 間 茂 浦 5・6・8 25  
4 42・45 男 鹿 市 男 鹿 北 磯 2・5 1,039 6
5 45 塩浜〜門前 2・4・5 150  
6 42 男 鹿 南 磯 2・4・5 913 157
7 42 生 鼻 崎 1・2・4・6 700 478
8 43 仁賀保町・
  金浦町
平沢〜飛 2・6 375  
9 43 金浦町・ 
  象潟町
赤石〜象潟 6・7・8 361 9
10 44 象 潟 町 大須郷県境 6・7・8 208  
          3,837 755

 

 

(3)現存、消滅藻場分布図

 

目次へ