23.愛媛県

(1)分布及び消滅状況の概要

1現存干潟

愛媛県東部の瀬戸内海沿岸は、水深が浅く、地形も閉鎖的なため干潟が多く存在したが、江戸時代に干拓が盛んに行われ、「新田」として農耕地に改造された。 明治以降は、特に終戦後、工業の急激な振興にともない、工業用地としての干拓が行われたために干潟は消滅の一途をたどった。

現在、愛媛県には1ha以上の干潟が21ケ所に分布し、その総面積は706haである。 海域別に分布をみると、瀬戸内海側に19ケ所、佐田岬半島以南の豊後水道と土佐湾には各1ケ所であった。燧灘には16ケ所、640haの面積があり、愛媛県全体の90.7%を占めている。 タイプ別にみると、前浜干潟9ケ所、河口干潟7ケ所であるが、その面積をみると、前者は燧灘の干潟面積の14.8%にすぎない。

県下最大の干潟は中山川と加茂川河口に発達した西条市禎瑞の加茂川河口西が317haで県下全体の44.9%を占めている。 ついで、東予市大新田の新川河口81ha、西条市港新地の加茂川河口東66ha、宇摩郡土居町の関川河口55haである。

干潟タイプ別に底質の特徴をみると、前浜干潟は、波浪の強い開放海岸では砂質であり、流れの少ない保護海岸では、砂泥質または泥質であった。 一方、河口干潟の河口附近では、礫の混じった泥質、沖合では砂泥質となっていた。 加茂川河口西では約20年前は砂質であったが、干潟西方の埋立地増加、防波堤の建設により海流が弱まり泥質の増加が顕著である。

干潟の利用状況をみると、潮干狩と釣はどの干潟にも共通しており、海水浴は多くの干潟でおこなわれていた。 また、面積の広い干潟はアサクサノリの養殖場となっていた。

バードウォッチングには、県下で渡来数、種数の最も多い加茂川河口、そのほか比較的多い関川河口、新川河口などが利用されていた。

安芸灘には、小規模河川の河口に1ケ所、伊予灘東には2ケ所の干潟がみられた。 松山市西垣生町の重信川河口では、1977〜1987年の期間、砂利採取が行われ、その量は172,000mに達した。 その後、干潟は除々に回復し1989年からは一部でアサクサノリの養殖が15年ぶりに再開された。 この干潟は西条市の加茂川に次ぐ規模の鳥類の渡来地である。 肱川河口は、伊予灘断層のため河川規模にくらべて大きな干潟は発達せず、三角州は海底に形成されているのが海図でわかる。

伊予灘西には1ha以上の干潟はみられない。 佐田岬以南の豊後水道、土佐湾はリアス式海岸を呈し、大規模な干潟は発達せず、小規模な河口干潟が2ケ所にみられた。 豊後水道には北宇和郡津島町胼の江の岩松川河口付近の河川内に発達する干潟があり、潮干狩、釣のほかヒトエグサの養殖が行われているが、約10年前から収穫は激減している。

この原因としては、1980年上流に建設されたダムの影響、河口沖合いで行われているハマチの養殖用漁網に用いられている化学物質の影響、田畑・果樹園で用いられている農薬や生活排水中の有害物質の影響が推測されでいる。 なお、岩松川はオオウナギやシロウオの遡上する河川として知られている。

土佐湾には、南宇和郡御荘町の僧都川に河口干潟がある。底質は砂泥質で他の干潟と同様に潮干狩、釣、海水浴などが行われている。 県下の南西部では、鳥類の渡来地として貴重な存在である。

2消滅干潟

県内における消滅干潟は燧灘に分布する2ケ所のみで合計37haである。それを前回の237haに比較すると約6分の1強である。

新居浜市垣生の干潟は1982年、公共埠頭建設のため埋立られ、現在大阪行きの大型フェリー等が就航している。 西条市禎瑞の加茂川河口東の干潟は、1980年東予新産業都市の臨海工業地帯に編入されるため埋立てられた。 これを持って、東予地方の干潟の埋立はほぼ完了したものと考えられる。

現存干潟・消滅干潟総括表

海 域 名

現存干潟

消滅干潟

調査区数

面積(ha)

調査区数

面積(ha)

燧   灘

16

640

2

37

安 芸 湾

 1

  7

  

  

伊予灘東

 2

 26

  

  

豊後水道

 1

 16

  

  

土 佐 湾

 1

 17

  

  

合   計

21

706

2

37

〈調査実施方法〉

第4回自然環境保全基礎調査要綱に従い、既存資料調査(資料リストに記載)、県、市町村の当該部課、県下の各沿岸漁業協同組合等へのヒアリング調査、および潮汐表を参考にして現地確認調査をおこなった。

(2)現存、消滅干潟一覧表

現存・消滅干潟一覧表

調査区
番 号

地図
番号

海域名

市町村名

地 名

タイプ
番号

面 積(ha)

現存干潟

消滅干潟

 1

 6

燧   灘

伊予三島市大町

遠   具

1

  6

 

 2

 6

宇摩郡土居町

関川河口

2

 55

 

 3

 6

新居浜市阿島

阿島川河口

2

  9

 

 4

 6

新居浜市垣生

垣   生

2

 

10

 5

 6

新居浜市清水町

国領川河口

2

 11

 

 6

 8

越智群生名村

  泉  

1

 5

 

 7

 8

越智群岩城村

長   江

1

  7

 

 8

 8

越智群伯方町

北   浦

1

 11

 

 9

 8

船   越

1

 13

 

10

 8

熊   地

1

  7

 

11

 8

熊   口

1

  5

 

12

 8

越智群上浦町

古 城 島

1

 14

 

13

10

西条市港新地

加茂川河口東

2

 

27

14

10

2

 66

 

15

10

西条市禎端

加茂川河口西

2

317

 

16

10

東予市大新田

新川河口

2

 81

 

17

10

東予市河原津

河 原 津

1

 27

 

18

14

越智群大三島町

野々江

2

  6

 

19

16

安 芸 灘

北条市法橋

立岩川河口

2

  7

 

20

23

伊予灘東

松山市西垣生町

重信川河口

2

 20

 

21

31

喜多郡長浜町

肱川河口

2

  6

 

22

27

豊後水道

北宇和群津島町

岩松川河口

2

 16

 

23

28

土佐湾

南宇和群御荘町

僧都川河口

2

 17

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

  

  

  

706

37

前回調査区との対照表

(干潟分布・改変状況調査)

今 回 調 査 区

区分の変更
(有無・内容)

前回調査区
現存干潟  

備考

現存干潟

消滅干潟

番号

面積(ha)

番号

面積(ha)

番号

面積(ha)

 1

  6

 

 

変更なし

 1

 6

 

 2

 55

 

 

 2

 55

 

 3

  9

 

 

 3

  9

 

 

 

 4

10

 

 4

 10

全て消滅域に移行

 5

 11

 

 

 

 5

 11

 

 6

  5

 

 

追加

 

 

 

 7

  7

 

 

 

 

 

 8

 11

 

 

 

 

 

 9

 13

 

 

 

 

 

10

  7

 

 

 

 

 

11

  5

 

 

 

 

 

12

 14

 

 

 

 

 

 

 

13

27

分割

 8

 93

一部消滅

14

 66

 

 

 

 

 

 

15

317

 

 

一部追加

 9

425

 

16

 81

 

 

変更なし

10

 81

 

17

 27

 

 

11

 27

 

18

  6

 

 

追加

 

 

 

19

  7

 

 

 

 

 

20

 20

 

 

 

 

 

21

  6

 

 

 

 

 

22

 16

 

 

変更なし

12

 16

 

23

 17

 

 

13

 17

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)現存、消滅干潟分布図

愛媛県 干 潟 分 布 図

 

 愛 媛−1

 愛 媛−2

 愛 媛−3

 愛 媛−4

愛 媛−6

 愛 媛−5

 

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