16.和歌山県
(1)分布及び消滅状況の現況
1現存干潟
和歌山県下には広大な干潟は存在しない。また1haをこえる干潟もいたって少数である。 やや大型の干潟は和歌山市の和歌川河口域のそれだけである。その他に御坊市の日高川河口域の干潟がある。 河口域にある干潟はこの2箇所であり、他の4箇所の干潟(那智勝浦町の上地ノ浜と粉白、串本町の橋杭及び広川町の唐尾湾)はいずれも海岸線の湾入部に形成されたものであり、面積はどれもいたって小さい。
和歌川河口域の干潟は河口の防潮堤に囲まれた閉鎖性の片男波と河口のすぐ外にできた開放性の名草ノ浜の2箇所に分け得る。 和歌川河口域の2箇所と日高河口域の干潟はともに河川の河口域にできた干潟で、泥を多量に含んだ砂から成り立っている。 一方、那智勝浦町の上地ノ浜と粉白及び広川町の唐尾湾は大きな流入河川がないので、細砂でできているにもかかわらず、泥分を含まず、遠浅な地形ともあいまって、良好な海水浴場となっている。 串本町の橋杭は本来は(30年以上前)上地ノ浜、粉白及び唐尾湾と同じようにきれいな細砂であったが、漁港の堤防を長く沖に出したために、橋杭岩と堤防によって囲まれ、著しく内湾性になり、泥分の堆積を見るに至っている。
上地ノ浜、粉白及び唐尾湾は前述のように海水浴場として利用されている。 また和歌川河口域の2箇所の干潟は潮干狩場として利用されている。他の2箇所の干潟は利用されていない。
御坊市の日高川河口域と那智勝浦町の上地ノ浜は前回調査には含まれていない。 この両地域は国土地理院の5万分の1、2万5千分の1の地形図に干潟の記号が付されていない。 そのために前回調査ではそれらの地域を干潟とはみなさなかったが、両地域とも干潟の特性を十分に示しているので、今回は干潟とみなした。
調査結果は前回調査とほぼ同様で、ほとんどの調査区で変化がなかったが、和歌山市で始まった和歌山マリーナシティー計画の工事によって、名草ノ浜の砂底上にはシルトが堆積している。この工事が進むとシルトの堆積がさらに増加するものと思われる。
2消滅干潟
前回の調査以降、消滅した干潟はない。
現存干潟・消滅干潟総括表
海 域 名 |
現存干潟 |
消滅干潟 |
||
調査区数 |
面積(ha) |
調査区数 |
面積(ha) |
|
熊 野 灘 |
3 |
10 |
0 |
0 |
紀伊水道東 |
3 |
57 |
0 |
0 |
和 歌 山 |
1 |
20 |
0 |
0 |
合 計 |
7 |
87 |
0 |
0 |
〈調査実施方法〉
和歌山県には干潟が少ないので、全調査区で現地確認調査を行った。 なお現地確認調査では十分におさえきれない飛来鳥類のデータは既存調査とヒアリング調査で補った。
・既存資料調査
日高川河口域の干潟の飛来鳥類のデータは最近行われた関西電力御坊火力発電所の御坊干潟飛来鳥類の調査報告書から得た。 この報告書は資料リストに示してある。
・ヒアリング調査
那智勝浦町の上地ノ浜と粉白の飛来鳥類のデータは太地在住の日本野鳥の会会員の白水 博氏に、広川町の唐尾湾の飛来鳥類のデータは日本野鳥の会和歌山支部長の出水 隆氏に、和歌川河口域の2箇所の飛来鳥類のデータは和歌山県立自然博物館から得た。
・現地確認調査
現地確認調査は大潮の日時を選んで現地に行き、干潟の測量と干潟及びその周辺地域の観察を行うと共に、干潟生物調査を同時に行った。 なお串本町の橋杭以外の調査区では現地確認調査は1度しか行っていないが、橋杭では1990年4月から数度の現地確認調査を行った。 橋杭の飛来鳥類のデータはこの数度の現地確認調査とそれ以前の調査担当者自身の観察によるものである。
資料リスト
資 料 名 |
著 者 名 |
発 行 年 |
干潟のカニの観察手引 |
和田恵次 |
1978 |
展示解説第7集 |
和歌山県立自然博物館 |
1989 |
御坊発電所新設に係る |
和歌山県自然保護調査会 |
1981〜1988 |
第2回自然環境保全基礎調査、干潟・ |
和歌山県 |
1978 |
(2)現存、消滅干潟一覧表
現存・消滅干潟一覧表
調査区 |
地図 |
海域名 |
市町村名 |
地 名 |
タイプ |
面 積(ha) |
|
現存干潟 |
消滅干潟 |
||||||
1 |
7 |
熊 野 灘 |
那智勝浦町 |
上地ノ浜 |
1 |
4 |
0 |
2 |
7 |
〃 |
〃 |
粉 白 |
1 |
3 |
0 |
3 |
8 |
〃 |
串 本 町 |
橋 杭 |
1 |
3 |
0 |
4 |
22・23 |
紀伊水道東 |
和歌山市 |
片 男 波 |
3 |
35 |
0 |
5 |
23 |
〃 |
〃 |
名草ノ浜 |
1 |
12 |
0 |
6 |
23 |
〃 |
広 川 町 |
唐 尾 橋 |
1 |
10 |
0 |
7 |
24 |
和 歌 山 |
御 坊 市 |
日 高 港 |
3 |
20 |
0 |
計 |
|
|
|
|
|
87 |
0 |
前回調査区との対照表
(干潟分布・改変状況調査)
今 回 調 査 区 |
区分の変更 |
前回調査区 |
備考 |
||||
現存干潟 |
消滅干潟 |
||||||
番号 |
面積(ha) |
番号 |
面積(ha) |
番号 |
面積(ha) |
||
1 |
4 |
|
|
追 加 |
- |
- |
前回干潟と認めず |
2 |
3 |
|
|
変更なし |
1 |
3 |
|
3 |
3 |
|
|
〃 |
2 |
3 |
|
4 |
35 |
|
|
統 合 |
5 |
4 |
|
5 |
12 |
|
|
変更なし |
4 |
9 |
|
6 |
10 |
|
|
〃 |
3 |
2 |
現地測量による面積訂正 |
7 |
20 |
|
|
追 加 |
- |
- |
前回干潟と認めず |
|
|
|
|
|
|
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(3)現存、消滅干潟分布図
和歌山県 干 潟 分 布 図
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和歌山−2 |
和歌山−1 |