4. 考 察

・調査手法の問題点

 調査対象区が全国にまたがる委託調査を実施する場合に、問題になるのは調査の精度である。実際のデータを解析してみて、精度の違いが各所にみられた。同じ規模、タイプ、底質が類似した干潟で生物構成種数が大きく異なる例が散見された。36の調査対象生物群のうち、一般に知られていない種群であるイトゴカイ類、ユムシ、ホシムシ類、キボシムシ類などの出現記録が少なかった。とくに、イトゴカイ類は全国的に分布するが、ゴカイ類と混同し、含められた可能性が強い。二枚貝では水産上の有用種以外の種でデータに含まれない種類があった。これを避けるためには、識別のためのマニュアルをつける必要がある。

 1,000haに達する大規模な干潟と数haの小規模干潟では現地調査、とくに定量調査に費やす労苦には多大な差がでる。精度にも違いがでてくる可能性が高い。

 全国的な干潟生物相の調査の場合、現地調査で、より定性的な面(種類数、優占種など)を、より精度を高くしていく必要があると考える。

図2県別現存干潟面積

図3海域別タイプ別現存干潟面積

(上位39海域を掲載)

図4県別タイプ別現存干潟面積

表3県別タイプ別消滅干潟面積表*(ha)

コード

前 浜

河 口

潟 湖

その他

現存

消滅

現存

消滅

現存

消滅

現存

消滅

現存

消滅

北海道
茨 城
東 京
愛 知
三 重
兵 庫
岡 山
広 島
山 口
徳 島
香 川
愛 媛
高 知
福 岡
佐 賀
長 崎
熊 本
大 分
宮 崎
沖 縄

 1
 8
13
23
24
28
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
47

  515
  567
    0
 1119
  167
   64
  446
  744
  881
   19
  631
   95
   21
 3543
 6446
 1772
 8749
 3778
    4
 1251

   0
  34
 209
 141
   0
  48
  73
  80
  27
  26
  15
   0
  12
 630
  32
 141
 167
  94
  19
  97

  152
    2
    0
  901
  892
   11
  120
  277
 1503
  105
  283
  611
   63
  916
 3517
 2663
 2095
  239
   22
 1036

 114
   9
 256
 115
 248
  46
   0
  62
   0
  44
   0
  37
   0
 613
   0
  72
 143
 267
 127
 145

1980
   0
   0
   0
  32
   0
   0
   0
   0
   0
   0
   0
   0
   0
   0
   4
   0
   0
  16
  30

 5
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 0
 5
 0

  0
  0
 16
 63
  0
  0
  0
  3
  0
  0
 63
  0
  0
  0
  0
  0
  0
  0
  0
  0

0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0

 2766
  612
  481
 2339
 1191
  169
  639
 1166
 2411
  173
  992
  743
   96
 5702
 9994
 4439
11154
 4617
  193
 2559

 119
  43
 465
 256
 248
  94
  73
 143
  27
  70
  15
  37
  12
1243
  32
 213
 310
 361
 151
 242

  

30812

1845

15408

2298

2062

10

145

1

52436

4154

*干潟タイプが複数示されている場合は複数のタイプに各々同面積が加算されている。

図5県別消滅干潟面積

表4 標本区干潟生物種類数順位表

表4 標本区干潟生物種類数順位表(つづき)

*

 

標本区No.は標本区に南から順に番号をつけた。なお、現存干潟番号との対応は図7に示した。

 

+:多いもしくは普通にみられる、鳥類の場合"渡来する"。

○:少ないが分布する。

**

沖出し幅95mで、現存干潟として記録されない干潟であるが、周辺に適地がなく県東部を代表する干潟として、調査した。標本区としたのは、師楽港奥部の西半分の干潟である。

干潟タイプ M:前浜 K:河ロ S:潟湖

底   質 S:砂  SM:砂泥 M:泥 G:礫

             表5 標本区干潟面積順位表(上位56)

図6干潟面積と種類との関係

(図中の番号は標本区No.)

 

 

標本区番号

面積(ha)

干潟タイプ

底質

 

千潟タイプ M:前浜 K:河ロ S:潟湖

図7 標本区全国干潟地形図一1

図中の番号は調査区番号

底   質 S:砂 SM:砂泥 M:泥 G:礫

図7 標本区全国干潟地形図−2

図7 標本区全国干潟地形図−3

図7 標本区全国干潟地形図−4

図7 標本区全国干潟地形図−5

図7 標本区全国干潟地形図−6

 

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