第1部 調査方法

 

はじめに

 本調査の目的は,集団繁殖地および集団ねぐらを形成する鳥類の生息状況とその生息環境の特性を明らかにし,それらの鳥類の生息環境の保全をはかるための基礎資料を収集することである。集団繁殖地とは,比較的せまい範囲に,同じ種または近縁の種の鳥が集中し,そこに巣をつくり,ヒナを育てる場所をさしている。また,集団ねぐらは,同じ種もしくは近縁の種の鳥が集中してねむる場所のことである。

 自然環境保全基礎調査の対象として,これら集団繁殖地や集団ねぐらを形成する種を対象にした理由は,次のとおりである。まず,第1の理由として,集団繁殖地や集団ねぐらを形成する鳥はその種のほとんどの個体が集団繁殖地や集団ねぐらに集まる習性を持っていることから,その集団繁殖地や集団ねぐらさえ発見すれば,その周辺に生息している個体数をかなり正確に把握することができる点があげられる。したがって,集団繁殖をしない種にくらべ,生息している個体数を調べやすいため,広い範囲にわたって,より正確に種の生息状況を明らかにすることができる。

 次に,集団繁殖地や集団ねぐらを形成する鳥には,スズメ等身近な種が多いが,その中にも,サギ類やツバメ類等,一部の地域で個体数が減少している種がある点があげられる(藤田・樋口1992,成末1992)。しかし,このサギ類やツバメ類等についても,都道府県よりも広い範囲にわたる調査は行なわれておらず,そのような広範囲な地域の中で個体数がどう変化しているのかは明らかにされていない。したがって,これらの種を保護する対策を講じるためにも,できるだけ早く,生息状況を明らかにする必要がある。

 3番目の理由として,集団繁殖地等を形成する種は,そうでない種にくらべ,環境の変化を示す指標としてすぐれている場合もあることがあげられる。集団繁殖地やねぐらの環境が破壊された場合には,その地域に生息する個体群全体が大きな影響を受けることになる。その結果,ごく小さな環境の変化によっても,個体数が大規模に減少する可能性が,他の種にくらべて高くなっていると思われる。

 

目次へ