2.コウモリ目(翼手目)

Corbet & Hill(1991), Corbet & Hill(1992)は世界の翼手類について、その種
数を977種とし、げっ歯類につぐものとしている。Corbet & Hill(1980)は同類を
950種と記録し、約10年の間に27種も種数が増加している。このように種の数や
種の分類学的地位には変動がある。とくに、小型の哺乳類には新 種の発見や分類
学的地位の変動が大型または中型のものより多い。日本の翼手類においても同様
で、前回においては種数は35種(前田,1984,1986)とされていたが、今回は4種が
追加され、39種の情報が網羅されている。4種の内訳は新記録のもの(Yoshiyuki
et al. 1989)、分類学的に再査した結果、種として昇格したもの(Yoshiyuki,19
89)などが含まれている。

(1) 翼手類の分布の概要について
 前回よりかなりの情報を網羅することができた。なお、この度、追加した
情報には、古い情報も含まれている。なお、北海道から九州まで分布してい
る種においては日本の全県の85-87%に及ぶ県に分布していることが明らか
になり、また県内において数多くの小個体群なども記録され、分布の精度
が密になったと思われる。
(2) 分布図の完成度について
 日本の翼手類の種の構成から類似間系図(吉行. 1990)を用いて分けられた
区分によると、つぎの11区にわけられる。
 北海道地区、本州地区、四国地区、九州地区、対馬地区、大隈諸島地区、
トカラ列島地区、奄美諸島地区、大東諸島地区、八重山諸島地区ならびに小
笠原諸島地区である。この中で日本列島には各属島はそれぞれ固有の種また
は亜種が分布している。これらの各地域の面積は狭いが、まだ情報が少なく、
詳細な分布地点が明らかでなく、今後調査をすすめる必要があろう。
 なお、哺乳類などは島によって、種または亜種の分化がみられるので、分
布の調査には島別に分ける必要があると思われる。
                                        ( 吉行端子 )

                引用文献

Corbet, G. B. and J. E. Hill. 1980. A World List of Mammalian Species.
      226 pp. Oxford University Press.
 ―  ,1991. A World List of Mammalian Species(3rd ed.) : viii+243 pp.
      Oxford University Press.
 ―  ,1992. The Mammals of the lndomalayan Region : A Systematic Review
      viii+488 pp. Oxford University Press.
前田喜四雄、1984. 日本産翼手目の採集記録. (1). 哺乳類科学. 49:55-78.
 ―  ,1986. 日本産翼手目の最終記録. (2). 哺乳類科学. 52: 79-97.
Yoshiyuki, M. 1989. A systematic Study of the Japanese Chiroptera.
      vi+242 pp. National Science Museum Tokyo.
 ―  ,S. Hattori and K.Tsuchiya, 1989. Taxonomic analysis of two rare
      bast from the Amami Islands(Chiroptera, Molossidae and
      Rhinolophidae). Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (22) :215-225.
吉行端子, 1990. 日本のコウモリ相. 種分化の例と類似関係. 採集と飼育.
      52:468-473