●調査目的
前回調査(第2回自然環境保全基礎調査・昭和53年度実施)によって把握されたわが国
の海岸の改変状況について、その後の変化を調査することにより、海岸域の現況と変化
状況を把握、分析するもの。
●調査実施者
アジア航欄株式会社に委託して実施した。
●調査対象地域
前回調査で対象とした海岸線。これは「全国海岸域現況調査」(建設省昭和50年度)
の「海岸区分計測図」に表示されている海岸線で、短径100m以上の島を含む全国の海
岸線を対象としたものである(ただし、いわゆる北方領土を含まない)。該当する都道
府県は全国で39都道府県である。
●調査実施期間
昭和59年度。
●調査内容
海岸(汀線)の自然状態について、海岸を「自然海岸」「半自然海岸」「人工海岸」
「河口」に区分し、昭和53年度以降の変化状況を把握した。
具体的な調査項目は、次の4項目である。
1.海岸の変化部分の区間長
2.変化海岸の自然状況
3.変化海岸の陸域部の規制状況
4.海岸の埋立状況
以上の調査結果は昭和53年度に作成された「海岸改変状況図」(以下改変図という)上
に示し、「昭和59年度改変図」とした。
なお、本調査における海岸等の定義は以下のとおりである。
■用語の定義(図参照)
1)この調査で「海岸域」とは、海岸(汀線)及び海岸陸域の区域をいう。
2)「海岸(汀線)」とは、低潮海岸線と通常大波の限界線との間の区域をいう。
3)「海岸陸域」とは、通常大波の限界線より陸側100mの区域をいう。
4)「自然海岸」「半自然海岸」「人工海岸」等は、次表のとおり。
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区 分
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海
岸
(汀
線 ) |
●自然海岸
海岸 (汀線 )が人工によって改変されないで 自然の状態を保持している海岸(海岸の汀線 に人工構築物のない海岸
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海岸(汀線 )に浜が発達している |
泥浜海岸 |
砂質(砂浜)海岸 |
岩石(磯浜)海岸 |
海岸に(汀線)に浜が発達していない(海食崖等) |
●半自然海岸
道路、護岸、テロラポット等の人工構築物で 海岸(汀線)の一部に人工が加えられている が、潮時帯においては自然の状態を保持して いる海岸(汀線)に人工構築物がない場合で も海域に離岸堤等の構築物がある場合は、 半自然海岸とする。
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海岸(汀線)に浜が発達している |
泥浜海岸 |
砂質(砂浜)海岸 |
岩石(磯浜)海岸 |
海岸に(汀線)に浜が発達していない |
●人工海岸
港湾・埋立・浚渫・干拓等により人工的につく られた海岸等、潮間帯に人工構築物がある 海岸
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埋立によってできた海岸 |
干拓によってできた海岸 |
上記以外の人工海岸 |
●河口部 河川法の規定(河川法適用外の河川にも準用)による「河川区域」の最下流端を陸海の境 とする |

●調査方法
前回調査以降の変化状況を調査するために、昭和53年度に作成された縮尺2万5千分の
1の改変図を複製し、この図面を基図として海岸汀線、自然公園、自然環境保全地域、
及びそれらの地種区分の変化状況を記へした。
変化状況の調査は次の3とおりの手法によって行った。
1.1979年度以降に作成された国土地理院発行の縮尺2万5千分の1地形図を用いた経
年変化の把握(調査対象地域の図面のうち39.7%にあたる615枚について行った)
2.国土地理院、林野庁により1979年以降に撮影された航空写真を用いた経年変化の把
握(調査対象地域の図面のうち71.5%にあたる1,108枚について行った)
3.海岸線をもつ全国の39都道府県に協力を仰ぎ、都道府県の保有する海岸事業、埋立
状況、港湾事業、漁港整備事業などの資料を用いた経年変化の把握
なお、都道府県資料は、1.及び2.の調査内容の確認、経年変化の補完に用いる
とともに、1979年以降、地形図の改訂、航空写真の新たな撮影がなされていない地
域では変化部分の把握に用いた。
また、以上の方法による調査結果と現地との整合を確認するため、ケーススタディとし
て神奈川県と静岡県において現地確認調査を行った。
●全国集計(とりまとめ)の概要
改変図上に図示された変化海岸の海岸汀線及び海岸陣城に関する情報を入力するととも
に都道府県、海区、海域、自然公園などの別に各種の集計・作図を行い、わが国の海岸
線の現況及び変化状況を把握した。
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