4−2 特定植物群落調査

 

4−2−1 特定植物群落の相観による区分について

 1. 相観区分の決定

 以下に示す作業手順により相観区分を決定した。

(1) 全調査者の内容欄、植生調査表を通覧し、それぞれの相観を摘出した。

(2) 摘出された相観記載を、植物の生育形に従って類型化した。

(3) 広域に分布する相観には、気候帯区分の概念を導入して、細分化した。

(4) 相観的にモザイク状の分布を示す特殊立地の植生には、個別の相観コ−ドを設け

  た。

(5) 複数の相観を含む一定の地域を対象とする物件については、「植生一般」 、気候

  帯名+「植生」などの分類項を設けて、全調査表がそれぞれ1つの相観コ−ドで表
 現できるように配慮した。

 2. 相観区分の具体例

 上記作業により57の相観区分が決定された。それぞれの相観区分の具体的内容は次に

   示すとおりである。

相 観コ−ド

相    観

具 体 的 内 容
1. 植 生 一 般 複数の相観を呈し、複数の気候帯に生育する。
2. 亜 寒 帯 植 生 複数の相観を呈し、同一気候帯に生育する。
3. 冷 温 帯 植 生 複数の相観を呈し、同一気候帯に生育する。
4. 暖 温 帯 植 生 複数の相観を呈し、同一気候帯に生育する。
5. 亜 熱 帯 植 生 複数の相観を呈し、同一気候帯に生育する。
6. 亜寒帯常緑針葉高木林 同一相観を呈し、同一気候帯に生育する(以下同じ)。
シラビソ−オオシラビソ林、コメツガ林。
7. 冷温帯常緑針葉高木林 ウラジロモミ林、ツガ林、ヒメコマツ林。
8. 暖温帯常緑針葉高木林 モミ−ツガ林、アカマツ林、クロマツ林。
9. 亜熱帯常緑針葉高木林 リュウキュウマツ林
10. 常緑針葉高木植林 スギ、ヒノキ、マツ類などの人口林。
11. 夏緑針葉高木林 亜寒帯のカラマツ林。
12. 夏緑針葉高木植林 カラマツ人口林。
13. 暖温帯常緑広葉高木林 シイ、タブ、カシ類の森林。
14. 亜熱帯常緑広葉高木林 屋久島低地や沖縄県などのシイ・カシ林。
15. 常緑広葉高木植林 イチイガシ、クスノキなどの人工林。
16. 亜寒帯夏緑広葉高木林 ダケカンバ林。

 

相 観コ−ド 相     観 具 体 的 内 容
17. 冷温帯夏緑広葉高木林 ブナ、イヌブナ、カエデ類などの森林。
18. 暖温帯夏緑広葉高木林 コナラ、シデ類、ケヤキなどの森林。
19. 亜熱帯夏緑広葉高木林 「鵜戸のギョボク林」(宮崎30)
20. 夏緑広葉高木植林 ケヤキ人工林。
21. 亜熱帯常緑針葉低木林 ハイマツ低木林、ミヤマネズ低木林。
22. 冷温帯常緑針葉低木林 「屋久島のミヤマビャクシン低木林」(鹿児島48)
23. 暖温帯常林針葉低木林 ハイネズ低木林、ハイビャクシン低木林。
24. 亜熱帯常緑針葉低木林 「阿嘉島北海岸のオキナワハイネズ群落」(沖縄40)
25. 冷温帯常緑広葉低木林 シャクナゲ類、アセビなどの低木林。
26. 暖温帯常緑広葉低木林 トベラ、ハマビワ、ハマヒサカキなどの低木林。
27. 亜熱帯常緑広葉低木林 オオハマボウ、アダン、アカテツなどの低木林。
28. 亜熱帯夏緑広葉低木林 ミヤマハンノキ、ミネヤナギなどの低木林。
29. 冷温帯夏緑広葉低木林 ミヤマナラ低木林、ノリウツギ−ニシキウツギ低木林
30. 暖温帯夏緑広葉低木林 イブキシモツケ低木林。
31. 冷温帯ササ原 ミヤコザサ、チマキザサなどのササ原。
32. 暖温帯ササ原 ネザサ類のササ類。
33. 亜熱帯ササ原 リュウキュウチクのササ原。
34. 亜寒帯広葉草原 シナノキンバイ−ミヤマキンポウゲ群目の草原。
35. 冷温帯広葉草原 オオイタドリ−ヤマヨモギ群集などの草原。
36. 暖温帯広葉草原 「門屋のシャク群落」(静岡85)
37. 冷温帯単子葉草本草原 ススキ、カリヤスモドキなどの草原。
38. 暖温帯単子葉草本草原 ススキ、チガヤなどの草原。
39. 亜熱帯単子葉草本草原 コウライシバ群落。
40. 草本シダ群落 特有の相観を呈し、同一気候帯に生育する(以下
同じ)。
ミミモチシダやテツホシダの群落。
41. 岩礫地草本植生 イワタバコ群落など。
42. タケ形林 キンメイモウソウ林、マダケ林。
43. ヤシ形林 ヤエヤマヤシ林、ビロウ林。
44. マングローブ林 オヒルギ−メヒルギ林、サガリバナ林。

 

相 観コ−ド 相     観 具 体 的 内 容
45. ツル植物群落 「小原野のシダ植物群」(三重84)
46. 蘇苔類植物群落 「るり沼のウカミカマゴケ群類」(福島37)
47. 浮葉・沈水植物群落 オニバス群落、水草群落など。
48. 浮水植物群落 「富士山西麓のヒンジモ群落」(静岡63)
49. 流水中、岩上植生 カワゴケソウ科植物群落。
50. 高山荒原植生 不均一な複数相観を呈し、同一気候帯の特殊立地に生育する。
コメバツガザクラ−ミネズオウ群集など。
51. 雪田植生 タカネヤハズハハコ−アオノツガザクラ群集など。
52. 火山荒原植生 「桜島の熔岩地植生」 (鹿児島35)
53. 湿地植生 ミズコケ湿原と低木類。
54. 河辺植生 ツルヨシ群集とヤナギ類低木。
55. 海浜植生 ハマボウフウ群網とハマゴウ群網。
 〔追 加〕
56. 亜寒帯ササ原 イシヅチザサ、チシマザサなどのササ原。
57. 亜寒帯単子葉草原 ノガリヤス属草本草原。

   

 (注)(1) 気候帯区分

  相観に付記された気候帯区分は、対象となる現存植生が、現在、どの気候帯に
  生育しているかを示している。したがって、岩稜などの立地で冷温帯に分布の中
  心をもつ植生が、暖温帯に貫入しているような場合は、暖温帯植生として分類し
  た。

 (2) 植   林

  対象とされた森林が、調査表の内容から明らかに人工的に植栽されたと判定で
  きる場合は、他の自然生の森林と識別できるように、「植林」としてコ−ドを類
  別した。  

 (3) 低 木 林

 植生高4m前後までの木本群落。

 

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