3−11 海岸調査要綱

 

1.調査の目的

海岸(汀線)の自然状態及び海岸陸域の自然状態を調査し、わが国における海岸の現況を把握する。

2.調査実施者

国が都道府県に委託して実施する。

3.調査対象地域

全国の海岸域全域(39都道府県)について調査する。

4.調査実施期間

契約締結の日から昭和54年3月31日までとする。

5.調査内容

全国の海岸域全域において、次の項目について調査する。

(1) 海岸(汀線)の自然状況

(2) 海岸(汀線)における利用の状況

(3) 海岸陸域の土地利用状況

(4) 海岸域の汚染状況

6.調査方法

「全国海岸域現況調査」(昭和50年3月 建設省河川局・建設省国土地理院)の「海岸区分計測図」を参考としながら現地確認調査を実施し、国土地理院発行の1/2.5万地形図(1/2.5万地形図が発行されていない場合は、1/5万地形図、以下内じ)上に海岸(汀線)の自然状況等の区分を行う。調査方法の詳細は、別紙1「海岸調査実施要領」による。

7.調査結果のとりまとめ

受託者は調査結果を下記の図票によりとりまとめる。

(1) 海岸改変状況図

調査した結果は、別紙2「海岸改変状況図」(以下「改変図」という。)にならない、国土地理院発行の1/2.5万地形図に表示する。

(2) 海岸調査票

調査事項は、別紙3「海岸調査票」(以下「調査票」という。)にとりまとめる。

8.調査結果の報告

受託者は調査結果をとりまとめ、海岸改変状況図帳、海岸調査票綴各1部をそれぞれ別紙4「海岸改変状況図帳作成要領」、別紙5「海岸調査綴作成要領」により作成し、昭和54年3月31日までに、環境庁自然保護局長あて提出する。

 (別紙1)     海 岸 調 査 実 施 要 領

1.通  則

第2回自然環境保全基礎調査海岸調査は、この実施要領に従って行う。

2.海岸等の定義

(1) この調査で「海岸域」とは、海岸(汀線)及び海岸陸域の区域をいう。

(2) 「海岸(汀線)」とは、低潮海岸線と通常大波の限界線との間の区域をいう。

(3) 「海岸陸域」とは、通常大波の限界線より陸側100mの区域をいう。

3.調査対象海岸線

調査対象とする海岸線は、「全国海岸域現況調査」の「海岸区分計測図」に表示されている海岸線のみを調査対象とする。ただし、「海岸区分計測図」は昭和49年度における調査結果であり、その後の改変等も考えられるので必ず現況により調査すること。又、「海岸区分計測図」には一応、「海岸線区分」が表示されているが、必ず、本調査要綱に基づき現地を確認して調査すること。

4.海岸線の区分

(1) 島(北海道、本州、四国、九州もそれぞれ1つの島とみなす)、市町村、自然公園等の指定状況(名称、地域区分)、海岸(汀線)の自然状態、海岸陸域の土地利用が変わるごとに区分線を入れて海岸線を区分する。

上記のように細かく区分された海岸線を、以下「計測区間」という(下図参照)

(2) 「海岸(汀線)の自然状態」、「海岸陸域の土地利用」の区分は、表1「海岸(汀線)・海岸陸域区分表」によって行う。

(3) 海岸(汀線)区分においては、次の点に注意すること。

ア.汀線に直角に設置された人工構造物が、海岸線100m以内に2本以上存在する場合には、当該海岸線は、半自然海岸に区分する。

表1 海岸(汀線)・海岸陸域区分表

イ.常時海面下にある人工構造物については、区分において無視すること。

ウ.人工干潟、人工汀等は、人工的につくられた海岸であるが、潮間帯における人工構築物の存在の状況により海岸(汀線)区分を行い、必ずしも人工海岸にしなくてもよい。

なお、人工干潟、人工汀の場合は、備考欄にその旨注記する。

エ.下図のように突堤等で囲まれた入江について海岸(汀線)区分を行う場合は、突堤に関係なく海岸(汀線)におりる人工構築物の有無により判断すること。

(4) 区分の最小単位は100mとし、計測区間が100m未満になるような場合はその区間を折半し、その両端の区間にそれぞれ含める。

(5) 海岸陸域の区分にあたり、海岸陸域の幅100m内に自然地、農業地、市街地等が混在する場合は、最も優占する土地利用形態をもって海岸陸域区分とすること。

5.調査内容

海岸(汀線)の自然状態等の区分を地形図上に行い改変図を作成するほか、計測区間ごとに次の事項について調査する。

(1) 立入可能性

当該計測区間に立入りができるかどうか、立入りできない場合はその理由について、次の区分に従って調査する。

表2 立入可能性区分表

コード

立 入 可 能 性 区 分

立入りができる
崖、河口部などの地形的条件で立入りができない
工場等が海岸域にあるため立入りができない
その他の理由で立入りができない

立入可能性区分の意味は次のとおりである。

ア.(コード0)立入りができる

波打ち際まで何の障害もなく自由に行ける状態を示し、波打ち際が人工海岸であっても波打ち際まで自由に到達できる場合は、「立入りができる」と判断する。

イ.(コード2)工場等が海岸域にあるため立入りができない。

波打ち際まで行くのに、許可を要するような場合は、立入りができないと判断する。

(2) 利用状況

当該計測区間の海岸域及びその地先海域において、次に掲げる利用状況が見られるかどうかについて調査する。

      ア.散     策

      イ.海  水  浴

      ウ.潮  干  狩

      エ.魚     釣

      オ.採     集

      カ.網     漁

      キ.養 殖 漁 業

(注1) 「採集」とは、コンブ等海藻類、磯物の採収等の海岸利用のことである。

(注2) 「網漁」とは、地引き網、網干し場等の海岸利用のことである。

(3) 汚染状況

当該計測区間の海岸域における汚染状況について、次の項目ごとにその概要を調査する。

ア.「清澄度」

海水のきれいさの程度(清澄度)を次により区分する。

表3 清澄度区分表

コード

清 澄 度 区 分

き れ い 海の底がよく見え、快適な気分で泳げる程度
透視度30cm程度以上
すこし汚れ
ている
海水に浸かることが気にならない程度
透視度20〜30cm程度
かなり汚れ
ている
海水に浸かる気がしない程度
透視度20cm程度以下

イ.「油汚染」

廃油ボール等の付着状況を次により区分する。

表4 油汚染度区分表

コード

油 汚 染 度 区 分

ほとんど見られない
すぐ見つかるが多くはない
多い。ベルト状、斑点状に見られる

ウ.「ゴミ等」

ゴミ等の漂着状況を次により区分する。

表5 ゴミ等漂着状況区分表

コード

ゴ ミ 等 漂 着 状 況 区 分

ほとんど見られない
すぐ見つかるが多くはない
ゴミが非常に目立つ

(4) 鳥獣保護区設定状況

当該計測区間内の海岸域における鳥獣保護区の設定状況を次により区分する。

表6 鳥獣保護区設定状況区分表

コード

鳥 獣 保 護 区 設 定 状 況 区 分

鳥獣保護区の設定がない
鳥獣保護区の設定がある
鳥獣保護区特別保護地区の指定がある

(5) 海岸陸域、立入可能性、汚染状況の区分を実施しようとする時、当該計測区間で最も優占する区分をもって当該計測区間の区分とする。

(6) 1つの計測区間が非常に長く続くため、計測区間ごとの立入可能性、汚染状況の区分を区間内で優占する区分をもってした場合、著しく実情に合わないと判断される場合は、同一の計測区間であっても1〜2kmごとに適宜区分して海岸改変状況図、海岸調査票を作成する。

 (別紙2)       海 岸 改 変 状 況 図

(改変図作成上の注意)

1.改変図には、必ず国土地理院発行の1/2.5万地形図を使用する。複写図、編さん図等は使用しないこと。

2.1/2.5万地形図には、都道府県単位で東側から、北から南へ「地図番号」を打つ。(下図(以下「地図番号」という。)参照)

3.改変図例のように、地形図の余白の所定の位置に、「タイトル」「地図番号」「調査年度」(西暦)、「都道府県名」を記入する。

4.当該地形図に出現するすべての市町村に適宜通し番号(以下「行政略号」という。)を付す。

5.改変図例のように地形図の余白の所定の位置に、当該地形図に出現するすべての市町村の「行政略号」、「行政コード」、「市町村名」を記入する。

6.海岸線の区分は、次の手順に従って行う。

(1) 海岸線の区分は国土地理院発行の1/2.5万地形図ごとに行う。

(2) 地形図に他都府県が表示されている場合は、他都府県の区域に粗いハッチをしるし、当該都府県の区域と区別する。

(3) 「海岸区分計測図」を参考にして、調査対象としない小島嶼には鉛筆で×印を付す。

(4) 「「岸区分計測図」を参考にして、調査対象とする海岸線を色鉛筆(紫色)で明示する。

(5) 市町村界を赤鉛筆で明示し、市町村界と海岸線との交点の海側の市町村界の両側に行政略号を赤鉛筆で記入する。

(6) 「出「発点」」海岸線の区分を開始する点をいう。。

ア.小さな島のように海岸線が地図の枠(図郭)と交わらない場合には、適当な点から区分を始めて、進行方向に向って陸を左に見るように区分する。

イ.海岸線が地図の枠と交わる場合には、枠上の点から区分を始めて、進行方向に向って陸を左に見るように区分し、他の枠上の点で終るようにする。

ウ.いずれの場合も、区分の出発点には、改変図例のように◎印を記入する。

(7) 「「岸(汀線)区分」」

表1「海岸(汀線)・海岸陸域区分表」による12種の区分に従って出発点から海岸(汀線)を区分して行く。

区分点には、その海側に短い区分線(長さ3mm程度)を黒のボールペンで引くとともに、その海岸(汀線)の区分を示すコード(表1参照)を区分線の間に黒のボールペンで記入する。

(8) 「海「陸域区分」 <」font>

海岸(汀線)区分と同様に、表1「海岸(汀線)・海岸陸域区分表」によ」る4種の区分に従って、出発点から海岸陸域を区分して行く。

区分点には、その陸側に短い区分線(長さ3mm程度)を赤のボールペンで引くとともに、その海岸陸域の区分を示すコード(表1参照)を区分線と区分線の間に赤のボールペンで○を囲んで記入する。

保全地域 地種区分 指定色

色鉛筆の指定

自然公園 特別保護地区 橙色

三菱ポリカラーNo.7500 4

特別地域 ピンク色       〃    13
普通地域 黄緑色       〃    5
自然環境
保全地域等
原生自然環
境保全地域
橙色       〃    4
特別地区 ピンク色       〃    13
普通地区 黄緑色       〃    5

(例)

(9) 海岸域に自然公園、自然環境保全地域等(以下「保全地域」という。)が。指定されている場合は、地種区分ごとに、海岸線に沿って3mm程度の幅に色鉛筆でうすく彩色する。使用する色は、下記の表の指定色に従う。また、地種区分の区域界と海岸線の交点には、地種区分の指定色と同一色の区分線(長さ3mm程度)をひく。

また、保全地域の名称を地形図に黒のボールペンで記入する。

(10) 上記による、当該地形図における海岸線の区分終了後、各計測区間に1からはじまる通し番号を付す。(。下「計測区間No.」という。)。

地形図には、各出発点に、当該計測区間の「計測区間No.」及び「島コード」を記入する。出発点以外の計測区間には、計測区間No.は記入しない。

(例)

 (別紙3)     海   岸   調   査   票

(調査票様式)

(1) 「清澄「度」に」、表3「清澄度区分表」に従って海水の清澄度をコードで記入する。

(2) 「油汚「染」に」、表4「油汚染度区分表」に従って油汚染の状況をコードで記入する。

(3) 「ゴミ「等」に」、表5「ゴミ等漂着状況区分表」に従ってゴミ等の漂着状況をコードで記入する。

14.「鳥獣「保護区」に」、当該計測区間の海岸域における鳥獣保護区の設定状況について、表6「鳥獣保護区設定状況区分表」に従って該当するコードを記入する。

15.「備考「」に」、海岸域に強い影響を及ぼすような発電所、染色工場等の建造物あるいは敷地が当該計測区間の海岸陸域(100m)の範囲内にある場合に、その旨を記入する。

16.「出発「点からの距離」、「」、「」には記入しなくてよい。(54年度計測予定)

<参考>

1.自然海岸(海岸(汀線)に人工構築物がない。)

(1) 海岸(汀線)に浜が発達している。(コード11.12.13)

(2) 海岸(汀線)に浜が発達していない。(コード14)

2.半自然海岸

(1) 海岸(汀線)に浜が発達している。(コード21.22.23)

ア.海岸(汀線)の一部に人工構築物があるが、潮間帯にはない。

イ.海岸(汀線)には人工構築物はないが、海域に離岸堤等人工構築物がある。

(2) 海岸(汀線)に浜が発達していない。(コード24)

 海岸(汀線)の一部に人工構築物があるが潮間帯にはない。

3.人工海岸(潮間帯に人工構築物がある。)(コード31.32.33)

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