488 ハシボソガラス

 日本で普通に見られるカラスには、ハシボソガラスとハシブトガラスの2種があるが、ハシボソガラスの方が少し小さい。全身黒色であり、ハシブトガラスに比較すると嘴がやや細く、鳴き声がガー、ガー、と濁っている点が異る。また鳴く場合の姿勢も背中を丸める等、ハシブトガラスと少し異る。山地、平地を問わず様々な環境に生息するが、人家や農耕地の周辺に多く見られる。繁殖期以外は群生し、大きなねぐらを持ち、夕方大群を作り、ねぐらに帰って行く。各地に極めて普通で人家から出るゴミ類などを含めて動物質、植物質のあらゆるものを食べる。ヨーロッパ、シベリア、アジア東北部などに分布し、日本でも最も普通にみられる種の一つである。農耕地、川原などで採餌し、大きな木の樹上に営巣する。3〜5月ごろに青緑色の地に褐色斑点が散在する卵を3〜6個産卵する。

 繁殖地図調査の結果は、北海道から九州まで生息または繁殖している。Cランク記録のメッシュが多く、Bランクが少いことは囀りがないためである。全国的にほぼ平均して分布しているが、薩南諸島以南には分布していない。

 北海道では各地にほぼ一様に生息しており、利尻島でも繁殖が確認された。東北地方には生息しない空白のメッシュが割合に目立ち、繁殖を確認した地域も少ない。関東地方は繁殖確認メッシュも割合に多いが、分布していないメッシュも多く繁殖分布にむらがある。中部北陸地方でもほとんどのメッシュで生息が確認されているが、繁殖確認メッシュは内陸部でやや少い。佐渡でもBランクが記録されている。近畿地方から東過地方にかけてはきわめて多く、繁殖が確認されたメッシュも多い。特に伊勢湾沿岸地方から大阪湾方面にかけては、A・Bランクが密集し、この地域におけるハシボソガラスの個体数の多さを反映していると考えられる。この地方では本種がハシブトガラスに対してかなり優勢のようである。中国、四国地方でも生息するメッシュは多く、Aランクも散在している。淡路島、隠岐諸島でも生息が確認された。九州では、他の地域に比較して、若干、生息するメッシュの分布密度が低いようである。一部にカササギが生息し、冬期はミヤマガラスの群が多数渡来することが多少の影響を与えているかも知れない。九州では甑島列島、五島列島、壱岐、対馬などの離島でも生息または繁殖が確認されている。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

316

298

1,286

1,900

構 成 比(%)

16.6

15.7

67.7

100.0

 

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