465 イ   ス   カ

 上下の嘴がくいちがった形をしているのが特徴。♂は暗紅色で、翼と尾とは黒褐色である。♀は♂の暗紅色の部分がすべて暗黄緑色である。主に冬鳥として10月下旬ごろから3月下旬ごろまでのあいだ、北海道、本州、佐渡、四国、九州、伊豆諸島(大島、三宅島、八丈島、青ケ島、鳥島)、小笠原群島(父島、母島)、火山列島(硫黄島)に渡来する。渡来する数は年によって著しく差がある。これは、マツ科などの植物の種子を好む特殊な食性によるもので、主に生息するシベリアで個体数が増えたり、餌が不足したりすると日本に渡るものが出てくるためである。北海道と本州中部以北の山地には夏期も生息するが、生息数は多くない。夏期は低山帯上部の針葉樹林や混交林に生息し、冬期は低山帯のアカマツ林などに生息する。繁殖期以外には群生し、繁殖期でも繁殖に参加しない幼鳥などは群れていることが多い。低山帯のマツ林の林縁で営巣し、巣は地上5mぐらいまでの高さの樹枝上にある。マツの小枝、苔類、枯草などを主材とし、内部に草、羽毛、獣毛などを敷いた、やや粗雑な巣をつくる。産卵期は年によってまちまちで、2月から8月ぐらいまでである。この間に2回繁殖することがある。もっとも多く繁殖が見られるのは、3月から4月ごろまでである。1巣の卵数は3〜5個で、卵は灰白色、灰青色の地に、紫褐色、暗黒色などの小斑や条斑が鈍端付近に少量散在する。雛は抱卵後12〜13日ぐらいで孵化し、更に14日ぐらいで巣立つ。

 これまでに繁殖が確認されているのは、青森県、岩手県、長野県、山梨県、鳥取県での数例だけである。北海道でもほぼ確実に繁殖しているとされるが確認されていない。繁殖記録が少ないのは、産卵期が長期にわたる上に、この時期にはあまり声を出さないため、営巣中の個体の発見がきわめて困難なものとなっているためであろう。本州中部以北の山地および北海道には、数は多くないものの夏期も生息することから、繁殖していることは間違いないと見られている。

 今回の調査では繁殖が確認されたところはなかった。繁殖の可能性があるとされたのは、北海道十勝岳の南方の地域、岩手県岩手山付近、長野県霧ケ峰付近の3ケ所だけである。北海道ではさらにCランクの記載が2ケ所見られたにとどまった。これらのことは、夏期の生息数がきわめて少ないか、あるいはきわめて目立ちにくい鳥であることを示している。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

0

3

2

5

構 成 比(%)

0.0

60.0

40.0

100.0

 

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